生還
みんなで「シメ」を(死ぬ気で)平らげて後片付けをした。
闇絵さんはみんなに任せて俺にずっと食材の話をしてくれていた。
全然頭に入って来なかった。
綺麗に洗い物を済ませてみんなが戻って来た。
「じゃあ闇絵さん、本当にごちそうさまでした!」
『ごちそうさまでした!』
「いいのよ。みんな忙しいけど、また集まって何か食べようね!」
『はい(もういいです)!』
闇絵さんと別れてみんなで外に出た。
「おい、全員無事か」
冴姫が言った。
「あれが「闇絵鍋」か、凄まじかったな」
「お前らは初めてだったけど、よく頑張ったな」
「冴姫たちから聞いてたからよ、何とか踏ん張った」
「《能力者》相手より厳しかったぜ」
「アレ、もう13回も食べたの!」
「ココロ、ギブアップしてたじゃん」
「私、ミミズは無理なの!」
「みんなそうだよ!」
「でも宗三さんのお陰で切り抜けたな」
「ありがとうごまいますっす!」
『ありがとうございました!』
みんなに本気で礼を言われた。
「いや、俺なんて別に」
「宗三さん、さすがっす! 初めてで耐えたばかりか、闇絵さんがあんなに喜んでたのは初めて見たっす!」
「だって一生懸命に用意してくれてただろ? それに本当に美味しかったし。もう感謝しかないよ」
「それは凄いですよ!」
「宗三さん、やっぱり最高ですってぇ!」
「流石でござる」
「大好きです!」
「みんな何言ってんの、アハハハハハハ!」
『ワハハハハハハハハ!』
みんなで笑った。
でもちょっと心配になって冴姫に聞いた。
「でも、あんなの食べて大丈夫なのか?」
「それは心配無い。私もココロちゃんも来栖も何度も食べてるからなー。むしろ体調はすこぶる良くなるよ」
「そうなの。アレだけど、闇絵さんの真心がこもってるの」
「そういうもんかー」
「でも今日のは最恐だったの!」
「そうだよね。それに何しろ宗ちゃんに説明する間が無かったから本当に焦った」
「冴姫からちょっとは聞いたからな」
「最低限ね。「黒口」が出た時は気が気じゃなかったわ」
「アレはコワイの」
「《サンタクルス》出しそうになった」
「そしたら「大口」が出るの」
「ヤバかったな」
「うん」
なんだ?
「那智、お前そう言えばパラオに行くんだって?」
「うん、明日出発だよ」
「そっか、がんばれよ」
「うん」
冴姫が那智君に話していたのが聞こえた。
「え、那智君、パラオに行くの!」
「はい! 宗三さんのお陰で手に入れたパラオですからね。絶対に守りますよ」
「俺のお陰なんかないよ。でもまだ危ないし酷い状況だから気を付けてね?」
「は、はい! 宗三さんのために、必死で頑張りますから!」
「だからそうじゃないって」
俺が笑うと那智君がとっても嬉しそうな顔をした。
カワイイから頭を撫でてしまった。
「感激です! また宗三さんに撫でて頂きましたぁ!」
「え、また?」
「何でもありません! ありがとうございます!」
「いやいや」
他の子たちが羨ましそうに見ていたので、みんなを集めて頭を撫でた。
みんな嬉しそうにしていた。
ココロちゃんがまだ辛そうだった。
ココロちゃんの頭も撫でる。
「ココロちゃん、大丈夫?」
「うんなの! 宗ちゃん優しいの!」
「ちょっとうちで休んでく?」
「はいなの!」
そうするとみんな来たがったが、そんなにうちには入れない。
またいずれ呼ぶということでみんなとは別れて、ココロちゃんだけうちに来た。
コーヒーを淹れて一息吐く。
ココロちゃんはニコニコして楽しそうに冴姫と話していた。
二人は本当に仲が良い。
「あ、そうだ。冴姫ちゃんに一つ知らせておくの」
「え、なーに?」
「どうも《ヴァーミリオン》の「スターズ」が日本に来るらしいの」
「え!」
「まだ詳細は分からないの。でもあの銀座での一件で何か気付いたかもしれないの」
「そうか……」
「「スターズ」って何?」
《ヴァーミリオン》のことは以前に少し聞いた。
アメリカの《能力者》の集団で、薬物と人体改造を施した強化戦士のことだ。
仁桜姉貴を襲って来たが、レーザーのビームソードを使う物凄い連中だった。
冴姫が説明してくれる。
「銀座で襲って来たのは《ヴァーミリオン》の汎用モデルだったの。量産品と思ってくれればいい」
「でも凄まじかったぜ。姉貴もちょっと斬られてたし」
「あれは宗ちゃんを守りながらだったからね。大技を使うとビルが倒壊しかねなかったし、外にも一般人が大勢いたし。それに仁桜さんもわざと受けてたんだよ。《ヴァーミリオン》と交戦する機会は少ないからね。敢えて攻撃を受けてた」
「そうか」
ココロちゃんが補足してくれる。
「「スターズ」は《ヴァーミリオン》の精鋭部隊なの。あんなもんじゃないの」
「そうなのか」
と言われても俺には想像も出来ない。
まあ、いつものことだ。
「何人来るの?」
「多分一人なの。どうやら《聖女》らしいの」
「《聖女》かよ!」
「そうなの」
誰?
「宗ちゃん、《聖女》というのは冴姫ちゃんの《殲滅者》と同じコードネームなの。《ヴァーミリオン》の中でも最強の戦士の一人なの」
「そんな凄い人が来るんだ?」
「そういうことなの。目的はまだ分からないの。でも気を付けてなの」
「うん、分かった」
「日本に入ったら分かりそう?」
「アメリカ大使館を監視してるの。大使館内の情報は全部盗聴出来るの」
「あっちも敵地に入るわけだから警戒もしてるだろう」
「うんなの。でも頑張って見張るの」
「ココロちゃん、無理しないでね」
「はいなの!」
俺は銀座での《ヴァーミリオン》たちの動きを思い出していた。
人間のスピードではない高速で移動し、あの「ビームソード」を縦横に駆使していた。
「ビームソード」は何でも両断し、人体などは呆気なく四散する。
壁のボードを支える軽鉄なども火花を上げながら切れていた。
あれ以上の存在が日本に来る。
俺と冴姫を探しているのだろうか。
ココロちゃんは落ち着いたようで出て行った。
「冴姫、さっきココロちゃんが言ってた……」
冴姫は窓の外を向いて、獰猛な笑顔を湛えていた。
俺はその美しい横顔に見惚れて言葉を呑み込んだ。
戦うために生まれて来たような冴姫。
無慈悲な戦闘も冴姫が純粋な心で行なうために酷く美しく見える。
そして俺はもう、そういう世界に足を踏み込んだのだ。
冴姫と一緒ならばどこまでも行ける。
本当に冴姫を美しいと思った。




