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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Parau Paraiso : 召されるパラオ

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百家の予言

 和田商事の社員旅行が発表された週の土曜日。

 周一郎さんに呼ばれ、昼食後に市ヶ谷に行った。

 宗ちゃんにはココロちゃんを付け、隣の部屋には来栖を待機させている。

 宗ちゃんのマンションはフロア全体と上下の部屋に《トリポッド》の戦闘要員を配備してある。

 先日仁桜さんに宗ちゃんを攫われたこともあり、徹底的な防衛体制を敷いた。

 周一郎さんの部屋に入ると、周一郎さんと闇絵さんだけがいた。

 闇絵さんと楽しく挨拶する。

 闇絵さんがコーヒーを入れて私たちのテーブルに置いてくれた。

 闇絵さんに気付かれないよう、一瞬で中身の「安全」を確認する。

 良かった、「普通」だ。


 「冴姫、和田商事はパラオに行くんだよな」

 「そうですよ! でも今のこの時期ってヤバいじゃないですか!」


 私は取りやめにして欲しかった。

 しかし前に周一郎さんに話した時には「待て」と言われた。


 「落ち着け。これは百家の巫女の託宣があったことなのだ」

 「え、百家!」


 百家は古来から国政に深く関わって来た。

 予言の巫女が生まれる家系であり、その託宣に従って常に日本は国体を守り、発展を続けて来たのだ。


 「パラオ沖でレアアースとレアメタルの海底鉱床が発見されてから、幾つかの国が狙っているのは知っているな?」

 「もちろんです」

 「特にアメリカ、中国、そして日本だ」

 「はい。日本では《仁王会》が出張ってますよね?」

 「そうだ。アメリカはCIAがお抱えのパラミリを派遣しているようだ。あのスノーマンが指揮している。中国も特殊部隊を出しているらしい」

 「スノーマンは有名なケースオフィサーですね。中国は《虎部隊》ですか?」

 「そっちはまだ観測していない。でも可能性はある。《虎部隊》は隠密性が高いからな。現地で対応出来るのはお前くらいだろう。他にもどの国が来てもおかしくないが、冴姫ならば宗三の安全を確保しながら相手が出来るだろう」

 「まさか、最初からあたしに何かやらせるつもりだったんですか?」

 「いや、そうじゃない。今回の和田商事のパラオ行きは全くの偶然なのだ」

 「え?」


 今日は和田商事のパラオ行きの話になることは分かっていた。

 ここに来るまで、てっきり私が敵勢力の排除をさせられるものと思っていた。


 「和田商事では2年前からの計画らしいよ。それこそパラオ沖の鉱床の発見は4ヶ月前だからな。和田商事は数年先までの社員旅行の計画を立てて準備しているんだ。だから本当に私も驚いたよ」

 「あの、じゃあ行先を変えた方がいいんじゃ」

 「そこなんだ。もちろん私も考えた。だが百家の巫女から宗三たちを向かわせるように言われた」

 「それはどういう……」


 闇絵さんが話してくれた。


 「巫女の託宣は宗ちゃんを行かせることだけ。冴姫ももちろんね。それでパラオの海底鉱床を日本が独占することになるって」

 「……」


 どういうことか分からない。 

 周一郎さんが続ける。


 「そういうことだ。冴姫、お前も行くことを含んでいるということは、戦闘が起きる可能性もあるということだ」

 「じゃあ、宗ちゃんは外して!」

 「そうは行かない。託宣には宗三の名前も入っているんだからな」

 「宗ちゃんのことは私に任されてるはずだよ!」


 宗ちゃんを危険な場所には行かせたくない。 

 周一郎さんが身を乗り出して言う。


 「なあ、冴姫。和田商事がパラオに行くということが、お前は本当に偶然だと思うか?」

 「!」

 「宗三の《特異点》の力が働いているんじゃないのか。私はそう考えている」

 「そんな……」

 「先日の「関東旧車會」との戦闘もそうだ。あれは当初《裏鬼》か《仁王会》に任せようと考えていた。だが「偶然」にもお前と宗三が関わってしまった。お前も何か感じていたんじゃないのか?」


 そうだった。

 私は周一郎さんにもそのことを相談していた。


 「それは……」

 「冴姫、宗三は箱に仕舞って置けば良いという存在ではない。もしもそうであれば、きっと運命的に仁桜が連れ去っていただろう。《仁王会》は優れた硬い組織だ。本気になればどんな作戦も遂行できる。だが、そうはならなかった」

 「……」


 「宗三が何かを引き寄せた」

 「!」


 はっきり言われてしまった。

 私も考えていなかったわけではない。

 宗ちゃんの周囲で事象が引き寄せられ、回転させられているのだ。


 「旅行寸前に空港でも破壊しようかと思ってました」

 「お前はまた!」

 「ええ、辞めておきますよ。宗ちゃんも楽しみにしているようなんで」

 「まったく、冗談じゃない。もしも今後過激なことをするのなら、事前に相談してくれ」

 「その間があればですけどね。それに、宗ちゃんを守るためなら私には「過激」ということは一切ありませんから」

 「おい……」


 周一郎さんが笑っていた。

 闇絵さんは大笑いだ。

 私は本気で宗ちゃんのためならば無限に手を拡げるつもりだ。


 「ともかくだ。パラオでは宗三をよろしく頼む。我々も何か掴んだらすぐにお前に伝える」

 「お願いします。ところで現地での協力者は仁桜さんたちなんですか?」

 「いや、仁桜はいない。今は《仁王会》がいるがそのうちに引き揚げさせる」

 「どうしてです?」

 「世界中に知られている《仁王会》がいると、敵をどうしても刺激してしまう。だからあくまであいつらはバカンスの態で遊んでいる。引き揚げれば本当にそう思われるだろう」

 「仁桜さんもいないことですしね」

 「仁桜は今修行のために石神家に帰っている。お前に負けたことが余程悔しいのだろう」

 「まあ、仁桜さんは私以外に宗ちゃんを任せられる数少ない人たちですからね。頑張って欲しいです」


 周一郎さんが苦い顔をした。


 「お前は来栖ともぶつかっているな」

 「しょうがないですよ。でもあいつのことも信用してます」

 「そうだな。しっかりやれ」

 「はい」

 「来栖は同行しないが、ココロはツアーガイドとしてお前たちの傍にいる」

 「数は?」

 「36人だ。十分だろう」

 「XX9シリーズですか?」

 「いや、XX5シリーズ、汎用タイプだ」

 「分かりました」

 「確実なことは言えないが、戦闘の可能性は低い」

 「そう願います。まあ、どっちでもいいですけど」


 私は部屋を出てマンションに戻った。





 周一郎さんは「戦闘の可能性は低い」と言ったが、私は既に戦場の予感を感じていた。

 だからこそ、ずっと宗ちゃんを行かせたくないと言って来たのだ。

 しかし運命は回転してしまった。


 「宗ちゃん、また美味しい物作って」


 そう呟いて宗ちゃんの顔を思い出した。

 絶対に宗ちゃんの笑顔を私が守る。

 私にはそれだけしかない。

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