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追憶の辺獄  作者: 香取 仙狐
第二章 幻日の箱庭
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終演 part.2

「どうなってるのよ、一体これは誰の仕業なの?」


 円花の視線は、黒い焔に吸い込まれていた。


「それは、こっちの台詞さね」


 バライバがカーゴパンツのポケットから触媒を取り出す。

 カレンデュラを下がらせつつ、前方に手を翳す。


「――雷よ!天を裂き――」

「ちょっと、今はそんな場合じゃないでしょう!?」

「なっ」


 パリンッという軽い音と共に、触媒が粉々に砕け散る。


「今は戦ってる場合じゃないわ。この黒い炎から魔力の粒子を感じる。下手に触れたら――きゃっ!」


 背後の焔が、まるで円花を狙い定めたかのように噴き出した。


「――っ!」


 思わず、円花が後ずさる。


「――風よ、刃となりて切り裂け」


 その直後だった。

 横合いから、一陣の風が走り抜ける。

 鋭い鎌鼬が、円花目がけて襲いかかった。


「ッチ!」


 円花が咄嗟に手を振るう。


 瞬間、周囲の空気が硬質な壁と化し、風の刃を弾き飛ばした。


「ちょ、ちょっと待ちなさいって言ってるでしょ!?」


 焦燥に駆られ、円花の声が荒くなる。


「……あんた達、ここで焼き死にたいの?」


 前方にはバライバ、空蝉、カレンデュラ。

 そして横合いには、エフィム、ライツォフィオナ。

 背後には――今にもすべてを呑み込まんと迫り来る、黒い焔。


 見事なまでの四面楚歌。

 逃げ場など、どこにもなかった。


「それは、こっちの台詞です!」


 エフィムが双眸を険しくさせ、円花を睨みつける。


「だから――!」


 円花が再び、背後を振り返った。

 すでに焔は、すぐそこまで迫っている。


「だから、今はそれどころじゃないって、言ってるのよ!」


 その絶叫が、辺り一面に響き渡る。


 その瞬間――焔が、彼ら目がけて津波のように押し寄せた。


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