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2696 かくして植民惑星は内戦に向かった  作者: もってぃ
フェルタン・ドリーマー
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 評議会議員選挙は直接普通選挙で、地球圏の全域で複数の日程に(わた)って行われる。18歳以上の地球連邦市民は学生であっても投票が出来た。

 成熟した民主政治は誰にも開かれており、ラフの周囲でも各政治会派の掲げる政策についてを語り合うことは多かった。

 そうしたなか、フェルタ人であるというだけで投票することの出来ないラフは、投票日前の最後の週末、友人たちを前に〝フェルタ人としての自分の意見〟を開陳したのだった。自分のアイデンティティを友人に語ってみせた。

 留学して1年が経っており、地球での友人も出来て、皆が良くしてくれていたことが、そうさせたのだった。


 が、それによって(もたら)されたことは、共感でも相互理解でもなく、ただ〝自分がフェルタ人であり、地球人(彼ら)とは違う〟という現実を思い知ることだけだった。

 確かに〝フェルタで最も地球と利害を一にするアイブリーの名家サンデルスの人間〟である自分が、地球人のように振る舞い地球人のように考える限りにおいて、彼らは〝条件付き〟で仲間として受け入れてくれた。


 しかしそれは、フェルタ人としての自分を受け入れてくれたわけではないことにすぐ気付いた。彼らは地球圏の価値観を共有する地球連邦市民として、自分を()()()()()()()()()遇してくれただけだ。〝フェルタに生まれ生きる〟ということに思いを馳せてくれるような友人は居らず、彼らの興味は、(もっぱ)ら、フェルタ情勢の地球経済圏に及ぼす影響だけだった。

 地球人にとりフェルタは〝同胞〟の住まう地ではなく所有する物件でしかなく、そこに住まう人々は、生活の上での〝隣人〟ではなく経済指標の一つでしかない。


 フェルタに生まれながら〝フェルタの未来を左右する議会〟へ自らの代表を送り出す一票を投じることのできないフェルタ人からすれば、こういう彼らが〝自分たちの生(さい)与奪の権に繋がる1票を握る〟現実を、どう受け止めるべきかわからない。



 いや、本当はわかってはいた…――。


 技術的な制約からの〝不平等な権利〟を甘んじて体制の内に留まることができないのなら、後はもう、体制の外に〝自立した対等な存在〟になって自らの意志を突き付けるしかない。

 成熟した社会に慣れ親しんだ〈権利闘争派〉が始めた〝夢見がちな運動〟は、早晩、150年に(わた)った差別に決別することを選んだ〈分離独立派〉の〝本物の闘争〟に取って代わられるだろうことを。


 事実、ファテュではそうなった。



 とまれラフは、そんな地球の友人たちの〝礼儀正しい冷淡さ〟を非難することをせず、悪化の一途を辿るファテュの状勢を遠く地球から眺めながら、地球連邦200臆人の意見を反映させる手段――連邦評議会選挙――を、彼らの隣で観察し続けたのだった。


 両親が地球に送り出した理由は理解していた。

 サンデルス家の一人として地球で友人(人脈)を作るために送り出された。

 もし望めば、そのまま地球で生きていくことも選べたろう。

 サンデルスと地球とを繋ぐ「窓口」として生きる人生。……それも選べた。


 2年半の留学をいったん終えてアビレーに戻ったラフは、両親に今後の身の振り方を訊かれ、すぐには返答が出来なかった。

 彼ら(両親)の望みは理解して(わかって)いたから。


 自分たちの想いに応えてくれる〝出来息子〟を期待する両親と、そんな両親に内心で辟易としていたラフとの間の微妙な空気を払ったのは祖父だった。


 祖父は何ら斟酌することなく、こう訊いた。「地球でのお前は、何者だった」と。

 ラフは答えた。「〝フェルタ人〟だった」と。

 すると祖父は、こう続けた。「……それで、何者になりたいと思った?」


 ラフは、祖父を向いて言った。

「やっぱり……〝フェルタ人〟だ」




「…――〝僕はフェルタ人だ〟。そう言ったんです」


 前を向いたままそう答えたサンデルスの横顔を、ラッピンはしばし見つめた。その横顔、フェルタの強い陽射しを遮るサングラスの下には、何の表情も浮かんでいない。


「そう――」

 ラッピンは頷いて返すと、視線を前に向け直した。

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