第三十二話 村の虚実
「いやはや、全くもって嬉しい限りですなあ!まさか、我が名もなき村に神の尖兵どのいや『祝福者』といった方がよろしいですかな?がいらっしゃってくださるとは!此度は、村の総力を上げて行う『謝肉祭』それに是非とも招待させていただきたい!」
ザラクさんの家に入って、数分ほど休憩した後僕は村長の家に通された。そして、なぜだかとてつもなく丁重にもてなしてくれた。
(これ経験則だから言えるけど…大抵こういった村とかはろくなことがないんだよなぁ。どっかのバカ村とか然り古い因習に囚われてそうな感じもするし…)
そもそもの話が、世界で最も技術が発展している西方大陸において郊外とはいえこのような村が存在していること自体がイレギュラーだ。まあそんな僕の疑問もさておき、着々と『謝肉祭』の準備は進んでいき日も暮れた頃に『謝肉祭』は始まった。
中央には篝火が焚かれ、その周囲を囲うように色とりどりの料理が置かれ村人達がさらにその料理を囲うように座っている。久しくみなかった光景だ。
「いやはや、実にいい気分でございますなぁ!此度は村が襲われることもなく、客人も訪れしかもこれほどまでに美味い酒すら飲める!全く幸せとはこういったことを言うのでしょうな…」
「村長、あのことはどういたしますか?」
「黙っておれ、いかに『祝福者』どのといえどもあれには無理だ。だから黙っておれ。」
「承知いたしました。」
(嫌なもんだねー。完全に善意の上での行動だ。悪意があっての嘘とか犯行とかだったらとっ捕まえてのして話を聞いてそれでおしまい。でいいんだけどなー…あれ完全に僕が傷ついたりしないようにする上での行動だし、一切の悪意とかもないしで一番厄介な手合いなんだよな。)
そして、たくさんの料理を堪能しているとザラクさんが近寄ってきて僕に声をかけた。
「さて、『祝福者』殿どうでしょうか?我が村が誇る『謝肉祭』は?何もない村ですがね、この祭りの美しさは誇りとしているんですよ。ですが、少々残念ですね。本来でしたら、あの中央の篝火の元で村一番の美人が踊るのですが…」
「なぜ踊らないのですか?それに、今ふとして見回してみても明らかに女性の人数が少ない。男性の人数が50人くらいですが僕は今のところアフラさんや五歳の幼児や乳幼児くらいしかみていない。それなのに、あなたの家には女性ものの靴が何個もあった。アフラさんが着るには、大きすぎる服もね。」
「はぁ、流石は『クラムボン』を落とした方ですね。その慧眼には目を見張るものがあります。」
「知っていたんですか?」
「ええ、貴方が前領主が奪ったものを全て民に返すというスピーチをしたときに。あの時私もその場にいたのです。そして、時間がありません『祝福者』殿。貴殿を信頼できる方と信じて、この謝肉祭が終了してアフラが寝た後に家の後ろに来てください。そこで真実を教えいたします。」
それを発し終えた彼の表情はまるで、家族を守るために身を投げ打ってもいいというようなそんな気迫すら感じられる切羽詰まったような表情だった。
「承知しました。」
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