閑話 女帝の夢
マチルダは、自らの右腕にエネルギーを貯めながら抜刀の構えに入ったソロモンを見ながら身震いする。
(驚いた、お祖父ちゃんから聞いてはいた。聞いてはいたけども、まさかこんなにも殺気が強いだなんて、まだ刀を抜いてすらいないのにこんなにも強烈な覇気があるなんて。これがおじいちゃんが言っていた、最強か。)
そんなことを考えながら、マチルダはかつて自らの祖父が寝床にてよく話してくれた一人の、孤独な英雄の物語についての会話を思い出す。
「あの人は、強かった。一人でたくさんの人々を斬り殺すこともできた。だが殺さなかった。一人で数多の獣を狩った。そして何よりもあの人は孤独だった。」
「どうしてその人は孤独だったの?」
「私たち人間は、弱い生き物だ。私たち人間は、自分よりも強い相手を本能的に恐れる。それが故に、あの人を孤独にした。あの人を迫害した。それがあの人が孤独になった理由の一つだ。」
その言葉を言いながら、祖父は、カルテリス・オールドラントは悲しげな顔をしながらもマチルダにいう。
「だが、あの人は誰よりも優しかった。本来であれば、あの人は世界を支配することを可能なほどの頭脳と知識そして力と技術があった。だが、あの人は決して不殺を続けた。本来であれば、人に幻滅してしまうこともあろう。」
「だけどその人はしなかった。違う?」
「いいや、あっているとも。だがあの人は、人を見続けることを決めた。もしも、人が外道に落ちた場合もしも、人がそのものを捕まえると。私にそう言った。そして私は試練を挑んだ。」
「なんで?試練を挑む必要なんてあったの?」
「あの人は、教え子や信頼するに値すると感じた者のみに契約していることがある。それは、自らの試練に打ち勝った場合なんでも一つ言う事をを聞くという契約だ。」
「それで、お祖父ちゃんはその人に挑んだ。」
「ああ、自由に生きてほしいという願いを頼んでな。そして敗北した。あの時以上に、自らの力のなさを痛感したことはない。」
そして、空を見上げてため息をついていった。
「今の私があるのは、あの人のおかげだ。本来、スラムで野垂れ死ぬような孤児であった私はあの人のおかげでこうして孫と話せている。ああ、だが願うことならば、願うことならばあの人に自由を渡したい。あの人は誰よりも優しいお方なのだから。」
気づいたら、言葉が出ていた。
「もしも、私がその人に出会ったのなら私はその人に試練を挑むよ。そして必ず勝利する。そしてその人に、自由をあげたい。」
「……正気か?マチルダ。君の人生は君のものだ。そしてこの願いは、私のエゴだ。君の未来を、君の自由を奪うことになってしまうのだぞ。わかっているのか。」
「うん、わかっているよ。それがその人は本当は望んでいないだろうということも。だけど、私はそれを放置はできない。英雄は、幸せになるべきなんだから。」
その一言に、お祖父ちゃんはため息をつきながらもいう。
「はあ、どうしてこうなってしまったんだか。まあいいだろう。あの人と戦うのならば、いくつか覚えておきなさい。」
それから、お祖父ちゃんは私にたくさんのことを教えてくれた。
(ホロウハートを打つ際には、たくさんのための時間が必要になるだっけ。本当なら、自分の力で勝ちたかったけど撃たれたら、必ず負けるしね。使うよ、『白紙の物語』)
そうして、私は『変世機』を発動した。




