〜回想〜 一方その頃
長いので分けて投稿します(◡ω◡)
「ぅわぁああああっっ!?!?」
「「アレク!/アレク様…っ!!」」
アレクが大きな狼に連れ去られる数刻前の話。
「ふふ…アレク様、寝てしまわれました」
「まぁあれだけ魔法石を使う為に練習していりゃな」
「少しでもスムーズに使えるように、と…頑張っていましたからね」
焚き火の近くですぅ、すぅ、と静かな寝息を立てながら横になって寝ているアレクを、ルーアとリオーレは静かな声で話しながら見守っていた。
焚き火を焚き、その火で簡単なご飯を作って食べた後、クラースの持っていた魔法石が気になったのか興味を示したかと思えばこっくりこっくりと顔が縦に揺れ、そのまま横になれば寝てしまった。
流石にそのまま寝かすわけにもいかないので、ルーアはその上から寝袋を布団のようにして被せる。
本当は地べたに寝かせたくはなかったけれど無いよりはマシ、幾分かは身体を冷やさないで済むだろう。
「なんやかんや…こいつも焦ってたんだな」
「…?…それはどういう……?」
「俺やお前は戦闘には慣れてるが、アレクはそうじゃねぇ。
だから足手まといになるかも、なんて思ってたんじゃねぇか?」
そうじゃなきゃあそこまで練習だ!と言ってやるか普通?、彼は苦笑いしながら言った。
実際魔法石は使用回数は有限、ましてやアレクの持つ大きさ程の魔法石は貴重だ。
彼以外が持っていたとしたら、仕事の時やいざという時以外であんなに使うことはしない。
もちろんアレク自身そんな事を知る訳もなく、それもあって使っていたとも考えられるけれど。
「……(アレク様…)」
そうなんだとしたら、ルーアは思う。
気づいてあげなければいけなかったのに、焦る必要はないのだと。
足手まといなど絶対ないのだと。
そう言ってあげられる程近くにいたのに。
表情に出ていたのか、彼女の様子にリオーレは、
「過ぎた事を気にしすぎんなって!
これからしてやれば良いんだから、な?」
ニカッと笑い、そして彼は言う。
そんな彼の言葉は幾分かルーアの心を晴らした。
「…で、だ」
「…?…はい」
急にリオーレが真剣な顔をしてきたのを見て不思議に思いつつ、彼女は同じく真剣な顔つきで視線を向けた。
「姉さんからお前からの話を聞いてんだけどさ」
私からの話…。
そう思いつく事といえば、彼…アレクの事と。
そしてもう一つ、
「……不審人物の件、でしょうか?」
「あぁ。
一度姉さんから聞いたとは言え、もう一度…今度は本人の口から聞いてみてーと思ってな」
話せるか?
リオーレはいつになく真剣だった。
……それもそうだろう。
ただの不審人物という話なら、国か周辺の警備隊に報告すればいいだけだった。
けれど、ルーアはそうはせず、直接女王にだけ報告したのだ。
何故なら…、
「……単刀直入にお話します。
……その不審人物、『救世主』であるアレク様の現れる場所を正確に知っておりました」
しばらく沈黙が続いた。
そのまま伝えたけど、もしやいけなかったか?
きちんと説明した上で言った方が良かった…?
いや、…そういう事ではなく、
リオーレは深く考え込んでいる様子に見えた。
そして、
「…確か、顔は見えなかったんだっけか」
「…、…はい。
深くフードを被っていたのもありますが………その、」
「"白ウサギ"の仮面、だな?」
「……はい」
彼はルーアが申し訳なさそうにするのを見て、見えなかったのは仕方がなかったんだから気にすんなと笑う。
それでも彼女としては、不審人物だったのに確認も出来ずに終わった事はやはり気がかりなのだ。
大きな白い耳がこれでもかとしょんぼり垂れる。
もー終わった事は気にしない!
リオーレはこれからもしもの事を対策してけばいいんだからと励ます。
「で、その不審人物……"白ウサギ"という仮の名前で呼ぶか…。
白ウサギはどうやってアレクの居場所を特定したんだ?」
「分かりません…。
ただ…、今回アレク様が現れる場所についてはロッタ様は分からないと言っておられました。
その為、私はあの森の端から端まで確認する覚悟で行ったんです」
未来予知の魔法持ち・ロッタ。
現在うさぎの国にいる彼女は、アレクのこの世界への出現を予知した。
けれど、それはあくまでも予知に過ぎず、ただ未来に起こるその場面の一部を見るだけ。
ロッタが知り得る世界の何処かであれば、その場所が何処かまでは分かるものの…正確な場所までは分からない。
けれど白ウサギは、
ーーー『……もうすぐ"彼"がこの世界に来る、…あの木の下で』
はっきりと言ったのだ。
白ウサギの言葉で目線を外したのがまずかった。
また白ウサギの方へ向いた時には既に底には最初から誰もいなかったかように、元の森の静けさに戻っていたのだから。
次もし白ウサギに会う機会があったその時は、…今度は見失わないように。
ルーアはそう決意した。
それと同時に、
(……不審人物と言う割に…、……白ウサギの声は優しかった気がする)
何処か懐かしく、何処か寂しそうな。
そんな風に…白ウサギの言葉から、あの声から、彼女は感じたのだ。
それも、……気のせいでないとしたら。
そう思って首を振る。
今はあまり深く考えても仕方がないこと。
ルーアはその考えを振り払い、彼の傍にいてあげることを、そして少しでもその心に寄り添えるように。
彼女はそっと彼の頭を撫でて。
ーーー……ガサッ…ッ
「「!!」」
突然の音。
そして徐々に近づくは大きな影。
その音でさえ起きないアレクを守るようにして立つ二人は、それぞれ武器や魔法を放つ構えをして警戒する。
足音はあまり聞こえない、けれど代わりに聞こえてくる草木がガサガサと揺れる音に獣の唸る声。
いや、……これは。
リオーレは直感で何かを感じ取る。
「…ルーア、…アレクを起こせ」
「…はい…っ」
そんな彼の言葉に彼女はすぐ動いた。
依然として唸り声の主ははどんどん近づいてきていて。
「…アレク様、…アレク様…!…申し訳ありません、起きてください…!」
ルーアはその主を刺激しないよう注意しながら、彼に声をかけ、体を少し揺らしてみる。
…けれど、…反応がない。
(……起きない…!…お疲れなんだとは思うけど…でも、何か違う…っ!)
息はしている。
上下に胸は動いている。
はたから見ればただ熟睡しているだけだ。
だとしても、声をかけたり揺らせば普通は少しは体を動かすなりうーん…などの反応を少しはするはず。
……それがない。
本当にただ眠っているだけ。
「…リ、リオーレ様…!
アレク様が…!!」
「…!」
何故この状況に気付かなかったの…!?
自分を責める。
が、声の主はそんな事知ったこっちゃない。
「……マジかよ」
現れたのは人を一回りもふた回りも超える、
『ガルルルル……っ…!!』
以上に大きな、…魔獣になりかけている……、
ーーーーーーーーーー巨大な狼だった。




