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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Parau Paraiso : 召されるパラオ

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出発

 6月13日。

 一度全員が会社に7時に集合し、揃ってリムジンバスに乗って出発することになっていた。

 俺と冴姫はお揃いのグローブトロッターのキャリーだ。

 ベージュの地に赤のストラップのもので、先日伊勢丹で買った。

 また冴姫の奢りで。

 見分けるために、俺のキャリーには冴姫が買って来た犬のシールが貼ってある。

 俺が遠吠えすると周辺の犬が返事を返すようになり、冴姫がそれを楽しんでいたのだ。


 「ワンザちゃん!」

 「おい!」


 まあ、俺も面白くてよくやるようになったのだが。

 俺と冴姫はタクシーに乗って来た。

 6時半には到着していたが、もうほとんどの社員が来ていて1Fのロビーで楽しそうに話していた。

 幹事の方が受付でチェックするように大声で叫んでいた。

 俺と冴姫はまず自分の名前をチェックする。

 俺は上司や先輩の顔を見つけて挨拶していった。

 15分前にはもう全員が揃った。

 誰も遅刻する者はおらず、流石は和田商事と思った。

 リムジンバスは部署ごとに乗り込むとのことで、俺は第一貿易部の先輩方と一緒のバスに乗り、冴姫は榊常務と一緒にいる。

 冴姫とは別なバスになったが、何かあれば冴姫が飛び出してくるのだろう。

 まあ、少しも想像すらしなかったが。

 これから楽しい社員旅行だ。

 行先も世界的な観光地パラオだ。

 危険なことがあるわけもない。


 えーと、そんなことを考えている時期もありましたー。


 とにかくもちろん何事もなく、リムジンバスは成田空港へ向かった。


 「神楽坂は海外は初めてだよな?」

 「はい! 楽しみにしてました!」


 隣に座っている俺の教育係の錦野先輩が話し掛けてくれる。


 「まあ、うちの部はそのうちに海外はバンバン行くようになるけどな」

 「はい!」

 「そうだ、神楽坂はパラオで新たに発見された海底鉱床の件は知っているか?」

 「ええ、部の資料も結構読みました。大変な発見ですよね?」

 「そうだ。日本の南鳥島沖のレアアースとレアメタルの鉱床ほどではないようだがな。それでも相当な埋蔵量が見込まれている」

 

 知っている。

 

 「でもパラオ自体には採掘の技術も人員もいませんよね?」

 「そこだよ。今は各国が名乗りを上げて採掘権を得ようと必死だ。もちろん日本もな」

 「日本はどうなんでしょうか?」

 「これまでは悪くない進展だな。日本がパラオを委任統治領にしていたこともあるから、親日派の人間は今でも多い。パラオの近代化は日本が行なったんだぞ」

 「はい。電気水道ガス、道路のインフラから貨幣経済の導入や学校教育までやったんですよね?」

 「よし、よく勉強しているな! だから今もパラオ国民は日本への感謝を忘れていない人も多いんだ」

 「第二次世界大戦後はアメリカですね」

 「そうだ。だがアメリカはアジアの軍事拠点として利用するつもりで、経済発展や社会福祉には消極的だった。だからパラオは独立後にアメリカに良い思い出を持っていない」

 「じゃあ、日本が有利なんですね!」

 「そういうことだがな。でも国際情勢はそんな単純なものでもないぞ。アメリカも他の国も必死にパラオに喰らいつこうとしている。和田商事もその一勢力だ」

 「がんばりましょうよ!」

 「ワハハハハハハハハ!」


 錦野先輩は大笑いし、周囲で聞いていた先輩たちも笑った。

 まあ、新人の俺なんかに何が出来るわけでもないのだが。





 俺たち新人はほとんどが初めての海外旅行ということで浮かれまくっていた。

 二人ほど海外経験があったが、韓国だそうでどちらも修学旅行だったということで本格的な海外は初めてだと。

 部署ごとにまとまっての行動だったが、空港からは同期の新人は特別に一クループになっており、互いに別々になってから久し振りの顔合わせも多い。

 ジャンボジェットの貸切で、重役たちはファーストクラス、役の上の上司たちはビジネスクラス、その他ともちろん俺たち新人は全員がエコノミークラスだ。

 でも初めての飛行機に乗ることで、全然苦にはならない。

 約5時間弱の旅で、機内食も出て全員が興奮した!


 「おい、俺機内食って初めて見たぜ!」

 「肉と魚って選べんのな!」

 「両方喰いてぇ! 半分こしようぜ!」


 上の人間は酒を飲んでいるが、エコノミークラスの人間は控えるように言われている。

 冴姫はもちろん俺の隣だ。


 「冴姫、俺の半分食べていいぞ」

 「やめろし」

 「いいから喰えよ。お前、それじゃ足りないだろ?」

 「心配するなし」

 「遠慮すんなって」

 「ハズイって言ってんの!」


 みんなが見ていた。

 冴姫の食欲をみんなが知らない。

 冴姫は顔を赤くして物凄い速さで俺の皿と自分の空の皿を交換した。

 俺は全部やるとは言ってねぇ!

 まあ、黙ってたけど。


 食事が終わると周囲の新人たちは映画鑑賞が出来ると分かって、みんなヘッドフォンで映画を観始めた。

 冴姫は興味が無いのか、それには加わらない。

 だから俺も冴姫と話をした。


 「冴姫は海外は行ったことあるのか?」

 「うん、何度もあるし」

 「へぇー! どこに行ったんだ?」

 「だからいろいろだって」

 「誰と一緒?」

 「大体一人かな。私がいれば十分だし」

 「え、一人旅?」


 かっけぇー。


 「まあ、そういうことなんだけどさー」

 「いーなー。でも機内食は一人分だな!」


 冗談のつもりで言った。


 「あ? ああ、自分で飛んでくから。現地でも大体喰わないで帰るし。敵地じゃ危ないっしょ」

 「ん?」

 「ビューって飛んでって、ガンガンってぶっ殺してまたビューンって帰るの」

 「……」

 「飛行機は初めてだなー!」

 「……」


 もう深くは聞かなかった。

 食事を終え、しばらくするともうパラオに到着した。

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