Parau Paraiso : 召されるパラオ
ココロちゃんから通信が入った。
「冴姫ちゃん、あいつらパラオの政府を壊滅させる気なの!」
「え!」
「今、《ボルーチ・バロータ》の会話を傍受したの! あいつら、パラオ政府を潰した後で今いる人間たちを全員的に掛けるつもりなの!」
「なんだってぇ!」
じゃあ、最初から侵略戦争を行なうということか!
《ボルーチ・バロータ》はパラオにいる全ての人間を虐殺するつもりなのだ。
パラオ国民は2万人弱だが、《能力者》にとってはまるで問題にならない。
それにパラオには軍隊が無い。
国防はアメリカが担うことになってはいるが、駐留軍は無いのだ。
警察組織はあるが、抵抗は出来ないだろう。
《ボルーチ・バロータ》はパラオ国民と共に、今いる全ての外国の観光客も虐殺するつもりだ。
ならば宗ちゃんも標的に入っている!
「ホテルの宗ちゃんは私が護衛するの! 冴姫ちゃんは《ボルーチ・バロータ》を殲滅してなの!」
「分かった!」
「それとなの!」
「え、まだあんの?」
「CIAのスノーマンが日本の《能力者》が今パラオにいるってチクったの!」
「なにぃ!」
「もちろんデタラメなの。あいつらは何も掴んでないの! でも《ボルーチ・バロータ》は《能力者》を相手する覚悟だから冴姫ちゃん、注意するの!」
「分かった。ありがとうココロちゃん」
「いいの。宗ちゃんは任せてなの」
「うん。でも敵は絶対に近付けないから」
「うんなの!」
「あ、和田商事の社員さんたちも宜しく!」
「そっちはもう動いてるの。みんなもうホテルに戻るよ。パラオの人たちも出来るだけ避難させてるの」
「ありがと!」
通信を切って、私は《ボルーチ・バロータ》を狩りに向かおうとした。
だがその瞬間に《ボルーチ・バロータ》の5人が散開した。
敵の中に気配感知能力の優れた奴がいるのかもしれない。
パラミリ連中を片付け、あいつら手当たり次第に周囲を攻撃し出した。
殺気を感知したものの、私の位置が分からないのだろう。
だからって荒々しいにもほどがある。
パラオなど何も出来ないと思って好き放題に破壊を始めた。
私には敵の位置が分かる。
だから攻撃を始めた。
《バハムート》の「荷電粒子砲」で敵の潜んでいる場所を撃った。
「!」
驚いたことにレジストされた。
引き千切った車の破片をPKで竜巻のようにして自分の上に高速回転させている。
あれで電磁気的な「荷電粒子砲」の威力を無効化したのか。
私はそれを見て「重粒子砲」に切り替えた。
広義には「重粒子砲」も荷電粒子砲なのだが、重い陽子をより莫大な電力で撃ち出すので威力が桁違いになる。
やはり敵も今度は防ぎ切れずに爆散した。
しかし他の連中が高速移動を始め、一層広範囲の破壊をしてきた。
宗ちゃんのいるホテルが近いので、私も範囲攻撃を始める。
仕方なく「反物質砲」を使った。
威力があまりにも巨大過ぎるので一区画程度を破壊する範囲に納めてはいるが、敵が高速移動するためどうしても幾つもの区画を破壊することになった。
首都の方に《ボルーチ・バロータ》が展開した。
あいつらを一人も残してはならない。
宗ちゃんを守らなければ。
私は追い込んで潰して行った。
ロシアの《ボルーチ・バロータ》は第一線の連中ではなかったようで、「反物質砲」で全て撃破出来た。
申し訳ないが街はもう全壊だ。
ココロちゃんが出来る限りで避難させただろうから、ごめんなー。
どうせ《ボルーチ・バロータ》がお前ら全殺しのつもりだったから、良かったじゃんかー。
一応ココロちゃんからデータで送られた避難マップと照合して、なるべく避難所は破壊しないようには出来た。
パラオ人の犠牲者のほとんどは《ボルーチ・バロータ》の連中によるものだ。
急いで宗ちゃんの所へ戻った。
もちろんココロちゃんとの通信で宗ちゃんが無事なのは分かってる。
ホテル内は事前にココロちゃんが全部クリーンにしているので安心している。
私が戻ると、宗ちゃんがホテルのベランダに立ってるのが見えた。
私は随分と抑えたつもりだたけど、幾つものホテルの部屋の窓ガラスが割れていた。
「反物質砲」の余波の超震動がここまで伝わったのだろう。
宗ちゃんがボウっと街の方角を見てた。
もう戦闘は終わって敵はいないけど、あっぶないなー。
まあ、ココロちゃんが見張っているから安全なのだが。
私が《バハムート》装備のまま近付くと、宗ちゃんが目を丸くしてびっくりした。
そういえばこの装備は見せたことが無かった。
《バハムート》を収納してベランダに降り、宗ちゃんに近寄った。
「宗ちゃん、終わったよー」
「……」
宗ちゃんが死んだ目で私を見た。
「全部殲滅したから、もう大丈夫だよー」
出来るだけ優しく声を掛けた。
「……」
こいつ、このあたしが優しくしてやったのにボケてやがる。
「ねぇったら!」
「……」
手を伸ばして宗ちゃんの前髪を掴んで顔を揺すった。
「おい、聴いてんの?」
「お、おう」
やっとお返事してくれたぁ!
「エヘヘヘヘヘヘ」
「……」
飛び切りの笑顔を見せてやったら、また宗ちゃんが呆然としてる。
今度は優しく抱き締めてあげた。
大好きなオッパイを喰らえぇー。
身体を放すと笑顔になったと思った宗ちゃんが泣きそうな顔をしてた。
「宗ちゃん?」
宗ちゃんの綺麗な瞳から大粒の涙が零れた。
もう一度抱き締めて宗ちゃんにキスをした。
泣かないで、宗ちゃん……




