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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
人類最強

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36/82

《仁王会》始動

 姐御が戻って来られた。

 ここは《仁王会PMC》の東京のカバー企業のビルの中だ。

 表向きは不動産会社であり、もちろんその活動もしている。

 むしろ中堅以上の商売実績を上げており、誰もその裏に傭兵派遣会社があるとは想像もしないだろう。

 新宿の高層ビルの中に入っている。

 他にも国内にも国外にも幾つものフロント企業がある。

 全て実体のあるもので、概ね優良な企業実績があるために、《仁王会》との関連は知られていない。


 「千堂、宗三と冴姫のことは調べが付いたか?」

 「はい、凡そは。やはり姐御のお考えのように、宗三様が《特異点》として確定したのだと思われます」

 「それしかないよな。一番恐れていた通りになりやがった」

 「冴姫さんが宗三様の所へ行ったのは4月7日のようです。そこから一緒に住み始めて今日まで。カバーでしょうが、一応「和田商事」という優秀な商社に二人とも勤めてます。「和田商事」は《トリポッド》の息の掛かった会社のようです。もちろん外国の組織には《特異点》のことは漏れていませんが、今後影響が大きくなればどうなるかは」

 「ああ、《特異点》は世界線を加速させる。本人の意志の有無に関わらずな。そのうちに宗三の存在に気付く者が出るかもしれない」

 「だから姐御が保護しようとなさってるんですね」

 「そうだ。あたしなら宗三を一生安全に匿える。あんな無防備に晒しながらなんて危険極まりない」

 「はい、おっしゃる通りですが」


 仁桜様は普段は「姐御」と呼ばれ、指揮系統上の上下関係を悟らせないようになさっている。

 だが、もはや世界の軍事業界では《仁王会》の存在は有名であり、ひと際仁桜様の剣技の威力は伝説ともなっている。

 現代の最新鋭の重火器や兵器を相手に刀一本で殲滅する仁桜様は、戦場での奇跡なのだ。

 銃よりも正確無比に敵を斃し、爆撃以上の威力で広域殲滅をし、分厚い装甲の戦車を両断し、音速を超える速さの戦闘機を破壊し、超高度を飛ぶ爆撃機を粉砕する。

 特に愛刀《夜刀神》を仁桜様が手にした時、驚異的な破壊力を生む。

 恐らく大国の軍隊全てを相手に渡り合える戦闘力を有しているのが仁桜様なのだ。

 そして、仁桜様が《仁王会》』を設立したのも戦場で戦闘力を磨き上げたのも、全て弟・宗三様を守るためだと聞いている。

 将来宗三様を巡って多くの敵を抱えることになることを予見し、逸早く宗三様を守れる戦力と体制を整えるために仁桜様は《仁王会》を立ち上げられた。

 何故宗三様が狙われるようになるのかは、我々も話されてはいなかったが、後に副官の私にだけは《特異点》ということだと教えてもらった。

 我々にとって仁桜様は絶対だが、私には更に特別だ。

 戦場で無慈悲に唯々全てを圧倒的に破壊する仁桜様を崇拝していた。

 あのような純粋で美しい方を他に知らない。

 私以外の者たちも服従を誓うだけではなく、全身全霊でお仕えするお方なのだ。

 心酔という程度では足りないほどに、全員が仁桜様をお慕いしている。

 それだけのカリスマを持っておられるお方だ。

 仁桜様の前で命を散らすことが我々の誉れなのだ。

 私自身はそのことに於いて筆頭だと自負している。


 「おい千堂、冴姫から宗三を奪い取る。作戦を立てろ」

 「ですが《特異点》を誘拐すれば《トリポッド》も黙ってないんじゃ」

 「《仁王会》と正面切って争うってんならそれでもいい。実力を示せば向こうも黙るさ」

 「そうですね」

 「もう何も言うな。あたしが決めたことだぞ」

 「アイサー!」


 そうだ。

 仁桜様が求めていらっしゃるという一点だけが全てなのだ。

 誘拐などは何度もこなしている任務だ。

 しかし相手が冴姫さんであることが大問題だった。

 冴姫さんの全貌は不明なれど、恐ろしく強大な戦力を有していることは確実だった。

 おそらく最新の兵装の一個大隊と渡り合えるくらいは強く、我々が把握していない超絶の戦力を持っていることは分かっている。

 それが一体どのようなものなのかは不明だが。

 さしもの仁桜様も、以前に一敗地に塗れている。

 仁桜様の唯一の敗退だ。

 だが、あれから仁桜様も途轍もなくお強くなった。

 だが冴姫さんも《能力者》と呼ばれる、日本の決戦兵器の一人だ。

 核を上回る戦力を日本が求めて来た成果だ。

 仁桜様の兄上の「自衛隊特戦群」の周一郎様は御存知だと思われるが、妹とはいえ仁桜様に情報を明かすことはないだろう。

 ただ仁桜様も裏社会に通じているし、《トリポッド》にも関わっているので情報の一端は持っている。

 《特異点》、《能力者》の存在は世界中で恐ろしく少ない人間だけが知っている。

 その全容を知っている者は、果たして何人いることか。

 アメリカやロシア、中国などでも《特異点》のことは知っている人間がいるようだが、それらの国の中でも超極秘になっているだろう。

 万一《特異点》の存在を殺されればその国が崩壊すると言われている。


 しかし《特異点》としてのそういうことに関係なく、仁桜様は弟の宗三様を溺愛しておられる。

 鬼のような戦神だが、世界でただ一人だけ大切に思っているお方だ。

 だが4年前にモザンビークで宗三さんを巡って冴姫さんと戦って敗れている。

 あの仁桜様が負けることなんてあり得ないことだった。

 あの時、冴姫さんはまだ13歳だった。

 しかも《夜刀神》を持った仁桜様を圧倒したのだ。

 私はもう一つの情報を付け加えた。


 「アメリカが本格的に《ヴァーミリオン》を派遣したようです」

 「ほう、随分と恨まれたな」

 「そうですね。一応油断はしないで下さい」

 「当然だ。でも今は《ヴァーミリオン》よりも冴姫だ」

 「はい」


 仁桜様は強敵ヴァーミリオンのことよりも、今は一つのことに夢中のようだった。


 「さっき改めて冴姫を試した」

 「はい」

 「あいつ、更に強くなっていやがった」

 「そうですか」


 仁桜様が笑った。


 「千堂、だが今度は負けねぇ」

 「はい!」


 私は宗三様誘拐の計画を立てた。

 仁桜様が満足そうにうなずき、笑われた。

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