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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
パラオの絶対守護神

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風祭と四家

 「那智さん、ご苦労様です! 自分は《裏鬼》の風祭です」

 「お迎えありがとうございます。那智です」


 《裏鬼》の方と会うのは初めてではないが、風祭さんとは初対面だ。

 《裏鬼》の皆さんはみんな身体が大きいが、風祭さんも身長は190センチで筋肉の量も凄い。

 でも顔は柔和で人懐っこい感じがして優しそうだ。


 「ここから更に移動して頂きます。コロールはもうホテル以外に建物が無く、避難民が暮らしていますので」

 「分かりました」


 僕は海上自衛隊のヘリコプター「SH-60L」に搭乗し、コロール島とは離れた島へ移動した。

 ここには鉄筋の建物が建っており、住民は避難しているので接収したそうだ。

 スペイン風のお洒落な邸宅という感じで、元は観光客のための貸別荘になっていたそうだ。

 風祭さんが荷物を持ってくれて、建物の中へ入れてくれた。


 「こちらです」

 「随分と素敵な所ですね!」

 「そう言って頂けると。那智さんは他の人間とはあまり接しない方が宜しいかと思い、ここに決めておきました」

 「ありがとうございます!」


 入り口で女性の兵士がお迎えしてくれた。


 「《裏鬼》の四家しけです。宜しくお願いします」

 「こちらこそ!」


 四家さんは180センチくらいの長身で、やはり風祭さんと同じく筋肉が凄い。

 顔はクールな印象だが、風祭さんと同じく優しい感じがする。

 風祭さんたちの他には誰もいない。

 多分、この島自体にも一人もいないだろう。


 「自分と四家が当座のお世話をいたします」

 「そうなんですか」

 「早速ですが、お食事を作りたいと思います。何かご希望はありますか?」

 「なんでも結構ですよ?」

 「食料は十分にありますが、では折角の外国ですし、変わったものでも作りましょうか」

 「はい、お願いします!」

 「『ヤンソンの誘惑』は如何です?」

 「はい?」

 

 聞いたこともない。


 「スウェーデン料理です。珍しいでしょう?」

 「はい、知らない料理です。どういうものですか?」

 「ジャガイモと玉ねぎ、アンチョビのグラタンのような料理です」

 「美味しそうですね!」

 「では、それにいたしましょう」


 朝から何も食べていなかったが、今は2時くらいになっている。

 風祭さんは僕が空腹なのを知っていて、真っ先に言ってくれたのだろう。

 四家さんが紅茶を淹れてくれ、風祭さんが料理している間に話してくれた。


 「風祭は料理が趣味なんですよ。結構美味い物を作りますので楽しみにしていてください」

 「はい、ありがとうございます!」

 「那智さんは明るい方ですね」

 「そうですか?」

 「はい。《能力者》の方とはほとんどお会いしたことはありませんが、途轍もない能力を持ちながら、皆さんとても気さくで優しい方ばかりだと聞いております」

 「それは僕たちに優しくしてくれた人がいるからです。僕たちはみんなその人のために努力して来ましたからね」

 「そうなのですか」


 第7艦隊の動向も聞いた。

 ほとんど全速力で向かっているそうだが、船舶はとにかく足が遅い。

 時速50キロも出ないから、大分時間には余裕がある。

 それに出撃にあたり燃料や弾薬の補給や食料などの積み込みもある。


 「遠距離からICBMを撃ち込まれる可能性もありますが、衛星のアラートの設定は完璧です」

 「第7艦隊でどうにか出来ると思っているでしょう。ICBMの可能性は低いですよ」

 「那智さんでしたらICBMも対応出来ますか?」

 「まあ、そうですね」


 曖昧に答えておいた。

 僕に出来ないことでは無いが、ICBMに関しては別な仲間の方が簡単だ。

 また、ここにICBMを撃ち込む奴は絶対に冴姫ちゃんが許さないだろう。

 冴姫ちゃんは言ってた。

 宗三さんがここの景色を気に入っており、また是非来たいと言ってたそうだ。

 ならば、ここを破壊しようとする奴は破滅するだけだ。

 風祭さんが「ヤンソンの誘惑」を作ってくれ、3人で食べた。

 驚くほどに美味しい料理でお礼を言った。


 「良かった。那智さんの好みが分からなかったので、大分変化球で勝負したのですが」

 「好みなんて無いんですよ。普段はそんなに美味しい物を食べてないんで」

 「いや、そう言う人ほど怖いことを知ってます。こんな状況ですから食材が自由になるわけではないんですけど、精一杯に努力します」

 「楽しみにしてます! ありがとうございました」


 つい先日、闇絵さんの鍋料理を食べたばかりで、本当に何でも食べられるつもりだ。

 あれは凄まじかったなぁ。

 風祭さんも四家さんも、僕がまだ子供であることは全く気にしていなかった。

 むしろ上の人間に接するように整えた態度で臨んでくれた。

 それから毎食風祭さんが食事を作ってくれ、どれも唸るほどに美味しかった。

 四家さんは掃除や洗濯などをしてくれ、僕はいつも本を読んでいた。

 

 「那智さん、何を読んでいるんですか?」

 「今は中川与一の『天の夕顔』です。読んだことありますか?」

 「あいにく文学はとんと。どういうお話なんですか?」

 「学生時代に京都で知った既婚者の女性を生涯愛して行く話です」

 「そうですか、よく分かりませんね。すいません、自分は小説とか読んだことがなくて」

 「え! あ、ああ、物語を必要としないんですね」

 「そうですね、なんかすみません」

 「そんな。でも僕にはずっと必要なものだったので」

 「そういうものですか」

 「ええ。僕たちは普通ではありませんからね。大きな力を得てそれを制御するにはどうしても深さが必要なんです」

 「深さ?」


 四家さんは不思議な顔をした。


 「ええ、僕たちが獲得したものは余りにも大きい。普通の人間では受け止め切れないんです」

 「だから物語が必要だと?」

 「そうです。物語は僕たちに深さを与えてくれます。様々な人生、境遇の中で様々なことを考える。特に崇高な思考は僕たちに何かを与えてくれるんです」

 「なるほど、じゃあ、私なども読むべきなんですね」

 

 四家さんは今度は嬉しそうな顔をした。


 「そうするべきと思いますよ」

 「ああ、那智さんと話していると本当に気付かされます。そうですね、能力や技術はそれだけではいけないんですね」

 「そう思います。宜しければ持って来た本をお貸ししますよ?」

 「ほんとうですか! ありがとうございます!」


 風祭さんも話に入って来た。


 「あの、自分にも貸していただけますか」

 「もちろんです。じゃあ持ってきますね」


 僕は部屋に行って二冊持って来た。

 『アミエルの日記』と『狭き門』だ。

 風祭さんが『アミエルの日記』を、四家さんが『狭き門』を手に取った。

 その日から、三人で居間で本を読む日々が始まった。

 風祭さんと四家さんは時々訓練をし、僕も身体が鈍らないように運動をした。

 その他は風祭さんの料理を楽しみ、後は本を読む。

 気さくな方々で僕に話し掛け、退屈しないようにしてもくれた。

 散歩に誘ってくれたりし、パラオの美しい景色も堪能した。




 そして二週間後、米第七艦隊が来た。

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