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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Parau Paraiso : 召されるパラオ

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和田商事 社員旅行

 5月中旬。

 毎日の部の朝礼の最後に、第一営業部の美濃坂部長から発表された。


 「もう知っている人間も多いとは思うが、今年の社員旅行はパラオに決定した。6月の13日から16日までの旅程だ」


 全員が喜び、拍手が起こる。

 朝礼の後で先輩の錦野さんが俺に教えてくれた。

 錦野さんは俺の教育係だ。


 「和田商事では毎年この時期に社員旅行に行くんだよ」

 「そうなんですか!」

 「まあ、社員数が多いので、本社と支店単位だけどな。本社は今年はパラオということだ」

 「すごいですね!」


 大体観光地になるようで、今までもハワイやグアム、香港やアメリカなど、各地に行っているようだ。


 「あ、旅行費は幾らくらいなんでしょうか?」


 海外だと数十万はかかるだろう。

 無いわけではないのだが。


 「あ? ああ! 心配ないよ、全部会社が持ってくれるから」

 「え、でも私は積み立てとかしてませんし」

 「アハハハハハハ! 修学旅行じゃないんだ。会社の福利厚生の一環だよ。他にも会社行事は全部そうだからね」

 「そうなんですか!」


 錦野さんは笑って言った。


 「まあ今は社員旅行なんてやってる会社は少ないけどね。でもうちは毎年やるから」

 「楽しみです! 私は海外なんて行ったこと無いですから!」

 「そうか、じゃあ楽しんでくれ」

 「あ、そうだ、パスポート!」

 「大丈夫だよ。会社がもう申請をしているから。うちの弁護士が全部手配してるよ」

 「そうなんですか、ありがたいです!」


 そういえば入社時にいろいろ書かされた書類にそういうものもあったことを思い出した。

 うちは商社なので全社員がパスポートを持つことになっているそうだ。



 


 その晩、冴姫と夕飯を食べながら社員旅行の話題になった。


 「パラオってどんな場所なんだろう!」

 「人口は約2万未満。国土の総面積は460平方キロ。ちっちゃい国だよ」

 「そうなの?」

 「大小200以上の島々があるの。私たちは一番大きな都市コロールのホテルに泊まるけどね」

 「冴姫はよく知ってるなぁ!」

 「宗ちゃんのためだし。でもなぁ、よりによってパラオかよ」


 冴姫がちょっと顔をしかめる。


 「え、なんかあんの?」

 「まあなんでもねー。私がいれば宗ちゃんは安全だよ」

 「え、うん」


 それは、なんか危ないことがあるかもってことか!

 そう聞くと冴姫は全然大丈夫だと言った。


 「パラオは昔、日本の占領地だったんだ。だから今でもお年寄りは日本語が喋れる人も多い。大体みんな日本人が好きだしね」

 「そうなの!」

 

 今日会社で配られた現地での自由ツアーのことを話し合った。

 希望のツアーに申請することになっている。

 人数が限られているから申し込みが多いと抽選もあるが、多くのツアーがあるようなので何等かは楽しめるだろう。

 もちろん冴姫と一緒に回るので、二人で話し合おうとした。


 「宗ちゃんの好きにしなし」

 「ダメだよ、冴姫も選んで!」

 「めんどいなー」

 「冴姫も楽しんでよ!」

 「あたしは宗ちゃんがいれば十分だから」

 「!」

 

 なんだよ、冴姫!


 「赤くなんなし」

 「やめてよー!」


 冴姫がおかしそうに笑っている。

 まあ、俺も社員旅行を冴姫と行けることが嬉しい。

 俺は会社でもらったツアーの案内パンフを開いた。


 「なんかボートツアーばっかね」

 「海が綺麗らしいからな。冴姫はあんまり好きじゃない?」

 「宗ちゃんが行きたいならどこでもいいけど。でも近場を回るのがいいかな」

 「了解! あ、この「泥パック」は? 美肌になるらしいよ!」

 「あー、ちょっとよさげ」

 「じゃあ、これ!」

 「おいおい、宗ちゃんもやんの?」

 「うん!」

 「まあいいけど。ああ、あたしの裸が見たいと」

 「え、違うよ!」

 「ほんとに?」

 「ウン」

 「ギャハハハハハハ!」


 冴姫と楽しく幾つかのツアーを選んだ。

 泥パックは却下された。


 「まあ、水着は見してやんから」

 「おう!」


 ツアーは先着順らしいから、明日には提出しよう。

 一応第二候補第三候補も選んでおいた。

 まあ、俺も冴姫と一緒ならば何でもいい。


 「宗ちゃん、旅行は好き?」

 

 冴姫に聞かれた。


 「え、あー、どうだろう。あんまり旅行って行ったこと無いな」

 「そうなの?」

 「家族旅行とかは無い。修学旅行とかくらいだなぁ」

 「へぇー」

 「あ、旅行っていうか、お父様や周一郎兄によくあちこちの子供たちに会うようにされたな」

 「!」


 冴姫がちょっと驚いた顔を一瞬して、すぐに笑顔に戻った。


 「今思うとヘンな旅行だったかな。どこかの施設だったり、何かの良く知らない集まりだったり。突然連れてかれてさ、子供たちに会うの。あ、子供が多かったけど俺より年上とか大人たちの集まりもあったかな」

 「へー、なんだろうね」

 「な、おかしいだろ? 当時は俺も子供だったから理由もよく考えて無くてさ。ほら、俺って友達少なかったじゃん」

 「アハハハハハハ!」

 「結構楽しんでた」

 「アハハハハハハ!」


 俺はずっと前から《トリポッド》に監視され、俺に近付く人間を限定されていたことがこの前分かった。


 「そんなに笑うなよ! だからさ、俺は他の子供に会うのは楽しかったんだ。一緒に遊んだりする程度だけど。ああ、ちょっと年下の子供たちの施設に行ったのはよく覚えてる」

 「宗ちゃん、なにそれ?」

 「うーん、分かんない。周一郎兄に連れて行かれたんだ。親のいない子供たちだって説明された。3日くらいいたかなー。みんなカワイかったよ」

 「そうなんだ」

 「あ、でもさ、印象だけで具体的なことはよく覚えていないんだ。不思議だな」

 「そうだね」


 冴姫が何か呟いたが聞こえなかった。


 「え、処理が何?」

 「そんなこと言ってないよ。宗ちゃん、紅茶が飲みたいな」

 「おけー」


 俺たちは紅茶を飲んで解散した。

 俺は自分の部屋でPCでパラオのことを調べた。

 美しい天国のような場所だと思った。

 明日冴姫にも見せてやろう。


 本当に楽しみだった。

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