Grand Guignol ending
兄妹仲がいいかと問われれば、否である。
共通の話題にも欠ける上、下手をすれば、部屋の壁一枚を隔てただけで摩擦が起きる。
面倒極まりない関係だ。
「……兄様は、気にしなくてもよろしいのに」
「煩いぞ、アフェルディータ」
どこへ向かうのかなど、フェイルツィーオ自身にも分かっていない。
眼帯を外したフェイルツィーオは、そのまま社用車へ乗り込んだ。
「それで、何処へ向かわれるのですの?」
これで五度目だ。
だが、フェイルツィーオは一度として、アフェルディータの問いに答えようとはしなかった。
「とりあえず、ロティリスから出てくれ。話はそれからだ」
運転手役の魔術師が、ミラー越しに後部座席を覗き見る。
そこには、明らかに不機嫌そうな眼差しを向ける女と、それを鼻で嗤い飛ばす男の姿があった。
「御意に」
運転手は、少しばかり緊張した面持ちでアクセルを踏み込む。
――向かう先も分からぬ、ただの逃避行か。
だが、フェイルツィーオは口を縫い合わせたまま開かない。
ただ沈黙を貫き、義眼へ少しずつ魔力を注いでいく。
「……たまには、エゼルリードにも気を遣って差し上げた方がいいですわよ」
「ん、なっ!」
思わず、フェイルツィーオは窓に額を打ち付けた。
「だってそうでしょう。いつも兄様に責められて、辛いでしょうに」
「あのなぁ――!?」
今は、魔術による探索中だというのに――。
「ほら、そうやってはぐらかす。それではダメですわ、兄様! たまには、優しい言葉の一つや二つ、かけて差し上げないと」
「……貴様は、何も知らない癖に……!」
思わず、声を荒げる。
義眼を通して探っていた情報も映像も、すっかり掻き乱され、見失ってしまった。
「それが、何か?」
アフェルディータが、涼しい顔で訊ねてくる。
「――お前に、ボクの何が分かるというのだ」
「分かりませんわね」
またそれか――。
フェイルツィーオは、諦めたように溜息を吐いた。
「……それより、一雨来るかもしれませんわ」
どんよりとした空模様。
静かに、だが確実に、世界のどこかで何かが起きている。
そんな、悪い予感だけが、車内の空気をさらに重くしていった。




