Grand Guignol part.2
エカチェリーナは、その足でウィリディアスの執務室へ向かっていた。
「――パパァ! リヒェンツァに襲われたの! あの娘、どうにかして!!」
ウィリディアスは安楽椅子に腰掛けたまま、キョトンとした顔でエカチェリーナを見上げる。
「『イル・マット』は異性恋愛厳禁だけど、女の子同士の恋愛は大歓迎だけどぉ?」
それで?
そう言いたげに首を傾げ、わざとらしく肩を竦める。
「違う! そういうんじゃない! ワタシはキスすら、好きな男のために取っておいてるの!! なのに、あの変態が……!」
「へぇ?」
怒りに震えるエカチェリーナの訴えを聞きながら、ウィリディアスは興味深そうに笑みを深めた。
「君ぃ、今の発言は撤回できないからね〜?」
「え?」
「好きな男のために、ナニ、かなぁ?」
その一言で、エカチェリーナの顔が一気に青褪めた。
「つまり君は――“イル・マット”の理念に反旗を翻している。そういう解釈で、間違いはない?」
ウィリディアスはゆっくりと椅子から立ち上がり、彼女を見下ろす。
「墓穴を掘るとは、まさにこのことだねぇ。ンッフフ」
まるで子供のような笑み。
しかし、その奥にあるものだけは、決して子供の純真さとは呼べない。
「……なっ! そ、それとこれとは別でしょう!? 今は――」
「は〜い、ダメ♡ 没収〜!」
次の瞬間。
エカチェリーナは、天井を見上げていた。
何をされたのかまでは分からない。
ただ、ろくでもないことをされたのだけは理解できた。
「僕は優しいから、君の魔力を一時的に封印するくらいしかしないけどぉ」
ウィリディアスは、何事もなかったかのように微笑む。
「次やったら、どうなっても知らないよ〜?」
ただ、それだけ。
それだけのことで、全ては終わってしまうのだと。




