表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶の辺獄  作者: 香取 仙狐
第二章 幻日の箱庭
20/47

驚いた part.2

「……さてと、夕飯にすっか」


 派手な格好にはまるで似つかわしくない、可愛らしいアヒル柄のエプロン。


「──プッ!」


 思わず、カレンデュラは吹き出した。

 その反応を見たリヒェンツァは、怒るでもなく、呆れたように頭を掻く。


「……うるせぇな。仕方ねぇだろ」


 アリカとエミルのお節介の延長線上で、こんな支給品まで渡されてしまったのだ。


 二人がどういう意図でこれを選んだのかは容易に想像がつく。

 だが、今さら文句を言ったところで、どうにもならないのも事実だった。


「というより、副会長ってすっごく偉い立場ですよね? 自分でご飯も作るんですか?」

「お前は作ってもらう側だから分かんねぇと思うが……」


 また小言が始まりそうな気配を察し、カレンデュラは素早く話題を逸らした。


「あの、魔術師になるためには試験があるって聞きました」


 カレンデュラは話題を変えようと努めて、明るい声を出す。


「なんか色々条件とか、規則とかあるんですよね? やっぱり難関なんですか?」


 リヒェンツァは手際よく人参を刻みながら、ちらりとこちらへ目を向けた。


「そうだな……難しいっちゃ難しいな」


 素っ気ない返事だったが、少なくとも機嫌を損ねた様子はない。


「まず前提として、実技だけじゃなく座学も必要になる。歴史とか、法規制とかな」


 人参を切り終えると、今度はジャガイモを手に取る。


「それと、最低限の身体能力も必須だ。戦闘系じゃなくても、現場じゃ何が起こるか分からねえ。体力勝負になった時、動けねえ奴は役に立たねぇからな」


 次の瞬間、手の中のジャガイモの皮が熱に浮かされるようにするりとめくれ、そのままひとりでに剥がれ落ちた。


「……つまり、何を勉強すればいいんですか?」


 カレンデュラは話を元に戻すように問いかけた。


「それを考えるのがてめぇの仕事だろ。今のところ無職同然なんだし、勉強以外にやることがあるなら言ってみな」


 その冷たい一言が、カレンデュラの胸に突き刺さる。


「……うぅ、やっぱりそっかぁ」


 半ば予想はしていた。だが、実際に言葉にされるとやはり堪える。


「本来なら魔術師育成学校に入学して、そこで基礎から学ぶのが第一関門なんだもん。スタートラインが全然違う。同世代のみんなが何年もかけて積み上げてきたものを、あたしはゼロから積み上げなきゃいけないんだよね……」


 頭の中でぼんやりとしていた不安が、少しずつ輪郭を持ち始める。


──時間の壁。


 それがどれほど高いのか、今の自分にはまだ見当もつかない。

 けれど、確かに目の前へ立ちはだかっている。


「しゃーねーって。魔力が元々極端に……ん?」


 リヒェンツァは不意に鍋の火を止め、カレンデュラへ視線を向けた。


「……てめぇ、魔術師になるつもりなん?」

「え? そうですけど?」


 今さら何を言い出すのかと思えば、あまりにも当然の問いだった。

 しかし、リヒェンツァの目は違うものを見ている。


「そうか、お前――」


 言いかけたところで口をつぐみ、鍋に水を注ぐ。

 続けてルーを一欠片放り込み、静かにかき混ぜた。


「あのウィリディアスを蹴散らしたって話は、本当だったのか」


 独り言のような呟きだった。

 だが、その声には妙な重みがあった。


「えっと、つまり……」


 カレンデュラは少しだけ言葉を選び、それでも結局、率直に尋ねることにした。


「リヒェンツァさん的には、反対なんですか? あたしが魔術師になること」

「いいや、別に?」


 返事は拍子抜けするほどあっさりしていた。


「……いやぁ、アイツも舐めてかかったんだろうが、あんなあっさり引き下がるタマじゃねぇし……なんか妙だな」


 鍋をゆっくりとかき混ぜながら、リヒェンツァは視線を落とした。

 思考はまだ別の場所にあるようだった。

リヒェンツァは何を作っているでしょうか

1カレー

2シチュー


答えは……!


知らん(クソ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ