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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
パラオの絶対守護神

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聖と俗

 那智さんはまだ身体も成長期で年齢的には明らかに子供だったが、その知性と思考は確実に大人を凌駕していた。

 他の《能力者》のことは知らないが、やはり通常の人間とは違うのだと感じた。

 そして那智さんは物静かで優しい人柄であり、私も四家も那智さんと一緒にいるに当たって何も困惑することは無かった。

 私たちは基本的な哨戒業務や日常の鍛錬の他には特に何もすることが無く、那智さんのために料理を作り、あとは那智さんにお借りした本を読んで過ごした。

 時々三人で島を散歩した。

 暑い時期なので夜間が多かった。

 本当にお世話をするのに那智さんは何の問題もなく、楽しく時間が過ぎ去った。


 那智さんがいらして二週間後にアメリカの第七艦隊が来た。

 事前に日本政府から正式に海域への接近を拒んでいたのだが、強硬に超えて来たのだ。

 もうその意図は明白で、強大な軍事力でパラオの日本人を排除しようとしているのだろう。

 もちろん通常の戦闘になった場合、第七艦隊が有する航空兵器やミサイル兵器の膨大な火力から、この小さな島が耐え切れるはずもない。

 しかも、今回はこちらに《能力者》がいる可能性を加味して《ヴァーミリオン》を連れて来ているだろう。

 おそらくは先日銀座で強襲した規模ではない。

 それなりの人数を投入し、また戦闘力の高い幹部クラスの《ヴァーミリオン》がいてもおかしくはない。

 ここで日本人を一掃すれば、アメリカがパラオを独占する目はまだあるのだ。

 《賢人会議》という調停機関はあれど、所詮は大国同士の集まりだ。

 民主主義的なことは表面だけで、結局世界は強い者が勝つ。

 パラオを日本が守り切れなければ、そこまでなのだ。

 だからこそ、神楽坂群長は我々《裏鬼》と共に、那智さんをパラオへ派遣したのだ。

 《裏鬼》はどのような強襲部隊でも対応出来るが、大規模な航空機やミサイル攻撃には厳しい。

 ある程度の対空兵器は持ち込んでいるが、第七艦隊が本気で襲って来れば危うい。

 それに狭い島の中では隠れる場所も無いのだ。

 まして《ヴァーミリオン》の中でも上位クラスの連中が来れば、相手にならない可能性もある。

 これまで《ヴァーミリオン》の兵士で傑出した戦闘力を持つ人間が2度確認されている。

 一度はたった一人で中国の最新鋭空母を蹂躙し撃沈させた。

 護衛していたミサイル艦や駆逐艦の群と共にだ。

 日本の監視衛星が捉えた映像では、2000メートル以上も伸びるビームソードと超高速で動き回る「何か」で人間はもちろん戦艦の船体ごと切り裂いて行ったのだ。

 激しく火花を散らしながら鋼鉄の戦艦が真っ二つに斬られて行く映像に我々は驚愕した。


 パラオは島そのものではなく、海底鉱床にこそ価値が出て来た。

 だからもしかすると核兵器の使用すらあり得る。

 島を幾つ吹っ飛ばしても支障は無いのだ。

 そして突出した《能力者》に対しては《裏鬼》の力が及ばない場合もあるだろう。


 那智さんの能力は知らされてはいなかったが、私と四家は観測しても良いという許可を得ていた。

 もちろん肉眼だけで、映像は残せない。

 このパラオに現在いるのは《裏鬼》の一部隊と自衛隊の復興部隊、そして民間の建築業者や医療従事者たちだ。

 那智さんの戦闘を見て良いのはそのうちの私と四家の二名だけ。

 連城大佐は現在日本へ帰っている。

 宗三さん関連での仕事らしい。

 だから私たち以外の他の人間には見えないように戦闘が成されるということだった。

 第七艦隊が敵となるので、海上戦になるはずだが、それがどのように展開するのかは分からない。

 もちろん那智さんもそれは分かっているので、全く問題は無いのだろう。


 監視衛星が第七艦隊の接近を察知し、那智さんにもお知らせした。

 しかし那智さんは既に独自の索敵で分かっていたようだ。

 ソファから立ち上がり、私と四家に言った。


 「あいつらぁ、警告を無視して来やがったようだなぁ」

 「は、はい」


 あの温厚な那智さんの言葉遣いが変わっていた。

 顔つきも随分と凶悪なものになっていた。

 まるで別な人間に見える。


 「再三通信で警告しましたが無視されています。先ほど自衛隊の高速艇が出ました。即時退去するように通達します」

 「無駄だよぅ。すぐ引き返した方がいいぜぇ」

 「はい?」


 その時四家が通信を受けて私と那智さんに報告した。


 「「ジョージ・ワシントン(空母)」から機関砲で攻撃されました。高速艇は大破!」

 「仕方ねぇ。じゃあ行くぜぇ!」

 「那智さん!」


 那智さんはそれ以上何も聞かずに外へ出た。

 私と四家も急いで追い、巨大な空間の歪みを見た。


 「これは!」


 那智さんの能力なのはすぐに分かった。

 空間が歪み、そこから巨大な何かが現われた。

 なんだ、これは!


 全長20キロメートル、幅4キロメートルの巨大な構造物。

 全体に流線形であり、大まかに言えば突起で覆われた葉巻のような外観だった。

 漆黒の表面で、どういう推進機関か分からないが空中に浮かんでいる。


 「那智さん、行かれるんですね!」

 「そうだぁ。宗三さんが手に入れたここに近づくアホウ共には思い知らせろって言われてっからなぁ!」

 「じゃあ、第七艦隊を!」

 「もちろんそうだぁ。でもあいつらは半分囮だぁ。原潜が近海に来てやがるよぅ。まずはそいつらをぶっ潰すぜぇ」

 「なんですって!」


 第七艦隊はレーダーでも把握していたが、原子力潜水艦まで来ていたか。

 周辺は自衛隊も潜水艦が周回しているが、ある程度近づかなければソナーには反応しない。

 那智さんはそれを索敵していたのか!


 「じゃあなぁ、ちょっくらぶっちめてくるぜぇ」

 「はい! ご武運を!」

 「必要ねぇよぅ! あんな連中じゃあ相手にならねぇぜぇ」

 「はっ!」


 私と四家は敬礼して見送った。

 那智さんの姿が薄れ、すぐにいなくなった。

 あの巨大戦艦に移動したのだろうか。

 私はすぐにコロール島にいる《裏鬼》に第七艦隊が攻撃を受けると伝えた。

 あちらでも出来る限りの戦況を間接的に観測するだろうが、那智さんの巨大戦艦は全く感知していなかった。

 レーダーに映らない何らかの構造があるのだろう。

 あれほどの巨体であるにも関わらずだ。

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