驚いた part.6
「……やる。やり遂げてみせる」
やる気だけで、体力づくりが続くほど甘くないことくらい分かっている。
「絶対に魔術師になるって決めたから!」
そう言って、カレンデュラは首に掛けたタオルをぎゅっと握り締めた。
魔術師育成協会の周辺には、薄い靄が立ち込めていた。
その道を、カレンデュラは小走りで進む。
「はぁ……はぁ……」
呼吸は浅く、脚は鉛のように重い。
勢いで啖呵を切ってしまった手前、今さら後には引けなかった。
「カレン、息できてるか? 無理しなくていい」
リヒェンツァは彼女の歩幅に合わせて隣を走る。
「だ、大丈夫……です……! うぅっ」
「おい、無理すんなって……」
言い終えるより早く、リヒェンツァは足を止める。
カレンデュラが、その場で止まったからだ。
「はぁ……はぁ……ま、まだ……!」
闘志は消えていない。
ただ、その気持ちに身体がまるで追いついていなかった。
「急に止まると心臓に負担がかかる。歩きながら息を整えろ」
リヒェンツァの指示に従い、カレンデュラは足を動かしながら必死に呼吸を整える。
「はぁ……はぁ……」
額を伝う汗が目に沁みる。
それでも、気にしている余裕などなかった。
「そうだ、それでいい。焦るな、歩け」
頭では分かっている。
それでも焦りは消えず、強張った表情のまま必死に足を前へ運ぶ。
「はぁ……はぁ……」
荒れていた呼吸も、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「大丈夫……大丈夫……絶対に、大丈夫……」
「よし」
リヒェンツァは水の入ったペットボトルを差し出した。
「今日はこのくらいでいい。初日にしちゃ上出来だ」
「あり……がとう、ございます」
礼を口にするものの、声にはまだかすかな震えが残っている。
「もう終わりで、いいんですか?」
「当然だ。初心者がいきなり飛ばしてどうする。無理して全部台無しになったら意味ねぇだろ」
いかにも元教官らしい、現実的な答えだった。
「う、うん……そう、だね」
カレンデュラはゆっくりとその場にしゃがみ込み、ペットボトルを口元へ運ぶ。
冷たい水が、熱を帯びた喉へ染み渡っていく。
「――あれ、リヒェ姐……?」
不意に、若い男の声が背後から飛んできた。




