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追憶の辺獄  作者: 香取 仙狐
第二章 幻日の箱庭
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一匹狼 part.7

「……ッ!」


 目を覚ますと、額にはじとりと汗が滲んでいた。


 呼吸は浅く、全身に夢の名残りがまとわりついているような、不快な感覚が離れない。


 リュディオールは乱れた息をゆっくりと整えながら、静かにベッドから身を起こした。


 頭を抱え、深く息を吐く。

 忘れようとしても、脳裏に焼きついた光景は薄れない。


 血の匂い。絶望の叫び。そして、歪んだ性欲。


「旦那さま……」


 その名を口にするだけで、胸の奥がきりきりと痛む。

 あの箱庭の中で、あの男だけが世界のすべてだったのだから。


 枕元の時計へ目を向ける。針は、午前五時半を指していた。


「……微妙な時間に起きちまった」


 集合は七時。

 今からもう一度眠るには遅い時間だった。


「幾ら何でも七時とか早くないっすか」


 誰に言うでもなく愚痴をこぼしながら、洗面台へ向かう。

 お湯で顔を洗い、鏡の中の自分と目が合った。


「隈、出来てるし」


 髭を剃って、濡れた顔をタオルで拭い、そのまま歯ブラシを手に取る。


 寝不足のせいか、身体が鉛のように重い。

 洗濯機を回すついでに、軽く洗面台を掃除する。


 朝食は簡単に済ませた。


 今日はいつもより早めに家を出る。


 片付けもそこそこに身支度を整えると、リュディオールは静かに部屋を後にする。


 ――パタン、ガチャリ。

 部屋には、悪夢の余韻だけが取り残された。

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