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追憶の辺獄  作者: 香取 仙狐
第二章 幻日の箱庭
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一匹狼 part.5

「……つまり、お婆ちゃんとリヒェンツァさんは、ウィリディアスの“娘”だったのね」

「そう。アタシは拾われた子じゃない。正真正銘、弟子だよ。勝手に押しかけて、弟子としてついて回っただけさ」


 バライバの説明を、カレンデュラはぽつりぽつりと整理していく。


「それで、リヒェンツァさんは……」

「俺は正真正銘の捨て子だ。ガキの頃はスラムで物乞いして、盗みもして、飢えて死にかけてた。そこをウィリディアスに拾われた」


 リヒェンツァは自嘲気味に笑い、ポケットへ手を突っ込む。


「それで、その……」

「オレっすか?」


 リュディオールが人差し指を自分へ向ける。


「えっと、リュディオールさんもウィリディアスの“娘”なんですか?」

「いいや、違うっすよ。オレは普通の家庭で育ちまシた。それに、『イル・マット』の人間でもないっす」

「……え?」


 今度はエフィムが驚きの声を漏らす。


「そう。リュド坊ちゃんは、ウィリディアスの“娘”でもなけりゃ、『イル・マット』の一員でもない」


 バライバが補足する。


「じゃ、じゃあ、何で――」


 その問いに、リュディオールは答えなかった。ただ、静かに目を伏せ、黙り込む。


「アタシも詳しくは知らない。アンタが、自分で話したいと思う時に話せばいい。だが、今はヴォルーツォの方に集中しなきゃならないしねぇ?」

「でも、ウィリディアスの話を聞いて、改めて思ったことがあるの」


 カレンデュラが一度、集まった全員をぐるりと見回す。


「皆、ウィリディアスと何かしらの関係がある。でも敵対しているのに、誰も恨んでるように見えないなって。それが不思議で」


 一同が互いに顔を見合わせる。


「……恨んでないかでいえば、まあ。俺にも悪い部分はあるから」

「アタシは嫌いだよ? だって余計なことしかしないもん」

「オレは別に……」


 次々と飛び出す意見に、エフィムは呆然とする。


「恨んでない……? じゃあ、何故リヒェンツァ副会長は、『イル・マット』から脱退なさったんです?」

「エフィム坊ちゃん」


 バライバが制すると、エフィムはバツが悪そうに俯いた。

 だが、リヒェンツァが口を開く。


「別にいいさ。どのみちケジメは着けなきゃならねーんだし」


 その言葉にどれほどの重みがあるのか、エフィムには理解できなかった。

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