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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Witch's cauldron : 魔女の大鍋

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宴も酣(たけなわ)

 冴姫が新たなワイングラスに日本酒を注ぎ、闇絵さんに渡す。

 闇絵さんが本当に嬉しそうな顔をしてグラスの酒の匂いを嗅ぐ。

 日本酒がお好きなようだ。

 覚えておこう。

 何か今後、大事なことになりそうな予感がする。


 「ありがとー! ビールもいいけど、本当はやっぱ日本酒も欲しかったんだ!」

 「ジャンジャン飲んで下さい! 闇絵さん、日本酒好きですもんね!」

 「うん!」


 闇絵さんがお礼だと冴姫に「顔面」の真ん中、鼻の部分を器に入れる。


 「じゃあ冴姫ちゃんにははい、これ! 一番美味しいとこだぞー」

 「……」


 またココロちゃんと、今度は同じく身体の小さな那智君のペースが遅くなった。

 最年少の罪歌君は案外食べている。

 大物だ。

 でも見た目はともかく、本当に美味しいのだ。

 箸の進まないココロちゃんと那智君に闇絵さんが声を掛けた。


 「二人とも育ちざかりなんだから、遠慮なく食べてね?」

 「「はい!」」


 闇絵さんに言われ、二人が勢いよく器の中身を掻き込む。


 「ウグゥ!」


 ココロちゃんが口を押さえた。


 「ココロちゃん!」


 俺が慌てて背中をさすってやる。

 ココロちゃんの口がパンパンになったが、物凄い気合でそれを呑み込んだ。

 


 ガチガチガチガチ……



 またあの黒い口がココロちゃんの後ろに現われた。

 さっきより数が多いし噛み方が荒い。

 闇絵さんが心配そうにココロちゃんに声を掛ける。

 でもなんか、目が笑ってない。


 「ココロちゃん、まさか体調が悪いの?」

 「い、いいえ! そんなこと全然ないの!」

 「そう、このお鍋は知っての通り健康にいいから、もっと食べなさいね」

 「は、はいなの!」


 そう答えたが、ココロちゃんの右耳に黒い口が噛みついたのが見えた。

 ちょっと血が出ている。


 「ヒィィ! ウグゥ」


 ココロちゃんが一瞬挙げた悲鳴を押し殺した。

 全員、真剣に鍋を食べて行く。

 もう作ったニコニコ顔は無い。

 ひたすら必死な顔だ。

 闇絵さんが俺の器に十字貝を入れて来た。


 「ほら、宗三君、やっと貝が開いたわよ?」

 「はい、美味しそうですね!」


 闇絵さん以外全員が尊敬のまなざしで俺を見ている。

 俺は案外平気だった。

 確かに具材の気味悪さはあったが、味はちゃんと美味しい。

 俺は美味しいものであれば食べるのにそれほど抵抗は無い。

 開いた十字貝から実を剥がして口に入れた。



 イタイイタイイタイイタイ……



 「……」


 絶対「痛い」って言ってたが、咀嚼すると喋らなくなった。

 まあ、ちょっとキツイ。

 闇絵さんの用意してくれた食材が大量にあったので、食べ切るには2時間くらい経ってもまだ残っていた。

 もう流石にみんな満腹だ。

 でも誰も「喰えない」とは言わずに頑張って食べた。

 ココロちゃんは時々耳を黒クルミに齧られながら必死で食べた。

 那智君も何度か噛まれた。


 3時間後。

 不気味な具材は全部終わり(それらが美味しいのだと闇絵さんが率先して先に分けたから)、普通の見慣れた食材だけになってきた。

 やっとみんな本当の笑顔で楽しく会話し始めた。


 「あー、もう残り少ないわねー。じゃあシメはどうする?」


 みんなもう必死に食べ過ぎてお腹は大分辛いだろう。

 それ以上に「胸」が一杯だ。

 でも誰も「食べない」とは言わない。

 冴姫とココロちゃん、来栖君は他の子たちよりも慣れていたようで、率先して闇絵さんの料理の美味さを褒めたたえていた。

 ココロちゃんと那智君はちょっと耳から血を流している。

 黒クルミに齧られたのだ。


 「あ、や、闇絵さん、たまにはウドンで如何です?」


 冴姫が提案した。

 闇絵さんがそれを聞いて喜ぶ。

 こんな時にアレだが、笑顔が本当に魅力的な方だ。

 きっと優しい人なのだろうと思う。

 みんなに美味しいものを食べて欲しくて、今日は本当に心を込めて鍋を作ってくれたのだ。

 

 「え、本当に? 私も今日は雑炊じゃなくて細長いのが食べたいと思ってたの!」

 「そうですか! ウドンもいいですよね!」


 来栖君とココロちゃんが異常に喜んだ。

 そんなにウドンが食べたかったか?

 まあ、俺はどちらでもいい。

 闇絵さんがキッチンの棚を開けてカゴを持って来た。


 「「「「「「「「!!!」」」」」」」」


 カゴには生きたミミズのようなものがうごめいていた!

 いや、絶対これ、ミミズだろう!

 しかも二種類いるらしく、暗い赤っぽいものとくすんだ紫色のもの。

 両方とも長さは20センチくらいはあるが、それよりも小さいものも多い。

 闇絵さんが途中で止めていたコンロの火を点けて、盛大にカゴのミミズを投入した。

 少し出汁を足し、鍋の蓋を閉じる。


 「ちょっと待っててねー!」


 闇絵さんがニコニコしている。

 しばらくすると鍋が沸騰を始めたのが分かり、コンロの火を止めた。

 蒸らしているのか、アレを……


 「さあ、できたわよ!」


 闇絵さんが鍋の蓋を持ち上げると湯気が盛大に立ち昇った。

 一瞬またエゲツない臭いがしたが、しばらくすると落ち着いて良い香りになった。

 闇絵さん料理の不思議な所だ。

 全員が蒼白になっている。

 やっと苦難を乗り越えたと安心した所へのトドメだったためだろう。

 でも、誰一人として席を立たない。

 果敢に最後まで挑むつもりだ。




 闇絵さんだけがニコニコ顔だった。

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