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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Resonance : 響き合う者たち

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明かされた正体

 「我々は決して姿を現わしません。そのような能力を有しております」

 「いや、それは……」

 「ですがソウザさんは特別です。あなたは「世界」にとって貴重な存在。是非ともその栄光を我々にも頂きたく」


 虎蘭さんが席を立ち、床に片膝を着いて頭を下げて言った。

 優雅な一連の動作だった。

 冴姫が俺の前に出て言った。


 「虎蘭、お前は宗ちゃんに何を望む?」

 「冴姫!」

 「何も。我々から望むものはありません。ただ友愛を。それだけです」

 「敵に回ることは無いと言うのか!」

 「一切、全く。それは我が命に代えても守る誓いです」

 「私のことは分かるか?」

 「いいえ、あなたのことは調べましたが何も。ですが日本の《能力者》であると考えております」

 「その上でのこのこと出て来たのか」

 「友愛を。ソウザさんとの友愛のためであれば、この命など何ほどのこともございません」

 「……」


 冴姫は虎蘭さんを見下ろしていた。

 俺は事態の急変に驚き、ただ慌てていた。


 「宗ちゃん、やっぱこいつはここで始末しよう」

 「ダメだ、冴姫! 絶対にダメだよ!」

 「宗ちゃんはそう「思う」んだね?」

 「そうだよ、当たり前だろう! 虎蘭さんは本心から言ってる。俺と友達になりたいだけだ。俺もそれを望んでる!」

 「分かったよ」


 冴姫が微笑んだ。

 どういう笑顔なのかは分からないが、取り敢えずの危機は脱したか。


 「虎蘭さん、立って下さい。それは友達の前でする姿勢じゃありませんよ」

 「ああ、ソウザさんはそう言って下さるのですか!」

 「当たり前です、さあ立って」


 虎蘭さんは輝く笑顔で立ち上がった。

 俺の伸ばした手に掴まって。


 「虎蘭さん、俺たちはもう友達です。さっきそう言いましたよね?」

 「はい、確かに」

 「またお会いしましょう」

 「はい、いつでもお呼び下さい」

 「そうじゃないですよ。虎蘭さんの方からも連絡下さい」

 「!」

 「あ、ラインを教えてください!」


 虎蘭さんは笑ってラインのアドレスを教えてくれた。

 前に聞いたのは電話番号であった。

 ラインであればいつでも気軽に連絡出来ると思った。


 「誰かにこれを教えるのは初めてです。本当にご連絡をしても?」

 「はい、今度は俺が何かご馳走しますよ! あ、こんなに高いものは無理ですが」

 「ソウザさんの手料理とかは?」

 「てめぇ、図々しいぞ」

 「冴姫! いいですよ。拙い腕前ですが、喜んで虎蘭さんのために作ります」

 「楽しみにしております」

 「はい! あ、冴姫さんも宜しくお願いします」

 「ふん! 宗ちゃんの友達はあたしのダチだ」

 「はい!」


 俺たちは先に帰った。

 駐車場のヴォタンテに乗った。

 

 「ふん、本当に何もしてないな」

 「え?」

 「この車に近付く奴がいたら分かるの。だけど誰も来なかった」

 「そ、そうなんだ」

 「なんか仕掛けると思ってたんだけどなー」

 「アハハハハハ」


 俺が笑うと冴姫が目を見開いた。


 「!」

 「どした?」


 ヴォタンテのステアリングの前にメモが置いてあった。



 〈友人と友人の恋人へ またお会いしましょう〉



 最後の冴姫の言葉をなぞったメモだった。

 そして非常に美しい字だった。

 名前は書いていないが、あの虎蘭さんが書いたものに違いないと思った。

 虎蘭さんは俺の友人であり、冴姫は俺の友達は友だと言った。

 俺たちは真直ぐにこの駐車場へ来たはずだった。

 それに冴姫はこの車には誰も近づかなかったと言っていた。

 冴姫が言うことは絶対に間違いない。

 それでも虎蘭さんはこのメモを車内に残した。

 しばらく冴姫は考えていた。

 この車が安全かどうかだ。

 でも冴姫はエンジンをかけて出発した。

 もちろん何事も無かった。 


 「《虎部隊》は侮れない」

 「でも、虎蘭さんは友達だよ」

 「宗ちゃんのその言葉だけが頼りだから」

 「え?」

 

 冴姫は《虎部隊》のことを話してくれた。

 中国の《能力者》である《虎部隊》は神出鬼没の兵士たちとして有名なのだそうだ。

 その能力でこれまで数々の驚異的なことを為している。


 「アメリカと中国は以前から敵対することが多くてね。一度アメリカの《ヴァーミリオン》が中国の新型空母を強襲したことがあるの。当時の大統領の命令でね」

 「大変じゃねぇか!」

 「アメリカの軍事力を見せつけるためにね。空母は大破して沈んだ。その3日後に作戦行動中のアメリカの原子力潜水艦の乗組員全員が消滅した」

 「ゲェ!」

 「その翌日にホワイトハウスに《虎部隊》が侵入し、大統領が首を斬られて死んだ」

 「おい、そんなことをしたら戦争になるだろう!」

 「ならなかった。大統領は飛行機事故で亡くなったことになり、原子力潜水艦は事故で行方不明ということになったの」

 「あ、大統領の急死ってニュースになったよな!」


 俺でも知っていた。

 でも、そんな裏事情があったとは。


 「アメリカと中国は密かに不可侵条約を結んだ。アメリカの暴挙から始まったことだから、多分相当の見返りは求められたと思う。何があったかは分からないけどね。でも誰も侵入出来ないはずの海底の原潜に潜り込んだのよ」

 「え、外部からの攻撃じゃないの?」

 「違う。原潜はハワイの基地の近くで無傷で発見され、乗組員全員が殺されてたの。それにホワイトハウスに侵入するなんて無理だよ。あそこは厳重な警備と《ヴァーミリオン》もいるはずだから。でも殺されたのは大統領だけ。それも誰にも見つからずに殺して逃げた」

 「それが《虎部隊》の能力……」

 「そういうこと」


 なんてことだ。

 じゃあ、さっきこのヴォタンテにメモを置いたのも。


 「あたしのマシンにまで侵入出来るなんてね。はっきり言ってちょっと舐めてた」

 「そうなんだ」

 「これからはそんなことはさせないけどね。でも宗ちゃん、重要なのはそこじゃない」

 「え?」

 「虎蘭は自分が《虎部隊》だと名乗った」

 「そうだね?」

 

 冴姫が俺を振り向いて言った。

 前向けよ!


 「宗ちゃん、これまで《虎部隊》の情報はほとんど無いの。それがメンバーだって自分で名乗ったのよ!」

 「うん?」

 「私たちは世界で初めて《虎部隊》の顔を知ったの! これがどれほどのことか分かる?」

 「いや、分からんが」

 「ガァァァァーーー!」


 冴姫は車を停めて誰かと電話で話した。


 「そう、やっぱりね。うん、分かった」


 俺を見て言った。


 「虎蘭を見張っていたココロちゃんたちが見喪った。そればかりか、私たちの会話も盗聴出来なかった。もちろんこの車に近付いた奴もいない。宗ちゃん、相当だよ」

 「すごいんだね」

 「凄いよ。もうこうなるといつ暗殺されてもおかしくない。まあ、無理だけどね」

 「そうなんだ」

 「私がガードに就いている限りはね。私のいない場所には潜入出来ても、私がいたら無理」

 「そうなの?」

 「宗ちゃん、私の傍を離れないで」

 「ウンコしてる時も?」

 「ウンコは一人でしなし」

 「わかった」


 二人で笑った。


 「宗ちゃん、怖がってないね?」

 「うん、なんだかね。実感が湧かないのはもちろんだけど、虎蘭さんは悪い人じゃないよ」

 「それを聞いて安心した」

 「うん」


 冴姫がまた電話をし、俺たちは周一郎兄貴に会いに行った。

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