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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Resonance : 響き合う者たち

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連城十三 Ⅱ

 「冴姫さん、《裏鬼》の話をしても?」

 

 また連城さんが冴姫に聞く。

 どうやら俺に知らせて良い内容を確認しているようだ。


 「言いなし」


 冴姫に言われ、連城さんは冴姫に軽く頭を下げた。


 「宗三さん、あまりこういう軍隊の話などはお好きではないとは思いますが」

 「いいえ、俺も《裏鬼》のことは知りたかったですから」

 「宗三さんは《裏鬼》は自衛隊の特殊部隊という認識ですかね」

 「はい。兄貴からは極秘の機密部隊と聞いていますが、世界最強の部隊だと」

 「そうです。部隊の規模はお話し出来ませんが、それほどの大部隊ではありません」

 「周一郎兄貴の直轄なのですか?」

 「その通りです。ですが我々は自衛隊には属していないのです」

 「え?」


 俺はてっきり自衛隊の内部の特殊部隊と思っていた。


 「そもそも我々は日本人の国籍すらありません。全員が戸籍を喪った亡霊なのです」

 「え、どういうことですか!」

 「言葉通りの意味です。戸籍上、我々は全て死亡しています」

 「そんな!」


 連城さんはにこやかに微笑んでいた。

 この人は一体……


 「自衛隊ももちろん、日本が対外戦争が出来ないということは御存知ですね?」

 「え、ええ、それは憲法でそう決まっていることだと」

 「そうです。ですから自衛隊の海外派兵は何度もありますが、全て現地での救援活動や地雷や機雷の除去といった非戦闘的な仕事でした。だからこそ、自衛隊は万一の場合に備えて必死に鍛え上げられました。海外の特殊部隊を呼んで合同演習をしたり、一部の精鋭の兵士を育てることに邁進して来たのです」

 「そうなんですか」

 「ですが、戦場の経験は兵士にとって必須です。専守防衛を旨としても、実際の戦闘経験が無ければどんな訓練も無意味です。ですから戦闘の経験を積む部隊が必要でした」

 「それが《裏鬼》なんですね……」

 「その通りです。我々は戸籍を捨てて海外での非正規戦闘の経験をこなして来ました。特に世界各国で《能力者》と呼ばれる超戦士たちが生まれ始め、それに対抗出来る部隊が求められました」

 「連城さんたちは冴姫たちのような人間に対抗出来ると?」

 「アハハハハハハ! まあ、冴姫さんは無理ですよ。全てを知っているわけではありませんが、日本の《能力者》は世界的に見ても最強です。我々はもうちょっとレベルの低い《能力者》を標的にしています。まあ、たとえどんなに強い連中であっても向かって行きますがね」


 それは命を捨てるということだ。

 連城さんは確実にその意志を持っていることが分った。


 「宗ちゃん、連城さんたちは本気だよ。日本のために全員が命を捨てるつもりでいる。私も何度か戦場で一緒になったけど、本当に凄い。これほど鍛錬を積み上げた人たちは世界中にいないよ。それが出来たのは連城さんたちが心底から日本のためを思っているから」


 冴姫が初めて話した。


 「まあそうですが、特に宗三さんですよ。そして4年前に宗三さんのことを初めて聞きました。それ以来、我々は宗三さんのためには何でもしようと誓っております」

 「そんな、俺なんて!」


 4年前?


 「直接の接触は許されませんでした。でも宗三さんのことは度々耳に入って来ました」

 「え、何をですかぁ!」

 「アハハハハハ、それは話せませんが、いろいろと施設を回り、いろんな人間とお会いして来たでしょう?」

 「あ、ああ! 父上や兄貴たちに連れられてそういうことが!」

 「みんな宗三さんのことが大好きだと言っていました。まあ、私が会ったのはそのごく一部ですが」

 「エェ!」


 連城さんが菊理媛を美味そうに飲んだ。

 俺は空いたグラスに注ぎ、礼を言われた。


 「だから私も宗三さんにお会いしたかった。本来は禁じられていたのですが、パラオで宗三さんをお見掛けし、思わず声を掛けてしまった」

 「ああ、あの時!」

 「《裏鬼》が設立されたのは8年前です。最初から宗三さんと日本を守るための部隊だと言われました。我々はあの日以来、ずっとその誓いの下で活動しています」

 「そ、そうなんですか……」


 俺には想像も付かなかったが、その言葉通りに連城さんたちが必死に何かを積み上げて来たということは分かった。

 有難いし、尊敬するべき人たちだった。

 自分の当たり前の日本人としての幸福を捨てて、国家のために全てを捧げる人たちなのだ。

 俺のことなんかは申し訳ないばかりだが、《特異点》というのは俺にはどうしようもない。


 「あの、何て言ったらいいのか分かりませんが、連城さんたちを尊敬します。これからも日本を宜しくお願いします」

 「ありがとうございます! はい、必ず!」


 連城さんが立ち上がって握手を求めて来た。

 俺は精一杯の力で握った。


 「俺、本当に貧弱ですよね?」

 「ワハハハハハハハ! そうですね。でもあなたは戦う人ではない。それは我々に任せて下さい」

 「はい。でもお身体には気を付けて。日本にはあなた方が必要なんですから」

 「もちろんです、お気遣いありがとうございます」

 「それと、敵対するかどうかはよく見極めて下さい」

 「はい?」

 「敵になるかどうかは表面的には分かりませんから。敵に見えても本当はそうでない相手もいると思います」


 俺は口にしながら、自分でもおかしなことを言っている自覚はあった。


 「……心に留めておきます。貴重なご意見、ありがとうございます」

 「あ、い、いいえ! 俺、何言ってるんだろう。プロの方におこがましい口を!」

 「ハハハ、そんなことはありません。今日はお話し出来て良かった」

 「はい、俺の方こそ! また一緒に食事をしましょうね!」

 「本当ですか! 本当に宜しくお願いします!」

 「是非!」


 連城さんはそのまま帰られた。

 一緒に後片付けをしていると冴姫が言った。


 「宗ちゃん、連城さんのことをどう思った?」

 「ああ、御立派な方だよ。本当に尊敬する」

 「そう、良かった。私も連城さんたちは好きだよ? あんなに純粋な人たちはいない」

 「そうだね、それに連城さんは優しい上に教養もあるし」

 「うん。戦場でも時間が出来るといつも本を読んでた」

 「そうなんだ」

 

 冴姫も好きなようで嬉しかった。


 「なんかスゴイ時計してたよなー」

 「宗ちゃんもああいうの欲しい?」

 「俺なんかは似合わないよ。社会に出たばかりの新入社員は分相応のものでいいんだよ」

 「買ってあげるのになー」

 「いらないってぇ!」


 でも、その後で冴姫と一緒に高級時計をパソコンでいろいろと検索した。

 俺の時計好きがそこでバレてしまい、冴姫が絶対に買うと言い出した。


 「やめてよー」

 「ガハハハハハハハ!」

 「絶対よせよな!」

 「宗ちゃん、日本で一番重要な人なんだよ?」

 「全然ちがうよー!」

 「遠慮すんなし」

 「先輩たちに怒られるよ」

 「私がぶっ飛ばす」

 「絶対ぇよせ!」

 「ガハハハハハハハ!」





 冴姫が明るく笑い、それを見て俺も笑った。

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