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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
人類最強

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《仁王会》処分

 銀座の激戦の翌日、周一郎兄貴に呼ばれた。

 事前に仁桜姉が俺を誘拐しようとした件についての話だと教えられていた。

 姉貴はあれ以来姿を見ていない。

 あの日、周一郎兄貴が寄越したと思える黒い戦闘服の一団に厳重に拘束されて、仁桜姉と千堂さんは連れて行かれたのだ。

 冴姫から、その集団が《裏鬼》というものだと後から教えられた。

 自衛隊の中でも桁違いに戦闘力の高い部隊で、極秘任務に就いている周一郎兄貴の懐刀なのだそうだ。

 全員が海外での戦闘経験を積んでいて、そのことで日本の軍隊であることは極秘に知れ渡っている。

 万一国民が知れば大騒ぎになるのだろう。


 いつものように冴姫と一緒に行く。

 冴姫はいつものラフな格好ではなく、珍しく濃い紺色のスーツ姿だった。

 俺もそれを見てスーツに着替えて来た。

 兄貴の部屋には兄貴と闇絵さん、そして来栖君がいた。

 来栖君は全身に包帯を巻いていたが、俺の顔を見ると嬉しそうに笑ってギプスをした右手を挙げる。

 顔も右半面が包帯で覆われ、見えている部分も黒く鬱血していて痛そうだ。

 そんな姿だが、長袖Tシャツは『まどマギ』だった……


 「来栖君! 大丈夫なの!」

 「へーきっす! 仁桜さんも手加減してくれましたっすから」


 やっぱり仁桜姉に新宿駅でやられたんだ。

 来栖君の叫びが聞こえたのは、幻聴ではなかった。

 俺を護衛してくれていたんでやられたのだ。

 あの来栖君をここまであしらえるのは、仁桜姉貴が超強いからだ。

 来栖君には本当に悪いことをしてしまった。

 俺なんかの護衛についていたがために。


 「仁桜姉がゴメン! 本当に申し訳ないことをしたね」

 「いいっすよ。あの人に負ける自分が悪いっすから。自分こそ宗三さんを御守りできなくて申し訳ないっす!」

 「そうだぞ来栖! てめぇ宗ちゃんを任せたのに軽くやられやがって!」

 「うるせぇぞ、ケバ女! そもそもてめぇが騙されてのこのこガードを外れたせいだろうがぁ!」

 「だからお前に頼んだんだろう! まったく役に立たねぇ奴だ!」


 「黙れ、二人とも!」


 兄貴が一喝して二人は黙った。

 まったく顔を合わせればこの二人はいがみ合うのだ。


 「兄貴、ココロちゃんは?」

 「ああ無事だ」


 冴姫が顔を背けた。

 来栖君もだ。

 ココロちゃんも近くにいたのではないかと思っていたが、違ったか。

 まあ、ココロちゃんが無事だったのは良かった。


 「怪我はしてないか!」

 「大丈夫だ。今もお前の周辺を見張ってる。姿は見せないだろうが無事だよ」

 「そうか、よかったぁー! あの時ココロちゃんも近くにいたんじゃないのか?」

 「まあそうだが、仁桜がいたからな。お前が傷つけられるわけもないので、離れていたのだ」

 「そうかぁ! 俺、心配してたんだよ」

 「ココロは《忍び》だ、お前は気にするな。まあ、その話はここまでだ。座ってくれ」


 何か兄貴の物言いに違和感を感じたが、それ以上は聞かなかった。

 ココロちゃんはこの前も銃で撃たれた上に爆発したと見えて、実は元気だったからだ。

 俺と冴姫はソファに座り、周一郎兄貴も前に腰掛けた。

 闇絵さんと来栖君はまた兄貴の後ろで立っている。


 「仁桜があそこまで強硬手段に出るとは思わなかった。以前にきつく言い聞かせたんだがな」

 「以前って?」

 「お前がまだ《特異点》と決まっていなかった時期にな。冴姫とお前のガードを賭けて勝負したんだ。冴姫が勝って仁桜は身を退くことになったのだが」

 「あの姉貴が身を退く? あり得ないだろう」

 「お前の言う通りだ。俺もそう思っていた」


 兄貴が薄く笑った。

 兄貴が仁桜姉のことを見誤ることは無い。

 仁桜姉は、昔から自分が決めたことは必ず通す人間だ。


 「それでもきちんと約束したのだがな。今回それを反故にしたということは、それなりの罰則が適用される」

 「罰則?」


 違約金などではないだろうと思った。


 「そうだ。仁桜と《仁王会》は今後冴姫の下に就くことになる。冴姫の命令でどのようなことにも従わねばならない。実質、《仁王会》は一度解体する。冴姫をトップに据えて扱いやすいように改変されるだろう」

 「おい兄貴、あの仁桜姉がそれを許すと思うのか?」

 「お前の言うことは分かる。仁桜は誰にも従わない人間だからな。でも今回は脳にチップを入れてもらう」

 「なんだって!」


 とんでもないことを兄貴が口にした。


 「命令に反すれば電子的な制御で逆らえなくなる。自由意志は最初は維持するが、反抗が度重なれば自然に洗脳していく。我々はそういう技術を持っているのだ。仁桜ほどの人間を御するには、もはやそれしかない」

 「おい、そんな非道なことをするのかよ!」


 俺が激高したので、隣の冴姫が俺の腕を持って「落ち着け」と言った。

 でも俺は止まるはずも無い。

 仁桜姉のことなのだ!


 「仕方がないことだ。そうでなければ仁桜を大人しくさせることは出来ない。それにそのことは仁桜も納得しているのだ」

 「ダメだ! おい、周一郎兄貴、やめてくれよ! 頼むよ!」

 「宗三、ダメだ。《トリポッド》の上の決定でもある。誰も逆らえない」

 「兄貴、絶対ダメだ! 俺は許さないぞ!」


 自分でそう口に出して置いて、俺が許さないことが何の抵抗にもならないと分かっていた。

 《トリポッド》は日本の裏面で支配し国家を動かしている巨大な組織だ。

 その決定を何も知らない俺が覆せるわけもないのだ。

 それでも俺は絶対に許してはならないと思っていた。

 あの仁桜姉に酷いことをするのを容認するわけには行かないのだ。

 何も出来ないと理解してはいた。

 だが予想外に兄貴が言った。


 「お前が許さないって?」


 あの常に冷静沈着な兄貴が動揺しているように見えた。


 「あ、ああ、そうだよ! 絶対に許さないぞ! どんなことをしても俺は仁桜姉に……」

 「待て、宗三! 今の言葉は取り消せ!」

 「なに?」

 「宗ちゃん! あ、周一郎さん、宗ちゃんの目が!」

 「!」


 周一郎兄貴と冴姫の様子が明らかにおかしかった。




 俺がどうしたって?

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