閑話 少女が思い出すのは、かつての暖かき日々と一夜の悲しみ
私が、あの人に拾われてから数ヶ月が経過した頃あの時はまだ私も幼かったからかあまりあの人の事を考えずに言葉を言うことが多かった。
「あの、ソロモンさん。何で私を拾ってくださったんですか?」
「はあ、イシス僕は何度も言っていると思うんだけどね。『パパ』やら『お父さんと』かどう言った呼び方でも良いから他人行儀な呼び方はやめてって言ってるんだと思うんだけど。」
「はいわかりました。以後気をつけますので。」
「全然わかってない人のそれだよね。まあ良いけど。」
そう普段通りため息をつきながら、彼は私の方へ自嘲気味な顔で笑いかけいった。
「べつに理由なんてものはないよ。うん、ただかわいそうだったそれだけだ。」
「そう、ですか。わかりました。」
私は知っている。あの日までの10年間、私はあの人と一緒に暮らした。誰よりも優しく、そして気高いあの人と。そして多くのことを知った。
あの人は決して完璧ではないこと。和食が好きなこと。重度のコーヒー党なこと。甘いものもまた好きなこと。
そして、優しい嘘をつくときに必ず自らを嘲るように笑うこと。
私に『イシス』と言う名前を渡した時に名前の所以を問うた時、『特に理由なんてものはないよ』と自嘲気味に笑ったことも。
だけど言えない。言えば彼のその覚悟を否定してしまう。彼だって、好きで行っているわけじゃない、んだと思う…
そんな暖かい日々を思い出しながらも、一番印象に残っているのはやはりあの日だった。別れを告げられた、あの日だった。
「イシス、もうすぐ家を出ろ。」
「は?」
あの人からふとした瞬間発されたその一言は、私を驚かせるには十分すぎた。十分すぎたが故に、手に持って居た皿を落としてしまったくらいだ。
「ど、どういう訳ですか!?何で私が家を出なくてはいけないんですか!」
「君ももうすぐ二十だろうそうしたら成人だ。もっと世界を知るといい。ああ、安心したまえ。住まいならば僕の友人が理事長を務めている学園に行けばいい。すでに彼とは話を通してあるからね。」
「本当に、行ってしまって良いんですか?」
「くどい。早く行くといい。」
そういったあの人の表情は今までに見たことのないくらいに怖くって、何かに怯え怒っているかのような表情だったということを覚えている。
どうして、そんな表情をしているのか。どうして、私を追い出すのか。成人する前の私には、到底口に出せなかった。『聞いてくれるな。』そんな目をして居たから。
そうして私はたくさん努力を重ねた。研究職にもついた。博士号ももらった。あの人の誇りになれるように。そうなれば、あの人が連絡してくれることを信じて。だけども来なかった。30年待ち続けた。待って待って待って待って待ち続けた。だけど来なかった。
だからこそ、私は勝ち抜く。あの人に、なぜあの選択をしたのか私はあの人の誇りになれているのか。それを問うために。
ちなみに、イシスちゃんがロムルスについて知ったのは剣聖ちゃんと同ルート。まあ、一応次ソロモン視点です。
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