Grand Guignol part.3
――この頃、通いのバーはピリついた空気に包まれていた。
リヒェンツァは天鵞絨のソファに腰掛け、喉を痛めつけるような強い酒を、無造作に流し込んでいた。
「ね、あの話だけど……」
「あー、アレね」
「そそ。やっぱ無理っぽいよ」
左隣に座る娘たちが、互いに耳打ちするように言葉を交わす。
「そ、そっかぁ……」
もう一人の娘も、落胆したように小さく溜息を漏らした。
あの日以来、『イル・マット』内でのリヒェンツァの立ち位置は変わっていた。
彼女の周囲には、特定の女たちしか集まらなくなったのだ。
どうやら、マリーやエカチェリーナを中心とした女たちが、裏で根回ししているらしい。
だが、リヒェンツァにしてみれば、むしろ都合がよかった。
「……――リヒェンツァ、聞いてる?」
「……んあ? 悪ぃ。聞いてる、聞いてる」
どうやら話題は、女性限定の会員制バー『Finger Tutting』に、男が度々紛れ込んでいるというものだった。
「スタッフも含めて女しかいないから、暴力を振るわれたら逃げ場がないし……困ったわ」
「ねー」
隣の娘たちが、口々に零す。
「見た目だけじゃ判断できないから、会員証の確認を厳しくするしかないんだけど……」
リヒェンツァはグラスを傾けながら、黙ってその話に耳を傾けていた。
そんな時だった――不意に、店内の扉が開いた。
入ってきた客たちを見て、リヒェンツァの隣にいた女が息を呑む。
「……あいつらよ」
彼女の視線の先には、三人の男がいた。
女物の服に身を包み、髪型や化粧まで整えている。
それでも、拭いきれない違和感があった。
骨格、立ち方、歩き方。
そして、こちらを見つめる視線。
この店にいる誰もが、その正体を察していた。
「貴女がリヒェンツァさんかしら?」
三人は真っ直ぐにリヒェンツァの前まで歩み寄る。
「……誰だ、テメェら」
リヒェンツァが身構える。
だが、男たちは動じなかった。
薄ら笑いを浮かべたまま、彼女を見下ろす。
「貴女を犯しに来ました」
その一言で、店内の空気が凍りついた。




