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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Witch's cauldron : 魔女の大鍋

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《能力者》集合

 市ヶ谷の周一郎兄貴から呼ばれた。

 パラオの惨劇について、冴姫と一緒に説教でもされるのだろうか。

 そんなこと言われても俺はなんにも知らん!

 普通に社員旅行を楽しもうとしていただけなのに、いきなり冴姫が戦争を始めたのだ。

 まだ旅行が潰れたせいで会社は休みであり、まあヒマなのだが。


 「冴姫、俺が行ってどうするんだ?」

 「宗ちゃんはあたしの傍にいてくれりゃいいから」

 「それだけの理由!」

 「アハハハハハハ!」


 もちろんそれだけではないだろう。

 俺の安全のために冴姫が傍にいる必要はあるが、別にココロちゃんも来栖君もいる。

 これまでも度々冴姫が離れて二人のどちらかが護衛についてくれたのだ。

 だから今日のことは俺にパラオのことを確認するためではないのだろう。

 大体素人の俺なんかが何も説明出来るはずもない。

 それに帰って来た日に冴姫がすぐに周一郎兄貴に報告へ行っていたのだ。

 理由は分からないが、俺は兄貴に呼び出されて断わることはない。

 まあ、俺は冴姫の言う通り、冴姫の傍にいるのは嬉しい。

 ヴォランテで出掛けた。

 いつもの門衛に敬礼をされて中へ入る。

 最近は来ることが多いので、すっかり顔を憶えられていた。

 兄貴の部屋へ行くと、知らない顔が幾つもあった。

 みんな少年少女だ。

 しかし冴姫と同じく、身体から漂う雰囲気は普通じゃない。

 俺はすぐに彼らが冴姫たちと同じ《能力者》なのだと分かった。

 みんなが何故かキラキラした目で俺を見て微笑んでいた。

 それに声こそ出さないが、冴姫が手を振ったりうなずいたりして互いに挨拶している。

 全員顔見知りのようだった。

 あの「学園」で一緒だったのだろうか。


 「やあ、宗三。今日は彼らを紹介しようと思ってな」

 「兄貴、この人たちって」

 「《能力者》だ」


 やはりそうだった。


 「パラオの件があったからな。そろそろ全員に宗三のことを繋げておくことにした。世界の状況はいよいよ厳しくなっている。これからは各国の《能力者》同士がぶつかっていく可能性が高くなる」

 「分かったよ」


 俺は驚いてはいなかった。

 兄貴たちは本気で俺の護衛をして行くつもりなのだ。

 まだ恐らく他の国には俺が《特異点》であることは漏れていない。

 しかし今後は分からないのだ。

 だからまずは俺の正体を隠すためにも《能力者》全員で連携して動く必要があるのだと兄貴が説明した。


 「冴姫だけが動けば、敵も冴姫の周辺の状況を探るようになる。だから今後は他の《能力者》も関わっていき、宗三の存在をマスキングするのだ」

 「冴姫が俺と一緒に住んでいることはどうするんだ?」

 「冴姫の存在自体がまだ敵に掴まれていない。だが経済学に「蜘蛛の巣定理」があるように、事象は徐々にある特定の存在の周囲に点在するようになる。そこから演繹されて冴姫の存在、ひいては宗三の存在に行き着く可能性があるのだ」


 兄貴の言っている「蜘蛛の巣定理」は俺も知っている。

 需要と供給のバランスの収束と乖離が螺旋状に出来上がるという理論だ。

 戦闘の事象が多くなるほど、それを実行する存在が少ないほど収束し、多いほど存在同定は乖離するということだろう。


 「今後は宗三の護衛も冴姫以外の人間にも任せることがあるだろうから、ここで彼らを紹介しておく」


 来栖君が「やったぁ!」と叫び、冴姫に蹴りを入れられていた。


 「ココロと来栖についてはもう知っているだろう」

 「よくは分からないけど、ココロちゃんは《忍者》で来栖君は《暗殺者》ってことだろ?」

 「ああ、そうか、宗三はそういう認識だったな。ココロはそう思っておけ。数々の格闘技や武器を扱えるし「迦楼羅」という不可視のチタン合金の糸を操る」

 

 俺は「関東旧車會」に追われた時に車がバラバラに切断されたことを思い出した。

 あれは「迦楼羅」という武器だったのか。

 もちろん周一郎兄貴が《能力者》について俺に全部話そうとしているとは考えていない。

 ココロちゃんも、他の子たちも凄い能力があるのだろう。


 「来栖は宗三も見ているだろうが《サンタクルス》という技を使う。これは一種のサイコキネシスだ。十字の鋭利な念動を飛ばすことが出来る。人間であればそのまま切断されるのだ」

 「……」


 それも見ていた。

 看護師に変装した「関東旧車會」の女性がまさしく目の前で十字に斬られた。

 廊下や階段にもそうした遺体が積み上がっていたのを見ている。


 「さて、今回集まった他の人間の能力も少し話しておこう。まず俺の副官の闇絵は妖術使いだ」

 「え、妖術!」

 「闇絵は京都の道間家の人間だ。古来から妖魔を使役し妖術を使う家系なのだ。日本で本格的に核を超える《能力者》を考えた時に、真っ先に候補に挙がった」

 「じゃあ、闇絵さんも?」

 「そうだ。歴代の道間家の人間の中でも優秀な能力を持っている」

 「そうなんだ!」


 まあ、「妖術」と言われても具体的なことは全く分からなかったが。

 でも核兵器を超える能力を、闇絵さんも持っているということだろう。

 闇絵さんが微笑んで俺に手を振った。

 以前から非常に気さくな人だ。

 だが、その名前からもあるかもしれないが、底知れない怖さもある。


 「那智は初めてだな」

 「はい」


 那智君はまだ本当に身体も未発達な少年だ。

 前髪が長く額の前で分けられている。

 非常に痩せていて、肌の色も白く虚弱な印象だ。

 でも雰囲気は他の子たちと同じで非常に濃い。

 

 「那智は14歳だ。冴姫と同じく《超次元格納》を扱える貴重な人間の一人だが、那智専用の巨大超兵器がある。それを超次元空間から呼び出して操縦する」

 「へぇ、すごいね!」

 「宗三さん! よろしくお願いします!」

 「うん、よろしくね」

 「はい!」


 那智君が明るく笑っている。

 いい子のようだ。

 立ち上がると、まだ身長は140センチくらいだろう。

 それにしてもみんな美少年と美少女揃いだ。

 《能力者》って、そういうものなのだろうか。

 冴姫も凄い美人だし、ココロちゃんも愛くるしいし、来栖君も間違いなくイケメンだ。

 まあ、来栖君は服装がイタイが。

 まだ紹介されていない子たちがキラキラした目で俺を見て、自分が紹介されるのを待っている。


 冴姫が俺の隣で言った。


 「那智も他の連中も、みんな宗ちゃんに会いたがってたんだよ」

 「そうなの!」

 「みんな宗ちゃんのことが大好きなんだ。今日はみんなの顔を見せられて私も嬉しい」

 「そうか! でも会ったことも無いのにね」

 「まあ、そこはともかくね」

 「うん?」


 冴姫が曖昧な返事をした。





 周一郎兄貴が続けて俺に紹介して行った。

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