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第二十九話 ベロボーグ対U・B・M

ベロボーグ視点です。

「さて、そろそろ来る頃か。」


「とりあえず、魔力も少しばかり回復したことだし露払いは任せてもらおうかな。今回の主役は僕じゃなくて、ベロボーグだしね。任せたよ、ベロボーグ。」


「はい、承知いたしました。創造主様(マスター)私めにお任せを。」


そう言い終えると、私は前へと進んでいく。足取りが重い。モルガン様も、創造主様もどちらも素晴らしいお方だ。優しく、気高く、強く、そして誇り高い。そんな彼らに信じられた。ああなんと喜ばしきことだろうか。


「さて、始めましょうか。」


『 ギャオオオオン!』


ダンジョンの階層内に、一つの咆哮が響き渡る。それを発したるは、黒き姿に百の目を備えたまさに異形そのもの。その姿に、少しばかり緊迫感を覚える。だが、私は拳を握りしめる。そして、構えを取る。すると私の眼前に一つのウィンドウが出現する。


『深度2 『無窮魔眼の百目鬼(バロール)』が出現しました!』


「深度、2ですか。到底、そのようには思えませんけどね…」


「……」


私のその言葉に、無窮魔眼の百目鬼は無言で答える。おそらくだが、言語能力がないのだろう。だが、その立ち住まいからは圧倒的なまでの殺意が感じられる。


「いざ、参ります。」


その一言で、私は地面を踏み込む。そして無窮魔眼の百目鬼へと向かって拳をぶつける。だが、無窮魔眼の百目鬼は何も動かない。ただただ、後ろに下がるのみ。しかも、確かに当てたと思った。思ったはずなのに、感触が圧倒的に少なすぎる。おそらく、衝撃と同時に後ろに下がったのだろう。


「上手いですね…これでも、単純な体術だけで勝ちたいんですけどね…」


『グアアアアア!』


その一言で、無窮魔眼の百目鬼の身体中に張り巡らされている百の目のうち左肩についている目が開く。その一瞬で、私の右腕が機能不全を引き起こし動かなくなる。次に右手の掌に付いている目が開く。すると、平衡感覚がおかしくなる。


(これは、まずい!早々に体術でケリをつけたかったですがこれは不可能ですね、平衡感覚が完全にバグっていらっしゃいます。しかも右へ行こうとすると前へ行く。そう言った基準すらも、数秒ごとに変わっている!)


「ならば、取るべき手段は一つですね。スキル解放。制限撤廃、難敵と認定。『我、明日の黎明へと向かわん。我、終わりなき永遠へと至らん。私は奪い、私は与え私は望む。我が、誇りたらんことを。』」


私は、奥の手とも言える方法を発動する。それは、私にとって奥の手とも言えるもの。創造主様(マスター)達にとっての『奥義』のようなもの。技術を超え、能力を超え『権能』へと至る。その第一歩のようなもの。


「『汝は地から生まれ落ちたもの、故に汝は陽光とともに最盛を迎える』発動。」


その一言で、私は光に包まれる。『汝は地から生まれ落ちたもの、故に汝は陽光とともに最盛を迎える』は『地下冥界・第二層葬送シバルバーフーネラリエス』が内包する莫大なエネルギー。それを私の肉体へと注ぎ込む。それによって、私はそのエネルギーを自由に扱える。


『グオオオン!?』


「おや、焦っていますね。あなたもまた、無敵ではないのですか?まあ、それも当然でしょうね。随分と、姿も変わっておりますから。」


『汝は地から生まれ落ちた者、、故に汝は陽光とともに最盛を迎える』には私の体にもいくつか影響を与える。最も顕著なのは、髪色と背後にある者だろう。本来銀色の髪の色が、金色へと変化しているのと背後に日輪のようなワフが出現すること。その二つだろう。


「さて、第二ラウンドといったところですかね。」


「ギャオオオン!」


「しつこいですよ、それとうるさい。」



無窮魔眼の百目鬼は、焦ったかのように腹についている三十の目を開き私へと攻撃した。それにより、私の体は燃えて凍って数々の異常に満たされる。だが、そのどれもが私に通じはしない。それが効果をもたらすよりも、私の体が治る速度の方が早いのだから。

そして、私は手をあげる。その瞬間、エネルギーで形成された槍が頭上に現れる。そして、私は手を振り下ろす。その瞬間、槍たちはそこにはなくなり、向かって行くという過程はなくただ発射されたという事実と、それが無窮魔眼の百目鬼に突き刺さったという事実。ただそれだけが、そこにはあった。


「これでも、まだ倒れませんか。厄介ですね。ですが、ただそれだけです。ただ倒れない。ならば、何十回とて繰り返すただそれだけのこと!」


そして、私は再度手を振り上げ無窮魔眼の百目鬼に向かって振り下ろそうとする。だが、その一瞬を突かれ無窮魔眼の百目鬼の両目が開く。そして、何も起きない。いや、何かが起きている。周りにはモルガン様も創造主様(マスター)も誰もいない。アンデッド達すらも。私は、急いでダンジョンからクラムボンへと戻るための水晶玉を叩き割った。



そして、そこにあったのは地獄であった。以前、創造主様(マスター)に話していただいた旧約聖書その中の、『創世記』に登場するとされるソドムの街。それと見紛うかのような、鮮烈な炎に包まれた場所であった。


「これは…!?」


「助けて、助けて!」


「お母さん、お母さん!どこに行ったの!?怖いよ!」


「神様、私たちは一体何をしたというのですか!ただ、平和に暮らしていただけだというのに!」


市民達の慟哭が聞こえてくる、市民達の嘆きが聞こえてくる。市民達の怒りが聞こえてくる。ふと空を見上げる。そこには、一人の星がいた。ただただ街を守るためにために刃を、『黒天鍵(アーク)』を振るわんとする星があった。すぐにわかった。創造主様(マスター)だ。相対するのは、黄金の鱗に体を包んだ一頭の竜。それと相対する創造主様(マスター)の表情は、これまで見てきた中で最も怖くそして怒っているように感じられた。


「何がっ!?」


言葉を発しようとした、その瞬間視界が暗転した。そして、目が覚めると目の前にはモルガン様と焦った表情の創造主様(マスター)がいた。


「ベロボーグ、ベロボーグ!無事かい!?」


「落ち着け、ロムルス。此奴は貴様の分け身のような者であろうが。貴様が五体満足ならば、大事はないということだろう。それで、ベロボーグ貴様何を見た?」


「黄金の竜と、燃えているクラムボンを。」


「…そうか。」


そういって、モルガン様は考えるかのような表情をして黙ってしまった。そして私は創造主様(マスター)に質問をする。


「あの、先ほど戦っていた『無窮魔眼の百目鬼(バロール)』はどうなりましたか?」


「ベロボーグが気絶した瞬間倒れて死んでしまったよ。おそらく、ベロボーグの一撃でもう瀕死の状態だったんだろうね。」


「…なるほど、ところで先ほどから思ったのですがモルガン様は何を考えていらっしゃるのですか?」


「いや、少し可能性の話をだ。嫌なことが思い浮かんでしまったから、聞いてもらえるか?二人とも。」


その言葉を言ったモルガン様の表情は、真剣そのものだった。

少し文字数が多くなってしまいましたね…まあ、無窮魔眼の百目鬼は名前の通り大量に魔眼持っているって感じでしたね。(まあそれ以外にも能力あるけども)

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