第三十八話 幻想行進曲
『なるほどな、こうなるのか。ぶっつけ本番でやってみたが、まさか成功するとはな。』
【何ですか、あなたは今何をした?何を使った?】
『簡単なことだ、術を使った。奥の手であり、開発段階のな。』
【なるほど、ならばその術は失敗のようですね。吾輩方に傷をつけることさえ、できていないのですから。】
なるほど、ノースたちのとっては何も起きていないと言えるのか。それは実に興味深い。外見に与える影響などはベロボーグのとは異なり存在していないようだからな。
『それは当然というものだ。我が使用したのは序曲。第二楽章から、初めて他者へと影響を及ぼせる。序曲の能力は、その身で味わうといい。』
【何だ、何をするつもりだ!?】
『ほう、漸く生物らしい感情を見せたものだな。』
【ッ舐めないでいただきたい!】
我は、喋りながら歩み続ける。奥へ奥へと向かって進み続ける。ノースたちが攻撃をしてくるが、その全てを魔術で弾き返す。ノースたち全てを、槍による横薙ぎでねじ伏せる。そして、さらに進み続ける。
【くそッ!ならば、取れる手段はただ一つ!圧殺だ!窒息死だ!息ができずに死んでいく苦しみを、その全てを味わうがいい!】
『甘いな、魔術作用範囲限定。出力限定上昇。『空間固定』』
我は、圧殺をしようとするノースたちの動きを魔力で空間を圧縮することにより動きを止める魔術『空間固定』で静止する。それによって、飛びかかろうとしてきたノースたちの動きは空中で静止した。
【愚か!『空間固定』は魔術の中でもトップクラスに魔力を消費する!このままでは吾輩方が必ず勝て——は?なぜ?なぜ、魔力が減っていない!】
『当然だろう、第一楽章『幻想行進曲』は序曲だ。第二、第三楽章につなぐための前奏。故に、その能力の一切は全て単体での攻撃性能を持たない。ただただ、魔術の補助をするのみ。そして、その能力は発動者が進めば進むほどその歩んできた道を全て自らの『世界』と定めその『世界』に触れている限り我は魔力を消費することなく魔術を行使できる。通常の倍近い魔力効率でな。』
【だとしたら、あなたは過ちを犯した!吾輩方には、これ以上勝てる理由もない!わざわざ能力を明かした、それはあなたの最大の失敗だ!】
ほう、随分と囀るものだ。依然として、自分がただカゴの中で死を待つのみのモルモットと何ら変わらんということさえ理解していないとは。まさしく、愚かとしか言いようがないな。そして、愚かだ。
『貴様に一つ教えておいてやろう、我がなぜこれほどまで親切に『幻想行進曲』について教えてやったのかわかるか?我が、必ずここで貴様を殺す。その意思をただ表した。それだけに過ぎぬわ。』
【舐めるな!もうすぐ、拘束時間も途切れる!その時が、あなたの最後だ!】
『ああ、そして言い忘れていた。『世界』は儀式魔術用の祭壇の役割すらも叶えてくれるのだよ。これが何を表しているのか、わかるな?』
そう言い終えると、我は詠唱を始める。
「『それは、古にありし災禍の炎。されど、ここに現れし時すなわち落陽の時なり。ならばその天火をもって、この空を茜に染めよ』貴様は先ほど、我らはダンジョンそのものだと言ったな?ならばその本体とも取れるダンジョンをぶち破れば、貴様らは存在できないのではないか。その仮説は、どうやらその焦った表情を見るに正解しているようだな。』
【ふ、ふざけるな!こんな終わり方があってなるものか!我らは群体我らは個。故に、人間たちに敗れるなど———】
『くどい、焼き尽くせ。【炎系統儀式魔術】『焼尽天火』』
その瞬間、半径一キロメートルを黒き炎が包み込んだ。
ヤバさでランキング付けるとするならまごうことなきモルガンがトップなんですよね…なんせ、やってることあれですからね?単独で、『変世機』の能力部分的に再現してるようなもんですから…そりゃ誰だってビビるしトラウマになるわなー。
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