↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶の辺獄  作者: 香取 仙狐
第二章 幻日の箱庭
61/93

Grand Guignol part.9

 ――開けてはいけないパンドラだった。

『イル・マット』のアジトの一つ――『幻日の箱庭』。


 ライツォフィオナは無力感でへたり込みながら、それでもどうにか脚に力を込めて立ち上がる。


「ライツォフィオナさん、ここは危険なので門まで走ります」


 エフィムは少しきつめに言い放つ。


 綠廊を抜け、宿根草の咲くガーデンを駆け抜ける。

 ヒールが土に埋まる。容赦なく、パンプスの中へ泥が雪崩れ込む。

 それすら厭わず、ライツォフィオナは走り続けた。


「――エフィム会長!」


 咄嗟にエフィムの腕を引き、横っ飛びに跳躍する。

 その刹那、二人がいた場所へ、仄暗い焔が直撃した。


「な、なにあれ……」


 光さえ飲み込む澱んだ焔。

 苦しみそのものを体現するかのように蠢くソレは、不規則にあらゆる方角へ触手を伸ばしていく。


「――雨よ、絶え間なく降り注ぎ、大地を満たせ!」


 エフィムが詠唱を唱えると、何もない空から大粒の雨がどっと降り注いだ。


「くそっ」


 だが、相手は得体の知れないモノ。

 雨に打たれても沈むどころか、その勢いは衰える気配すらない。


「これは、私たちがどうこうできるものではありません」


 ライツォフィオナはエフィムの腕を強く引き、そのまま門を目指して走り出した。


 ――ここにいてはいけない。

 ただ、その一点だけが本物だった。


 カレンデュラとバライバは、ちゃんと逃げおおせたのか。

 リヒェンツァは? リュディオールは? 空蝉は?


 何もわからない――けれど。

 今はただ、生き延びるために走る。

 黒い焔が迫る中、二人はただひたすらに走り続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。