42/48
再演 part.1
腹を裂かれ、一人の女が倒れている。
微動だにしないその姿は、糸の切れたマリオネットのように、力なく地面へ投げ出されていた。
「ああ……やっと、終われる」
霞む視界の向こうで、女は静かに悟る。
痛みは、とっくの昔に薄れていた。
死がすぐそこまで迫っているというのに、不思議と恐怖はない。
「……これで、いいの。あの子さえ……無事なら」
胸に残る未練は、たった一つだけ。
あの子の未来。
「私のせいで……」
――あの子は、不幸になってしまう。
それが自分の罪なのか。それとも、あの子自身の運命なのか。
そんなことさえ、もう判らなくなっていた。
けれど、それももう終わる。
意識が闇へ沈もうとした、その瞬間だった。
『お嬢さん、助けはいるかな?』
「……だ、れ……?」
『ジョン・ドゥ、とでも名乗っておきましょうかねぇ。しがない暇人にございます』
声は聞こえる。だが、姿は見えない。
「私はいいから……お願い。あの子を、どうか」
『ええ、任せて下さい』
ジョン・ドゥは優しく答え、女の額へそっと手を翳した。
深い、深い、意識の底へ落ちていく。
女には確信があった。
――これで、大丈夫だと。




