終演 part.5
「ンッフフ、フフ……♡ エフィムく〜ん、エフィムくぅぅぅうん♡」
「くっ……!」
黒煙を吐き出す焔と、明らかに様子のおかしな美青年。
エフィムは、追い込まれていた。
「――光よ、我が命に従いて敵を討たん」
回り込まれれば、その分逃げる。
足元へ向け光の矢を放ち、足を止める。
それでも、少しずつ追い込まれていた。
「……っ!」
右へ逃げる。先回りされる。
今度は、左へ跳ぶ。先読みされている。
「あはははは、楽しいねエフィムくん」
「くっ!」
まるで、エフィムの動きを、最初から全て読んでいるかのように。
猫に追われるネズミとは、こんな気持ちなのだろうか。
「はあ……はぁっ……!」
息が上がる。魔力も体力も限界に近い。
それでも、止まればそこで終わる。
「ンッフフフフフフフ。こっちにおいでよ、お兄さんといいことしようよ♡」
この手の変態には、慣れている。
だが――慣れているからと言って、受け入れられるわけではない。
「くっ……! 触るな!」
「ンッフフ、フフフ♡」
逃げ場がない。だが、そのとき――空気が変わった。
――強い耳鳴りと眩暈、そして頭を内側からカチ割るような頭痛。
ぐにゃりと、あたり一面の空間が捩れるような、奇妙な感覚に襲われた。
「おっとぉ?」
ウィリディアスの声さえ、遠く聞こえる。
「今更、お出ましなのかい?」
気持ち悪い――吐き気と共に、強烈な眩暈が襲いかかる。足元が揺らぐ。
思わず何かを掴んだ。指先で握り込んだのは、見事な装飾が施された臙脂色の上着。
「――僕のエフィムくんに何してんのさ」




