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2696 かくして植民惑星は内戦に向かった  作者: もってぃ
フェルタン・ドリーマー
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挿絵(By みてみん)


 ラフが地球を訪れていた2年半の間に、連邦評議会議員選挙があった。

 地球連邦200臆人の声を代表する評議員は、4年に1度、半数ずつが直接選挙によって選出される。

 学生のラフは興味深く観察した。



 当時も現在(いま)も選挙の争点は経済政策で、積極的な財政・金融政策、とくに大幅減税による経済成長と雇用の拡大が4年おきに論じられることになる。だがすでに爛熟期を迎えて久しい地球圏に滞留する資本の行先は、フェルタに向かうより他にないことは自明であった。投資先として最有力なのは、人類経済圏で最大の希土類(レアアース)鉱山である〈アンディユ鉱山〉の在るサローノ準州ファテュ郡である。


 〈コホード(旧ロシア圏)〉〈マルドー(南米)〉〈ローディア(アフリカ)〉の3州などは、現地開発から交易事業までを広く専門に行う〈合弁特許会社〉(※地球連邦構成州行政の特別許可状を以て設立された星間貿易を主とする会社)を共同で設立し、その開発の規模は年を追うごとに拡大されていった。

 それに伴い〝星の海〟を渡って〝約束の地(フェルタ)〟を目指す移住者は増加の一途を辿る。

 発展途上にある惑星(ほし)に十分な資本が流入し、基幹産業の再編拡大が進む。不足する労働需要が〝フェルタン・ドリーム(新天地での成功の夢)〟を抱く多くの移住者を受け入れ、内需は拡大、星系間貿易収支も〝右肩上がり〟の活況を呈した。


 だが、この時期のこの潮流が〝フェルタに住まう者〟に「格差」の存在をあらためて意識させることとなる――。


 地球からの移住者フェルタン・ドリーマーは、先ず、移動・居住の自由が著しく制限される現実を思い知る。地球圏で当たり前に保障されていたことがフェルタでは許されない。

 そうして次なる〝現実〟が、更に彼らを憤慨させるのだ。

 一度フェルタに籍を移してしまえば、事実上、地球圏に籍を戻すことが出来ないという現実。地球からフェルタへの査証(ビザ)はすぐに交付されるくせに、フェルタ在住者が星を出るための査証は、有力者のコネでも無ければ、まず交付されることはなかった。


 そんな彼らは、最後には〝自分たちに科せられている理不尽〟に気付かされ、絶望する。

 連邦の所管する行政に陳情する窓口がないことの理不尽。

 その本質が〝連邦行政府・立法府に自らの代表を送り込めない〟ことという理不尽。フェルタの民は地球連邦に対し、自らの代表を選び、送り出すことを認められていなかった。


 導き出されるのは〝〈フェルタ〉にある限り何も変えることが出来ない〟という現実。


 ――…ここに至り彼らは、自分たちが〝棄民〟であることを思い知ったのだった。



 こういったことへの不満から〝フェルタ人の置かれた構造的不平等〟が顕在化していったのは、ある意味、皮肉であった。

 フェルタ生まれの〝()()()フェルタ人〟であれば、こういったことは単純に技術的な制約――224光年という距離に基因する情報伝達のタイムラグ――と理解し、政治的抑圧に結び付けて考えるということはなかったろう。もともと存在しえない権利を、人間は意識したりしない。この時期の移住者は地球圏の実態を知っていたが故に、〝地球連邦の政治的な欺瞞〟という構図に気付けたといえる。


 そういった不満は2680年代からすでに顕在化しており、〝新しい世代〟の移住者を中心に、連邦市民として〝不平等な権利の是正〟のためには〝闘争〟も辞さないという〈権利闘争派〉が各地で台頭している。

 ラフが地球に留学する前年( )('87年)には、ファテュで民衆が蜂起、独自に「人民市長」を選出して地球3州の合弁特許会社に対し権利交渉に臨む、という展開があった。……現在に至るサローノの内戦の発端は、このようなことだった。



 何れにせよ、地球連邦政府によるフェルタ移住政策は何らの善後策を講ずることなく、粛々と進められており、その是非を問う〝市民の審判(選挙)〟は、当事者であるはずのフェルタ人を置き去りにして実施されていた。


 フェルタで生まれた〝()()()フェルタ人〟であるラフは、学生時代にこうしたフェルタを巡る社会の矛盾を、遠く地球圏から観察したのだった。

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