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追憶の辺獄  作者: 香取 仙狐
第二章 幻日の箱庭
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一匹狼 part.10

 そこからの説明は、駆け足で行われた。


「つまり、あなた方は全員、ウィリディアスと何かしらの接点があると」

「ま、それでいけばアンタも当事者になるけどね〜」


 バライバの指先が、ライツォフィオナへ向けられる。


「――私は、親友を探しています」


 ライツォフィオナはソファから立ち上がった。

 そして、その場に集う全員へ宣言するように、静かに声を響かせる。


「『イル・マット』の手によって連れ去られた可能性のある、大切な友を。ですから、魔術師育成協会に、私個人の依頼をお願いしたく参りました」


 一瞬の間。


「ウィリディアスが捕縛、あるいは討伐されるのであれば、私は協力を惜しみません」

「ほう」


 空蝉は片眉を上げる。


「貴様は、その親友とやらのために、人生を捧げているのか」

「ええ」


 ライツォフィオナは迷いなく答えた。


「結婚し、子を授かっても……この想いが消えることはありませんでした。もう、何年経ったのかも分かりません。それでも、私は諦めるつもりはないのです」

「ふむ……」


 空蝉はしばし黙り込み、やがて小さく笑った。


「人とは、げにをかしな生き物よな」


 感心したように、静かに頷く。


「良かろう、この己が直々に力を貸して進ぜよう。“癒し係”として集めた信仰ポイントがちょうど貯まったところだ」

「信仰、ポイント……?」


 エフィムが不思議そうに呟く。


「真剣に取り合わなくていいよ、エフィム坊ちゃん」


 バライバが呆れたように手を振った。


「ともかく、これで決定でいいかいね」


 バライバは改めて、集まった面々をぐるりと見渡した。


「異論なし」


 リヒェンツァが即座に答える。

 カレンデュラも静かに頷き、エフィムが小さく息を吐く。


「詳しい内容はメールで送るからさ。各自、明日の準備を整えておきな」


 バライバはそう言うと、席を立って大きく伸びをする。


「明日、またここに集合。それまでに覚悟くらい決めておくんだね」


 一瞬だけ、その場に沈黙が落ちる。


「……じゃ、解散だ。いつまでも居座ってないで、さっさと散りな」

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