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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
《Thousand Schutzstaffel(サウザンド・シュッツシュタッフェル)》

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親衛隊のお知らせ

 「ねえねえ、宗ちゃん」

 「ん?」


 休日の土曜日の朝。

 休日は基本的に8時の朝食と決めている。

 今日の冴姫は黒地に巨大なバズーカ砲を持った死神のTシャツと白い綿のショートパンツだ。

 死神は鎌じゃねぇの?

 最初に冴姫の分を渡して、冴姫がトーストにバターを塗りながら言った。


 「なんかさー、宗ちゃんのファンクラブが出来るっぽい」

 「エェッ!」


 トーストを思わず自分のトーストを引っ繰り返し、テーブルにたっぷりバターが貼り付いた。

 慌てて布巾を持って来て拭う。

 冴姫は何事も無かったかのように自分のトーストの準備に夢中で、バターを塗ったトーストにイチゴジャムを塗っている。

 俺のために1ミリも動こうとはしねぇ。

 俺がテーブルを拭きながら冴姫を睨んでいると、やっと話し始めた。


 「ほら、宗ちゃんパラオでスッゴイこと言ったじゃん」

 「あれは何でもないよ! 俺、ただ質問しただけだよー!」

 「でもそうじゃ無かったじゃん。伊刈社長が宗ちゃんの言葉で動いて、和田商事がパラオの海底鉱床開発のトップになったじゃん」

 「それはそうじゃん」


 俺に関してはその通りではないが、和田商事がそうなったのは確かだが。


 「だから宗ちゃんの評価は爆上がりで、全社でも超有名になったじゃん」

 「ちょっと嫌じゃん」

 「女性社員がみんな宗ちゃんのファンになったんじゃん」

 「それはちょっとだけ嬉しいじゃん」

 「ガァァァー! 宗ちゃんはわたしのもんじゃん!」

 「それはそうじゃん!」

 「真似すんなし!」

 「いや、ただのノリだろう!」


 冴姫がトーストを口に入れながら豪快に咀嚼していく。

 ちょっと幸せな顔になる。

 俺も嬉しい。


 「いや、でも困るよ、ファンクラブなんてさ」

 「でもちょっと嬉しそうだよ?」

 「いやいや、アハハハハハ」

 「もーう」


 冴姫は2枚目のトーストにまたバターを塗り、今度はブルーベリーのジャムを塗り始めた。

 いつものパターンだ。


 「もう名前も決まってんだって」

 「名前?」

 「うん、《Thousand Schutzstaffelサウザンド・シュッツシュタッフェル》、まあ、英語とドイツ語混じってるね。千の親衛隊って意味かな」

 「なんだ?」

 「《Thouzand》、ソウザンドって読みたいんだって。宗ちゃんのって意味と、千、つまり一杯ってことらしいよ?」

 「一杯はいないだろ」


 パラオ旅行以来、俺に親し気に話してくれるようになった先輩たちはいるが。

 飲み会なんかも以前より誘われるようになった。

 全然話したこともない人たちが、俺に笑顔で話してくれる。

 俺は第一貿易部の先輩から、社内でも人脈を作って行けと言われているし、会社の人たちは大好きなのでなるべく断らないで飲み会にも参加している。


 「《Schutzstaffel》は親衛隊って言ったらアレだからね」

 「ナチスの?」

 「そうそう! だから一杯で宗ちゃんを守るってことかな?」

 「なんだそりゃ」


 よく分からん。

 大体本社には130名くらいしかいないのだ。

 半分以上は男性だし。

 冴姫がトーストの追加を焼き始めた。

 うちのトーストオーブンは一度に4枚焼ける。

 トーストを食べる時はテーブルに置いて、冴姫が必ず4枚食べる。

 最初にバターとイチゴジャム、2枚目はバターとブルーベリージャム、3枚目と4枚目は気分でチーズを乗せたりまたジャムだったりする。

 その間に目玉焼きとウィンナーを食べる。


 「なんか面白くねー」

 「なんでよ?」

 「宗ちゃんはあたしんじゃん」

 「エヘヘヘヘヘ」

 「きも!」

 「おい!」


 でも親衛隊かー。

 確かにちょっとウキウキする。

 冴姫が俺の笑顔をコワイ顔をして見ている。


 「宗ちゃん、まじウザい」

 「エヘヘヘヘヘ」


 これまであんまし友達のいなかった俺に親衛隊だって!

 でもなー、嬉しいけど俺って全然普通で大したことないからなー。

 そこは困ったー。

 冴姫がコワイ顔でスープのお替りだと言い、急いで注いだ。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 翌週の7月中旬の月曜日。

 出社すると2階の掲示板に物凄いものを見た。



 《神楽坂宗三ファンクラブ「Thousand Schutzstaffel(ソウザンド・シュッツシュタッフェル:宗三親衛隊)」第一期会員募集中! 入会希望者は総務部・竹ノ塚までご連絡を 内線003 社内Line……》



 「なんだこりゃ……」


 ここの掲示板は社内の連絡事項が掲示されており、2階の社員食堂に向かう途中にある。

 売店や自動販売機のコーナーもこの階にあるため、多くの社員が朝に立ち寄る。

 正式な会社からの連絡から、サークル活動の募集、飲み会や旅行、ペットを譲りますなどの個人的な連絡まで多岐に渡る。

 掲示板の前では人が集まっており、俺の姿を見てみんなが騒ぎ出した。

 ちょっとした拍手が湧いて、俺は頭を提げながら早々にその場を立ち去った。

 そのせいで毎日買ってる小岩井のイチゴミルクが買えなかった。

 会社公認のファンクラブなんて聞いてねぇ!

 第一貿易部の部屋に入ると先輩方みんなが集まって来た。


 「おい神楽坂! お前、スゴイことになってるぞ、もう見たか?」

 「なんですかあれはぁ!」

 「会社で正式に発足したものらしいよ。お前、やったなあ!」

 「何もやってませんよ! あんなの困ります!」


 美濃坂部長に呼ばれた。


 「神楽坂、榊常務がお呼びだ。すぐに行け」

 「はい?」

 「お前のファンクラブに関する話だろう。急げ」

 「は、はい!」


 なんなんだぁ!

 とにかく榊常務の部屋へ急いだ。

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