一匹狼 part.5
「……つまり、お婆ちゃんとリヒェンツァさんは、ウィリディアスの“娘”だったのね」
「そう。アタシは拾われた子じゃない。正真正銘、弟子だよ。勝手に押しかけて、弟子としてついて回っただけさ」
バライバの説明を、カレンデュラはぽつりぽつりと整理していく。
「それで、リヒェンツァさんは……」
「俺は正真正銘の捨て子だ。ガキの頃はスラムで物乞いして、盗みもして、飢えて死にかけてた。そこをウィリディアスに拾われた」
リヒェンツァは自嘲気味に笑い、ポケットへ手を突っ込む。
「それで、その……」
「オレっすか?」
リュディオールが人差し指を自分へ向ける。
「えっと、リュディオールさんもウィリディアスの“娘”なんですか?」
「いいや、違うっすよ。オレは普通の家庭で育ちまシた。それに、『イル・マット』の人間でもないっす」
「……え?」
今度はエフィムが驚きの声を漏らす。
「そう。リュド坊ちゃんは、ウィリディアスの“娘”でもなけりゃ、『イル・マット』の一員でもない」
バライバが補足する。
「じゃ、じゃあ、何で――」
その問いに、リュディオールは答えなかった。ただ、静かに目を伏せ、黙り込む。
「アタシも詳しくは知らない。アンタが、自分で話したいと思う時に話せばいい。だが、今はヴォルーツォの方に集中しなきゃならないしねぇ?」
「でも、ウィリディアスの話を聞いて、改めて思ったことがあるの」
カレンデュラが一度、集まった全員をぐるりと見回す。
「皆、ウィリディアスと何かしらの関係がある。でも敵対しているのに、誰も恨んでるように見えないなって。それが不思議で」
一同が互いに顔を見合わせる。
「……恨んでないかでいえば、まあ。俺にも悪い部分はあるから」
「アタシは嫌いだよ? だって余計なことしかしないもん」
「オレは別に……」
次々と飛び出す意見に、エフィムは呆然とする。
「恨んでない……? じゃあ、何故リヒェンツァ副会長は、『イル・マット』から脱退なさったんです?」
「エフィム坊ちゃん」
バライバが制すると、エフィムはバツが悪そうに俯いた。
だが、リヒェンツァが口を開く。
「別にいいさ。どのみちケジメは着けなきゃならねーんだし」
その言葉にどれほどの重みがあるのか、エフィムには理解できなかった。




