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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Witch's cauldron : 魔女の大鍋

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実食

 闇絵さんが目の前のまな板に食材を素早く置くと、見事な包丁さばきでカットされていく。

 手足の生えた黒い魚の背びれが瞬時に切り離され、背開きで背骨と内臓が抜かれて行く(手足そのまま)。

 尾びれを落として昆布を引き揚げて入れ替えにそのまま鍋に投入。

 4尾を同じようにした。


 「この子たちがいい出汁になるんだよねー」

 「「「「「「「「……」」」」」」」」


 なんか臭い。

 はっきり言ってウンコの臭いがする。

 どう見ても「いい出汁」になるとは思えない。

 俺たちの当惑をよそに、闇絵さんはどんどん進める。

 白い円盤の下の指のようなものが無数に包丁で落とされて鍋の中に。

 太い血管の浮いた眼球はそのまま。


 「これは後で切ってみんなに取り分けるねー」

 「「「「「「「「……」」」」」」」」

 「歯応えもあって美味しいよー!」

 「「「「「「「「……」」」」」」」」


 普通のネギや白菜、春菊などが鍋に入り、十字貝も入れられた。



 ギャァァァァーー!



 「「「「「「「「!」」」」」」」」


 貝が思い切り叫びやがった。


 「おい、あいつ叫んだぞ!」


 思わず口を吐いて言葉が出てしまった。

 冴姫が慌てて俺の口をふさいで耳元で囁いた。


 「宗ちゃん、黙ってて!」

 「ウン!」


 闇絵さんが俺を見ていたが、ニッコリ笑うと微笑み返してくれた。

 他のみんなも顔が引きつりながらも笑顔でいる。

 流石だぜー。

 人体そっくりなものが入れられ(瞬間目を開いた!)、闇絵さんは「顔面」を持ってキッチンへ行った。

 何するんだろう?

 俺が振り返って見ていると網に挟んでコンロの直火で「顔面」を炙り出した。


 「!」


 冴姫に顔を前に向けられた。


 「見ない方がいい!」

 「うん!」


 

 グウェェェェェェェェ……



 なんかの唸り声のようなものが聴こえるが、みんな反応しないでいる。


 

 ドン、ドン、ドン、ドン……



 何かを叩き切るような音。

 闇絵さんがカットされて皿に入れられた「顔面」を持って来る。


 「さー、美味しくなったよー!」

 「「「「「「「「……」」」」」」」」


 強張った笑顔で鍋に入る「顔面」をみんなで見ていた。

 鍋はしばらく紫色と黒の渦になっていたが、やがて普通の薄茶色になっていった。

 美味しそうな香りも漂って来る。

 さっきまでウンコだったのに。


 「できたー!」


 闇絵さんがそう言って、お椀に鍋の中身を掬ってよそっていく。

 みんなでつつくと大勢なので取りにくいので、どうやら闇絵さんがサパーするらしい。

 これでは「避ける」ことは不可能だ!

 最初に俺の前に器が置かれ、来栖君がご飯をよそって配って行く。

 全員に行き渡った。


 「いただきまーす!」

 「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」


 冴姫が俺に顔を向けてうなずいた。

 食べろということだろう。

 もう胃液が込み上げてくる。

 俺の器には丁度目玉付きのキノコのカットが入っていた。

 目をつぶって器の中身を箸で口に持って行った。


 「あ、美味しい!」


 思わず口に出た。

 闇絵さんが喜んだ。


 「宗三君、そうお! とっても嬉しい!」

 「いや、あの、本当に美味しい(一応喰えます)です!」

 「じゃんじゃんお替りしてね!」

 「は、はい」


 冴姫が声に出さずに口を開いて「バカ」と言う。

 スイマセン。

 闇絵さんの給仕は素晴らしく、ちょっと器が減って来ると「ほら」と言って器をもらって新たに注いでいく。

 みんな引きつったニコニコ顔で礼を言っていく。

 もちろん闇絵さんもどんどん食べている。

 マジで嫌がらせのつもりは全く無いのだ。

 本心の底から俺たちを喜ばせたいという気持ちが伝わって来る。

 その中でココロちゃんのペースが遅い。

 ココロちゃんは身体は小さいが、結構食べる子なのは知っている。

 一緒に住んでいたという闇絵さんだってよく知っているだろう。

 闇絵さんが心配そうにココロちゃんに声を掛けた。


 「ココロちゃん、どうしたの?」

 「ヒィッ!」


 悲鳴を上げた。

 するとココロちゃんの頭の後ろに黒い小さな口が見えた!



 カチカチカチカチ……



 真っ黒な小さな口だけが上下に噛み合わさって音が聞こえる。

 大きめの黒いクルミに口だけを付けた感じだ。

 みんな気付いているが黙ってる。


 「すいません、ちょ、ちょっと考え事をしてましたですなの!」

 「そう、何か心配事?」

 「だ、大丈夫ですなの!」


 ココロちゃんが猛然と器の中身を口に入れて、引きつった笑顔で「おかわりくださいなの!」と言う。

 闇絵さんはニコニコしてたっぷりと入れて戻した。

 ココロちゃんの頭の後ろの黒い口は消えた。


 「なんだよ、アレ!」


 小声で冴姫に聞く。


 「闇絵さん、日本酒飲みましょうよ! 気付かなくてすみませんっした!」

 「あら、今日は遠慮しようと思ったのに」

 「折角の美味しいお鍋は日本酒でしょう! 他の人間の分も何か飲み物取って来ます。宗ちゃん、手伝って」

 「あ、ああ!」


 冴姫と一緒に部屋を出て行く。

 離れた場所で冴姫が言った。

 もちろん小声だ。


 「宗ちゃん見たでしょ。あれが闇絵さんの飼ってる妖魔なんだよ」

 「えぇ!」

 「もちろん他にも一杯いるけど、毎回鍋の時に出て来んのがアレ!」

 「なんかカチカチ言ってたぞ!」

 「闇絵さんが出してるわけじゃないの! 無意識の闇絵さんの気分次第で噛まれるのよ!」

 「なんだと!」

 「最初はちょっとだけだけど、本当に闇絵さんの機嫌が悪くなっとマジでガンガン喰うから!」

 「なんじゃそりゃぁ!」

 「前にココロちゃんが本気で喰われたから」

 「ちょっと待てよ!」

 「ダメだよ! 闇絵さんの料理は断ったらいけないの! 鍋は特にね!」

 「俺、帰っていい?」

 

 冴姫が怖い顔をして言う。


 「絶対ダメ! 抜け出したら闇絵さんの無意識と連動して、どこまでも追い掛けて来っから! 大勢でね!」

 「お、大勢!」

 「前に200匹くらいに喰われた奴見た」

 「ゲェ!」

 「ペンペン草も生えねぇし」

 「……」


 このまま喰うしかないらしい。

 冴姫と一緒に日本酒とソフトドリンクを持って帰った。

 日本酒は剣菱だった。

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