一匹狼 part.3
『もう、明日から来なくていいぞ』
その言葉が、頭の中で何度も反復する。
「……リヒェンツァさん?」
楽しいはずのショッピングの最中でさえ、彼女の意識は遥か遠くへ飛んでいた。
分かっている。自分の犯した罪の重さも、それが決して許されないことも。
「悪ぃ、またぼんやりしちまった」
リヒェンツァはバツが悪そうに頭を掻き、無理に笑みを浮かべる。
だが、カレンデュラの表情は次第に曇っていく。
「リヒェンツァさん、無理に誘っちゃってごめんね」
「いや、そういうわけじゃねーよ……ただ、ちょっと疲れてるだけだ」
無意識に伸ばしかけた手が、宙で止まる。
その時、タイミングを見計らったようにスマートフォンが震えた。
画面に表示されたのは、見覚えのある番号――リュディオールからだった。
「何の用だよ、テメェ。要件を言え」
『……いきなり酷くねーっすか』
通話に出るなり怒鳴りつけるリヒェンツァに、電話口の向こうの男は呆れたようにため息をつく。
『用がなきゃ、今どき電話なんかかけねーっすよ』
「なら、さっさと言えよ」
リヒェンツァは面倒くさそうに舌打ちすると、カレンデュラへ目配せしてメモを取るよう促す。
『なんか、理事長から連絡が来たんすわ。内容は、全員揃ったら話すとか何とか』
「バライバから?」
何故だろう。胸騒ぎがした。
「……お婆ちゃんがどうかしたの?」
カレンデュラが耳元で小さく囁く。
「まさか、カレン絡みか……?」
声を潜め、カレンデュラに聞こえないよう呟くリヒェンツァに、電話越しの男は間髪入れず答えた。
『いいや、ヴォルーツォらしいっす』
「あぁ?」
リヒェンツァは眉をひそめ、再び通話へ意識を向ける。
「アイツが何かやらかすのは日常茶飯事だろ。で、本題は何だ? まさか、それだけじゃねーんだろ?」
『いや、だから――』
有無を言わせぬ口調に、電話越しの男は苦笑混じりに続ける。
『ヴォルーツォが失踪したらしいんすわ』
「――はぁ?」
今度こそ、リヒェンツァは素っ頓狂な声を上げた。




