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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
パラオの絶対守護神

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圧勝の後で

 那智さんのお陰で米第七艦隊の強襲は呆気なく終結した。

 那智さんが《機神》を呼び出してから2分という、とんでもない短時間で決した。

 後から自衛隊の潜水チームによって海底で那智さんに圧搾された原潜3隻の破片がみつかり、ミサイル発射口が開いていたことから本当に「トマホーク」の発射準備段階だったことが分った。

 原子力潜水艦からの核攻撃の寸前だったことを知り、我々は慌てた。

 まさか米軍が核ミサイルを撃つとまでは想定していなかったのだ。

 今の世界で核兵器を使うことは本当にタブーだ。

 核への抑止力を目指して、各国で《能力者》を生み出したが、それでも状況によっては今も核兵器は有効だからだ。

 核兵器を使用すれば、同じ核兵器が応酬されても不思議はない。

 そうなれば互いに多大な被害を被ることになる。

 恐らくは核兵器を所有していない日本だからこその暴挙だったのだが、この状況で核兵器を使えばアメリカは言い訳も出来ない。

 まあ、核兵器の使用はパラオでの日本人がいなくなれば曖昧に出来るとでも考えていたのかもしれない。

 大国の傲慢な論理だ。

 そして那智さんは最初に強力なEMP攻撃により第七艦隊の一切の通信手段を封じていた。

 だから第七艦隊が壊滅したことは米軍はしばらく察知出来なかっただろう。

 4時間後にグアムの米軍基地から「ドラゴン・レディ」が飛んで来たのでもう把握してはいるようだが、その段階で日本が正式にアメリカの無謀な強襲と核兵器の使用、そして《ヴァーミリオン》の派兵までを《賢人会議》に報告した。

 証拠ももちろん添えてだ。

 アメリカ大統領にも同じものを送り、すぐにアメリカは大混乱した。

 那智さんはしばらくパラオの防衛のために残って下さる。


 ある日、那智さんは冴姫さんと特殊な通信で話されていたようだ。

 我々にもその内容を教えて下さった。


 「先日の米第七艦隊のことですが、どうやら日本に《ヴァーミリオン》の《聖女》が来ていたようです」

 「え、あの《聖女》がですか!」

 

 《聖女》は名前だけは伝わっており、《ヴァーミリオン》の中でも最高幹部の一人と目されている。

 もちろん能力は不明だが、相当な実力者であると考えられていた。

 《ヴァーミリオン》の幹部クラスは、一個師団を壊滅させ、核ミサイルですら凌ぐと思われる。

 まさかその一人である《聖女》が正体を明かしていたとは。


 「そうです。《聖女》は日本にレアメタルとレアアースの供給を交渉に来ていたらしく、宗三さんのいらっしゃる「和田商事」に接触して来ました」

 「それはおかしな話ですね。その一方で強襲作戦を仕掛けて来たということなのですか?」

 「ええ。でも《聖女》も強襲作戦は知らなかったようです。アメリカの一部の人間が独断で強行したことが、今では分かっています。大統領も含めてのものですが、これから全員が粛清されると聞きました」

 「そうですか、まさかそういうことだったとは」


 第七艦隊の出撃は監視衛星で掴んではいたが、その裏側の事情などは分かっていなかった。

 航路を解析することで、このパラオに向かっていることは分かっていたが。


 「それでね、凄いんですよ!」

 「え、なんですか?」

 「宗三さんが《聖女》を舎弟にしたんですって! ね、流石宗三さんでしょ!」

 「はい、それはもちろん、あの、どういうことでしょうか?」


 話が繋がらなかった。

 あの《聖女》をなんだって?


 「おいおい、分かんねぇのかぁ? あ、すいません、説明しますね」

 「は、はい、お願いします!」


 また那智さんの話し方が一瞬恐ろしいものになった。

 時々、興奮されると出て来ることが、那智さんの御傍にいて分かっていたが。


 「《聖女》はね、宗三さんに興味を持ったようなんです。宗三さんを指名して銀座の案内を頼んだり。それで《聖女》も知らないあの強襲作戦があって、《聖女》もさぞ慌てたことと思います」

 「そうですよね、自分が日本と交渉するつもりだったのでしょうから」


 《聖女》も自分が知らない間に無茶な戦闘を開かれたのだ。

 堪ったものではないだろう。


 「《聖女》も大分慌てたでしょうが、それが宗三さんが食事に招いたそうですよ!」

 「え、宗三さんがですか?」

 「はい! しかもですよ、ここが凄いんです!」

 「え、なんですか!」


 相変わらず話は全く見えなかったが、那智さんが興奮しているので黙っていた。


 「宗三さんはですね、なんと《虎部隊》の女性と親しくなっていたんです」

 「《虎部隊》!」


 中国の《能力者》集団である《虎部隊》は、神出鬼没でどこの国も正体も能力も掴んではいなかった。

 それを宗三さんは直接会ったばかりか親しくなったというのか!


 「《聖女》を誘った食事会に《虎部隊》の人も同席され、宗三さんは二人共舎弟にしたんですよ! ね、凄いでしょ!」

 「それはもう!」


 信じられない!

 どうしてそんな展開になったのか。


 「ね! やっぱり宗三さんは最高です! 《聖女》は宗三さんへの服従を誓い、帰国しました。恐らくこれからアメリカは内部粛清で大変なことになりますよ。まあ、僕は興味ないですが、宗三さんの舎弟の《聖女》にはせいぜい頑張って欲しいものですね」

 「まったくです、いやぁ、驚きました!」

 「はい!」


 とんでもないお話だった。

 だが、那智さんが本当に嬉しそうだったので、私はただ笑顔で相槌を打っていた。

 この方は本当に宗三さんのことが大好きなのだ。

 食糧などの調達に行っていた四家が戻り、この話を伝えるとやはり驚愕していた。


 「那智さん、今日はお祝いをいたしましょう! 宗三さんの快挙を祝って!」

 「はい、それはいいですね!」

 「風祭、料理を宜しく! 私はもう一度いろいろ調達して来るわ!」

 「あ、ああ、分かった」


 四家が嬉しそうにまた快速艇に乗って自衛隊のPXのあるコロール島へ向かった。

 その晩は私が腕を振るい、豪勢な海鮮料理のコースを那智さんに楽しんで頂いた。

 今は自衛隊の人間が運んで来る食糧と隊員の中から技術のある人間が近海で食べられる魚などを調達してくれている。

 那智さんには優先的に良い食材を回してもらっているが、何しろ「戦時中」なわけで日本にいるようなわけには行かない。

 だが、ある日「特戦群」の副官の方から特別な食材が送られるようになった。

 何でも最初の手紙では、日本にいらっしゃる宗三さんが那智さんや我々のことを御心配なさったということだった。


 〈パラオでは十分ではあれど限られた状況でみなさんが食事をなさっていると思います。先日那智君が素晴らしい働きをしたと知りました。せめて皆さんも美味しいものを召し上がってもらいたいと思いました〉


 手紙には連城隊長が宗三さんに手料理を御馳走になったことが書かれていた。

 そして隊長が食通であることを宗三さんが知り、また特戦群の副官の方も料理が得意で以前に那智さんも先日鍋料理をご馳走になったことなども書かれていた。

 那智さんがおっしゃっていた宗三さんとの出会いもその席であったことも那智さんからお聞きした。

 それからパラオの駐屯軍の食事事情は大きく変わり、那智さんへは更に様々なものが届けられるようになった。

 そのお礼を連城隊長を通して副官の方へ手紙で御伝えした。

 お名前は教えて頂けなかったが、精一杯のお礼を記した。




 それから、時々よく分からない食材が入って来ることになった。

 顔のあるキノコや緑色のよく分からないミミズのようなもの。

 調理法が添えられており、不気味だったがその通りに作るととんでもなく美味しかった。

 だが一度那智さんが調理前のものをご覧になり、悲鳴をあげられた。


 「宗三さんが我々の食事を心配され、特戦群副官の方が送って下さるようになったんですよ」

 「そ、そうですか……」


 それを聞くと那智さんも覚悟を決めて召し上がった。

 我々も頂いたが、那智さんが絶対に不味いとか悪口は言うなとおっしゃった。

 もちろん珍しいだけで、とても美味しい。

 那智さんも引き攣った笑顔で口にしていた。

 しかし、私も世界中の珍しい料理を知っているつもりだったが、アレらは何なのだろうか。

 やはり料理の世界は深遠だ。 

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