〜回想〜 一方その頃2
『…リ、リオーレ様…!
アレク様が…!!』
アレクの様子がおかしい、それがわかったと同時に、唸り声をあげて現れたのは人よりも一回りも二回りも大きな狼。
こんな狼は見たことない。
そんな狼の体の周りには黒いモヤ、…魔獣化する前に起こる現象と同じ…この狼は魔獣化しかけてるようだ。
(アレクの方も何かあったみてぇだし、この状況…良くねぇな…)
目の前にいる狼へ視線を逸らすことなくカチャリと剣を構えたまま思考を巡らせ、この状況をどう切り抜けるべきかを彼は考える。
その間にもグルルルと唸りをあげ、狼は今にもリオーレへ飛び込もうと構えていた。
そして……_____。
_____ダンッ!!
どちらが先だっただろうか。
リオーレの剣と狼の牙が混じり合う。
彼の剣をギリギリと牙で砕こうと狼はどんどんと力を強めてく。
負けじと体全身で受け止めどうにかして振り払おうとリオーレも奮闘するも、その間にも彼の身体は狼によって少しずつ後ろへと後退させられていた。
(ちっ……!……両手が塞がって!)
リオーレは剣に埋め込まれている自身の持つ魔法石に触れようにも、狼の力に手を離さずその力を使うことができない。
この石に身体強化ができる。触れれば腕力や瞬発力を上げる事ができるというのに。
ザザ…ッと後退する体。
後ろにはルーアとアレクがいる。
どうあっても引く訳にはいかない。
どうにかこの狼の気を反らせはしないか。
と、
「リオーレ様!!」
ルーアの声と共に狼の顔を覆うように小さな風が巻き上がった。
これは……ルーアの風の魔法だ…!
いきなりの不意打ちの攻撃に瞬間狼は力を緩める。
その隙を逃さず。
「っ、はぁあっっ!!」
『…!』
剣の魔法石に触れ身体を強化。
そのまま狼を振り切る。
流石にそれには狼もきゃんっ!と声を上げた。
すぐにまた体勢を戻しこちらを威嚇し始めたが…、それでも距離はなんとか取れた。
更に魔法石で腕力を強化し、そして今度はリオーレから攻撃を仕掛けた。
右、左、右…と見せかけて下。
ひゅんひゅんと風を切る音が響く。
狼は彼の剣筋を見極めうまく躱すが、段々と速くなっていく剣筋に追いつけなくなっていき、ひゅっと一部の毛を斬られてしまう。
とはいえ怯んで反撃しないはずもなく、大きく口を開け、今度は彼の剣に食らいつき、剣のその動きを止めた。
先程のように長く止めることはなく、またリオーレが狼を振り払い、また攻撃を仕掛け、交戦攻防を繰り返す。
夜の森に響く刃と牙の交わる音はまだ終わらない。
「アレク様…!アレク様…っ!どうか目を覚ましてください…!」
ルーアがどんなに声をかけても、体を揺らしても彼は反応せず、ただ目を閉じ眠ったまま。
起きていた時は異常など見当たらなかったのに、まさかこんな事になるなど思っていなかった。
守る為に傍にいたのに、自分は何故気づく事ができなかったのか…その後悔だけが心を支配していく。
リオーレの方もかなり厳しく、ルーアの魔法で隙は作ることはできたものの、あまり良い状況ではない。
(少しでも離れた所にアレク様を背負っていって…、それからリオーレ様の援護をした方がいいかもしれない…)
少しでも彼を安全な場所に。
そう思い彼に触れようとした時。
___ガキンッッ!!
「…っ!!」
「ハッ!)リオーレ様!!」
狼とは交戦中のリオーレが、狼の前脚で体ごと吹き飛ばされる姿が見えた。
幸い直ぐに立ち上がったものの、既に息が上がってしまい、肩が大きく上下に動いている。
このままでは彼も危ない…!
ルーアは瞬間の判断でアレクから少し離れ、狼に向かって風の魔法を放つ。
なんとかして自分に気を反らせないかと。
が、…彼女の力は下級の魔法、そう簡単にいくはずもなく…。
狼は不意打ちの時のような反応は見せず、むしろ少し煙たそうにしているだけで、尚も牙を剥き出しにしながらリオーレに意識が向けていた。
………というのに。
『…………?』
急に狼の動きがピタリと止まる。
……否、…何かに反応してる…?
…それからとある方へ視線を向けじっと見つめていた。
(……何…?
…私を、…見てる………?)
……いや、……違う…!
狼の視線の先にいるのは、ルーア……ではなく、そう…アレクだ。
そう分かった時にはダンッと狼はこちらに向かってきて。
「…!まずいっ…!ルーア!!アレクを!!」
彼の言葉も聞こえたが、もう狼は彼女の目の前に迫っている。
どうにか自分にと必死に彼女は魔法を放つがもう何も気にしてないかのようにそのまま突っ込んでくる狼。
このままでは彼女にぶつかる。
そう見えたが…、ぶつかるなどもなく。
…狼はルーアを飛び越えていったのだ。
「なっ…!アレク様…!」
狼はもうアレクの目の前。
彼の体を砕かんと大きな大きな口を開けた。
スローモーションのようにその動きがとてもゆっくりと感じる。
(だめ、だめだめ、……だめっっ!!)
「アレク様っ!」
ルーアは叫ぶ。
「……」
「「………!?」」
ピタリと、口を開けたまま動かなくなる狼。
彼女も彼も、その瞬間何が起きたのか分からずその場で固まってしまう。
何故なら。
「…黒いモヤが……消えていく…?」
その体に纏っていた黒いモヤがまるで何処かに吸い込まれるように…そう、まるで最初から何もなかったかのように消えていく。
狼は、…ゆっくりと口を閉じる。
そして目の前のアレクをじっと見つめる、……その瞳は何処か戸惑い、困惑…?
そんな風に見えるのは気のせいか…?
けれど、また口を大きく開き、
「…っ!」
ルーアが同時に駆け出し、間一髪の所でアレクに覆い被さった。
そしてアレクを守る為に大きな狼に睨みつけるように視線を送り、それに狼は目をまん丸くしたと思うと、
「グルルルル…っ」
「…っ」
今度は威嚇し始めた。
大きな狼に少しビクリとするものの、ルーアは絶対に引かない。
何としてでも彼を守らなければ、その意志は固かった。
狼は狼で怯えながらも威嚇しても尚引かない彼女に何を思ったのか、……突然前脚で彼女だけを振り払った。
「きゃっ…!」
振り払われた衝撃でルーアはそのまま腕や足に擦り傷を負い、その傷からじんわりと血が流れ出す…が、ルーアは痛みよりもアレクの方が大事だからか立ち上がり彼へまた駆け寄った。
けれど、狼はそれを許さない。
アレクのフードをガブッと咥えるとそのまま彼女やリオーレから距離を取るようにジャンプした。
ぐわんとアレクの体は揺れ動く。
「くそっ…!」
リオーレはアレクを取り戻すべく駆け出すものの、狼に刃が届く前に躱されまた距離を取られてしまう。
「「アレク!!/アレク様っ!!」」
「ーーー……っ!!」
先程の動きのせいなのか、それとも二人の声が届いたのかは分からない。
けれど全く目を覚さなかった彼は、ビクリと体を震わせやっと目を覚まし、
「な…っ、何でオレ、狼に咥えされてるのーーーっっ!?」
そう叫んだのは本当についさっきの事だ。
「…アレク様……」
「…今そんな悔いてもなんも始まらねぇぞ」
「…」
持っていた治癒の魔法石で彼女の擦り傷の治療をしながら、先程狼に連れ去られてしまったアレクを思うルーアは、これでもかと耳が下がっている。
はぁ…とリオーレは息を吐くと、また言った。
「その傷が治り次第、直ぐ狼が向かった方へ行く。
…恐らくだが、あの狼…あいつを傷つける気はねぇ気がするしよ」
「……それはどういう…」
「…ん?ただの勘だ、勘」
彼の言う勘は恐らくあれだけの状況でも冷静に周りを、そしてあの狼を見ていたからこそなのだろう。
確信が持てないのにも関わらず彼はそう言い切った。
例え勘だろうが、そういった時の彼の言葉はあまり外れた事がない、いや…見たことがないのだ。
「まぁ…と言っても、だ。
どういう理由で魔獣化しかけてたのがさっぱりなくなったのか知らねぇが、また同じ事が起こらないとも限らねぇんだ。
とにかく急いで追いかけるぞ!」
「………はいっ!」
そんな彼の言葉に少し気持ちが切り替えられた。
そうだ、今は一刻も早く彼の元に。
こうして二人は狼が突き進んでいったであろう森の奥へと駆け出していくのだった。
お久しぶりです!
ここまでお読みいただきありがとうございますm(_ _)m
先月中に出す予定が少々予定が変わって…昨日今日となってしまいました…(^_^;)本当にすみません…。
さて、今回は狼に連れ去らたアレクの話と、回想編をお出ししました!
小さな人々は何なのか。
ルーアたちのいう白うさぎの仮面の人は何なのか…。
…話が進むにつれてわかると思います(ꈍᴗꈍ)
次のお話は今月…出したいけど、たぶんまた間が空くと思います…気長に待ってもらえたら嬉しいです…(>﹏<;)(泣)
それではまた次回にて!




