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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Resonance : 響き合う者たち

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解明された能力

 「ドラゴン! どういうことか説明して下さい!」


 あの常に冷静沈着な周一郎兄貴が随分と驚いていることが分った。

 明らかに顔が強張り、幾分顔が蒼くなっている。

 一度もこんな周一郎兄貴を見たことは無い。

 冴姫と闇絵さんまで驚いている。

 俺が聞こうとすると冴姫に遮られた。

 兄貴の邪魔をするなということらしい。

 ところでさ、「ドラゴン」さんって誰?

 まあ、いつもの如く誰も俺に説明してはくれなかった。


 〈「ローカル・バブル」学説に於ける謎のトンネルのことです。太陽系バブルからおおいぬ座β星「ミルザム」まで伸びるトンネルが現在確認されており、その原因についてはまだ明確な学説は出ていません。ですがこのトンネル状の存在は他にも数多く存在していることは分かっており、宇宙空間以外にもその存在の可能性が示唆されています。「イーロシータ(eROSITA)」の解析を検証……解析完了。トンネルの観測を行なえる機器の開発が成功する確率は97%です〉


 周一郎兄貴が更に「イーロシータ」などについて質問をしていたが、機械音声に対して常に敬語を使っていた。

 ドラゴンさんは偉い人なのだろう。

 一通りの質問が終わったようだ。


 「今のなに?」


 やっと俺は質問出来た。


 「宗三、お前の全ての言動は監視されている」

 「え!」

 「宗三の言動が、時に大きな進展を促すことがあるためだ。今もお前の言葉から、途轍もない進展があった。感謝する」

 「だからなに!」

 「虎蘭たちの特殊能力について、今後は解決出来る可能性が高い。既に「ドラゴン」の通達により、《トリポッド》が手配を始めたはずだ」

 「兄貴ぃー!」

 「お前の言葉が起点となり、それを解析してある結論が導き出されたということだ」

 「全然分からねぇよ!」

 「お前の場合はそれでいい。今後ものんびりやってくれ」

 「そうは行かねぇだろうが!」

 

 みんなが笑った。

 なんか面白くねぇ!

 でもみんなの緊張が解けたようで良かった。

 冴姫が言った。


 「観測機器の開発は時間が掛かりますね?」

 「もちろんそうだ。だが最優先で人材を集める」

 「それまでは《虎部隊》にも大人しくしてもらう必要があります」

 「そうだな。宗三の感覚では大丈夫そうだが」

 「でも100%ではありません。それに《聖女》の問題もあります」

 「そっちも問題だな」


 冴姫がまた危なそうな気配になったので俺が言った。 


 「だったらさ、みんなで集まって食事でもしない?」

 「「「!」」」


 兄貴たちが驚いていた。


 「だってさ、お互いに親しくなればって思うんだよ。みんな何考えてんのか分からなくてお互いに疑ってんだろ? だったらいっそ本音で話し合ってみればいいじゃん」

 「宗三! お前何を言っているのか分かっているのか!」

 「もちろん分からねぇよ! だって誰も説明してくんないじゃんか!」

 「「「……」」」


 俺もいい加減に頭に来た。

 俺を24時間監視しているらしいドラゴンさんにも聞いてみた。


 「ドラゴンさん、どうですかね?」


 〈推奨。宗ちゃんはイイ子ですね〉


 「「「!!!」」」

 「でしょ?」


 冴姫が俺の腕を掴んで言った。

 いつも冷静沈着なあの冴姫が、これまで見たこと無いくらいに慌てている。


 「今、《ドラゴン・システム》が「宗ちゃん」って言ったぁ!」

 「おい」

 「《ドラゴン・システム》にアクセス出来るのはほんの一部の人間だけなんだよ!」

 「そうなの? だってさっきは全員に聞こえてたじゃない?」

 「だけどシステムと話せるのはここでは周一郎さんだけだよ!」

 「え、お返事してくれたよね?」

 「だからびっくりしてんのぉ!」

 「アハハハハ?」

 「しかも「イイ子」って言ったぁ!」

 「オホホホホ?」

 「宗ちゃん!」

 「いや、俺に言われても」


 見ると周一郎兄貴も闇絵さんも驚いていた。


 「と、とにかくだ。こうなれば宗三の提案は実行しよう」

 「そうですね。宗ちゃんは凄いですね」

 「まったく……宗三、お前はどういう食事会をしたい?」

 「そうだなー。あ、虎蘭さんに手料理を御馳走するって約束したや!」

 「お前、本気か!」

 「うん、そうだよ」


 冴姫が反対した。


 「宗ちゃんのマンションに入れるのは反対です!」

 「まあ待て、冴姫。相手は《虎部隊》と《ヴァーミリオン》だ。既に宗三の居場所は知られているに違いない。今更隠そうとしても無駄だ」

 「確かに、虎蘭は四谷駅で待っていましたね」

 「そういうことだ。《聖女》にしても既に掴んでいるだろう。どういう意図で宗三に銀座を案内させたのかは分からないが、その時点で宗三のことは徹底的に調べているはずだ。まあ、普通の会社員としてしか分からなかっただろうがな」

 「なるほど、考えて見ればそうですね」


 〈宗ちゃんの情報は確実に知られています。恐らく《虎部隊》には《特異点》ということも掴まれているでしょう〉


 《ドラゴン・システム》さんがそう言ったので全員が驚いていた。


 〈《ヴァーミリオン》はまだそこまでは至っていません。ですが《聖女》は特殊な能力を持っている模様で、宗ちゃんに接近したがっているようです〉


 「それはどういうことですか!」


 周一郎兄貴が叫んだ。


 〈80%の推測ですが、《聖女》も宗ちゃんに近似する能力を有している模様。宗ちゃんには及びませんが世界線の流れを少しは読むようで、自分に有利になる行動を選択出来ると思われます。そして虎蘭、もしくは《虎部隊》の中にも同じ能力者がいると推定されます。それによって宗ちゃんに二人共が興味を抱いていると考察されます〉


 「なんということだ!」


 またしても、あの冷静な兄貴が困惑している。


 「宗ちゃんが《特異点》と知られて安全なわけがありません! 私はすぐに出撃します!」

 「待て、冴姫!」


 〈宗ちゃんが《特異点》と判明しても、即座に攻撃される可能性は低いと思われます。虎蘭が今まで何も手出しをしなかったことが、その証明です。《聖女》にしても、宗ちゃんを利用することが目的と考えます〉


 「何故《特異点》を放置するのですか?」

 

 〈宗ちゃんに利用価値があるためです。《特異点》の喪失により国家の衰弱を招くことはありますが、利用価値が高ければその能力に関わりたいと考えるものです。現状がまさしくそうです〉


 「宗ちゃんの能力……」

 「運命を発展させる力か……」


 冴姫と周一郎兄貴が考え込んだ。


 「よし、分かった。それでは宗三の提案の通りに虎蘭と《聖女》を宗三の自宅に招いて食事会を催すことにする。ガードは冴姫のみ。念のためにマンションからココロと来栖は離しておく。他の保安要員もだ」

 「え、マンションに誰が?」


 また誰も教えてくれなかった。

 もういいもん……


 「《聖女》はパラオでの件で今は混乱しているはずだ。冴姫も知っての通り、《聖女》はあの件について何も知らされていなかったと思われる」

 「じゃあ、宗ちゃんから誘われれば喰いついて来ますかね」

 「その可能性は高い。単なる食事会ではなく、何らかの交渉の余地と考えるだろう」

 「はい、周一郎さん。でもほんの僅かでも危険を感じたら私が二人を殺します」

 「もちろんだ。絶対に見逃すな」

 「はい!」

 「おいおい……」


 俺は無視……

 でもとにかく、お二人をマンションに招くことになった。

 さーて、何を作るかなー。

 のんびりとそんなことを考えていた俺を、三人が呆れたように見ていた。

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