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追憶の辺獄  作者: 香取 仙狐
第二章 幻日の箱庭
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驚いた ending

 ひらひらと、枯葉蝶が舞う。

 どこか優雅でありながら、淫美で艶かしい。

 見る者の感情を静かに掻き立てる、ある種の魔術だった。


「ンッフフ」


 掌ほどの大きさの蝶が、男の指先へそっと舞い降りる。


 今し方、仕事を終えたかのように、静かに、されど確かに報酬を求めている。


「……へぇ、リヒェンツァが副会長ねぇ」


 答えるように蝶が羽を広げた。花弁を思わせるその翅は、夜の帳へ溶け込むように滑らかだった。


「よくやったね、愛しのリ・リル」


 蝶は小さく羽を震わせる。その仕草を満足の返事と受け取ったのか、男はふっと口元を緩めた。


「さてと。あの娘が、どう組織を転がすか見物だねぇ。『イル・マット』の元・指揮官としての実力を、存分に発揮してもらいたいものだ」


 蝶は男の指先を離れると、ゆるやかな弧を描いて宙を巡る。

 その軌跡はどこか落ち着きなく、不安を拭い切れない主人の心を代弁しているようでもあった。


「まぁ、焦ることはないさ」


 男は窓越しに夜空を見上げ、愉快そうに目を細める。


「僕は、その時を待てばいい」


 蝶は一度だけ男の周囲を旋回すると、唐突に枯葉のようにふわりと舞い落ちる。

 夜風に溶けるように、その輪郭は黒へと滲み、やがて跡形もなく闇へと消えた。

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