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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Resonance : 響き合う者たち

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虎蘭林

 翌日の日曜日、虎蘭さんと待ち合わせのホテルのロビーで落ち合った。

 俺と冴姫は時間通りに着いた。

 港区の有名な高級ホテルで、虎蘭さんはここの中華料理をご馳走して下さるそうだ。

 俺と冴姫がロビーのソファで待っているとすぐに虎蘭さんも到着した。


 「今日はわざわざすいませんでした」

 「いいえ、こちらこそ今日は御馳走になります」

 「ええ、では参りましょう」


 虎蘭さんは白の麻のスーツを着ていらした。

 本当に美人だ。

 それにスタイルも良い。

 期せずして俺も麻の白のスーツを着ており、冴姫は淡いグリーンの同じく麻のパンツスーツだった。

 虎蘭さんは迷いもせずに中華料理のお店に向かい、名前を言うとすぐに個室へ案内された。


 「何か苦手なものはございますか?」

 「いいえ、何でも食べますよ。冴姫も同じです」

 「それは良かった」


 まー、闇絵さんの鍋を乗り越えてるかんなー。

 チャイナドレスのウェイトレスが入って来て、虎蘭さんが注文をする。

 中国語なので分からない。


 「今日は特別なメニューを用意しました。お口に合えば宜しいのですが」

 「ありがとうございます!」


 冴姫は最初の挨拶から全然喋っていなかった。

 だけど虎蘭さんは気にする風もなく、笑顔で俺たちに話し掛けていた。

 虎蘭さんはあらためて、パラオのホテルで俺と出会ってからのことを話してくれた。


 「パラオで新たに海底にレアアースとレアメタルが見つかったことで、私たちの国も調査に加わりたいと考えておりました」

 「それで虎蘭さんは来ていたのですね?」

 「そうです。私たちは三人でパラオ政府に交渉しようとしていました。既に日本とアメリカが優位に立っていることは分かっていましたが、何とか加われないものかと」

 

 もちろんあのテロ事件で、全て日本が独占することになったのだが。


 「交渉は途中でした。本国へ戻り、もっと呈示出来る条件の承認を得ようと考えていました。それで空港に着いた所であの事件が」

 「そうでしたか、大変でしたね」

 「空港では逸早く大規模なテロ事件ということを把握しており、駐機していた全ての航空機が国外へ出ることになりました。私たちは運よくその一機に乗ることが出来、無事にパラオを出国出来たのです」

 「良かったですね!」

 

 俺が言うと、虎蘭さんも嬉しそうに笑った。


 「はい! カグラザカさんのお陰です。空港で一番早い便に乗るつもりでしたが、もしもあと少し到着が遅れていれば、私たちもどうなっていたことか!」

 「そんな、私のせいじゃないですよ。私も偶然コンタクトレンズを見つけただけですから」

 「いいえ、ありがとうございます。本当に感謝していたのです。ですがどこのどなたかも分からず、心を痛めておりました。日本人の方は全員御無事だと後から知りましたが、あなたがどうなっていたのか心配で」

 「ありがとうございます。この通り無事に帰国出来ました。お互い無事で本当に良かったですね」

 「はい!」


 料理が運ばれて来た。

 前菜はチンゲン菜と海老の炒め物のようだった。

 虎蘭さんが取り皿に分けてくれ、冴姫が口にした。


 「宗ちゃん、これ美味しいよ!」


 初めて冴姫が喋った。

 それかよ。

 俺も口に入れた。


 「!」


 中華料理は油が多いのだが、この炒め物からは全然重さを感じなかった。

 最高の油と火加減が素晴らしいのだろう。

 食材に火が通る塩梅をよく分かっている一流の料理人なのだ。


 「良かった、お口に合いそうですね」

 「「はい!」」


 冴姫と一緒に返事した。

 もう冴姫は笑顔になっている。

 食いしん坊め。


 和牛ヒレ肉の黒コショウ炒め、鮑のオイスターソース煮、ヨシキリザメのフカヒレスープ、伊勢海老のクリームチーズ煮、干し肉干し貝のおこわ、そして北京ダック!

 次々に来る高級中華料理に冴姫と二人で喜んだ。

 食べながら虎蘭さんが楽しい話をしてくれた。

 これまで巡って来た海外の美しい場所や街の話などだ。

 信じられない程に美味しい物を口にし、冴姫がようやく口をきき始めた。


 「サキさんは随分とお綺麗な方ですね?」

 「はい! もう一緒にいて毎日楽しいです!」

 「宗ちゃん! もっと言うし!」

 「アハハハハハ! それは羨ましい」

 「もう私の喜びって、冴姫に美味しいものを食べてもらうことでして!」

 「宗ちゃん! もう黙るし!」

 「じゃあ、カグラザカさんがお料理を?」

 「はい! 全部私が作ってます!」

 「宗ちゃん、いい加減にしなし!」

 「あ、そっか」

 「アハハハハハハ!」

 「冴姫は洗濯と洗い物をしてくれます。掃除は大体私です」

 「もう!」

 「アハハハハハハ!」


 虎蘭さんは大笑いし、また俺たちが羨ましいと言った。


 「でも本当に羨ましいのはサキさんです」

 「え、私?」

 「カグラザカさんのような方のお傍にいられて、本当に羨ましい」

 「うん、宗ちゃんは大好きだから」

 「そうですか。あのカグラザカさん、サキさんも、私とお友だちになっていただけますか?」

 「どうしようかな。でもこんな美味しいものを御馳走してくれるし、宗ちゃんのことも本当に好きみたいだからなー。じゃあ、お友だちということで」

 「ありがとうございます!」


 虎蘭さんが嬉しそうに笑った。


 「私は中国人で、あなた方は日本人。背負うものはそれぞれありますが、私たちの友情を大切にしたいと思います」

 「私も同じです! これからも仲良く出来たら嬉しいです!」

 「宗ちゃんがそう言うなら私も。でも宗ちゃんは私のものだよ?」

 「アハハハハ、はい、その通りです。サキさんとも仲良く出来ればと思います」


 虎蘭さんは俺たちが一番美味しいと言った北京ダックをもう一羽追加してくれた。

 冴姫が異常に喜んだ。


 「今日の食材は普通のものじゃないよね?」

 「まあ、サキさんにはお分かりですか。はい、カグラザカさんにお礼をするために特別なものを仕入れさせました」

 「やっぱり! このお店で前にも同じものを食べたことがあるけど全然違う」

 「冴姫は前にも来てたんだ。兄貴か?」

 「ううん、闇絵さん。あの人はいろんな美味しいお店に連れてってくれたの」

 「そうなのか! 闇絵さんの鍋も美味しかったもんな!」

 「宗ちゃんは凄いよ」

 「ワハハハハハハ!」


 虎蘭さんが興味を持ったようだ。

 この人も美味しいものが好きらしい。


 「その方もお料理がお好きなんですね」

 「ええ、先日鍋料理をご馳走になりました」

 「そうですか。私も美味しいものが好きなので、御縁があればその方のお料理も食べてみたいです」

 「「うーん……」」

 「ああ、図々しいですよね?」

 「いや、そうじゃないんですけど、ちょっと驚きますよ?」

 「そうなんですか! 本当に機会があれば是非!」

 「まあ、そうですね」


 無理だろう……

 折角の友情を壊したくないし。


 「私のことはフーランとこれからお呼び下さい」

 「では私は宗三で」

 「ソーチャンでは?」

 「それは私の!」


 冴姫がすかさずツッコみ、虎蘭さんと笑った。


 「すいません、ではソウザさんで。大したことは出来ませんが、何かあれば私をお呼び下さい。出来るだけお力になりたいと思います」

 「そんな。でも日本へいらした時にはご連絡下さい。またお会いしましょう」

 「ありがとうございます! 出来ればいつか私の父にも会っていただきたい」

 「お父様ですか? まあ、ちょっとコワイですね」


 冴姫を前にしているから「そういう」意味ではないのだろうが、驚いた。


 「アハハハハ! そうですね、少し怖いと言う人もいます。でも父もきっとソウザさんのことが気に入ります」

 「そうですか、機会があればまた」

 「ありがとうございます!」


 最後にマンゴーの果肉の入ったソルベを堪能した。

 支払いをする姿を見ていないのだが、きっと俺たちが気にしないようにという気遣いなのだと思った。

 何から何までそういう人だった。

 別れ際に虎蘭さんが言った。


 「今日お会い出来たことは、私の人生の中でも最大の喜びです」

 「そんな、大袈裟ですよ。虎蘭さんのような方とは誰だって親しくしたいと思いますから」

 「そうではありません。ソウザさんと友誼を結べたことは、今後千年に亙る栄光です」

 「え、だから大袈裟……」

 「私は虎蘭、中国《虎部隊》の一員です」


 「「!」」


 何を言ってるんだ、この人は!

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