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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
人類最強

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34/82

ナムリ高原 《ドール部隊》戦

 ナムリ高原で《ドール部隊》は万全の態勢で待ち構えていた。

 あたしが密かに連中に攻撃を受けるという情報を流していた。

 アメリカの強襲部隊が向かっていると。

 だから十分な準備をしているはずだった。

 周囲を見渡し、戦場の勘で森林の多い地帯で連中が分散してアンブッシュ(※待ち伏せ)を仕掛けているのが分かる。

 冴姫には何も状況を知らせなかった。

 《ドール部隊》のこともだ。

 その情報はあたしが特別なルートで掴んだものだ。

 《トリポッド》や周一郎兄貴が掴んでいるかは知らない。

 戦闘の合図すらもしないつもりだった。

 この戦闘で冴姫は死ぬ、それは決定事項だ。

 《ドール部隊》に殺されるか、それとも……

 戦場の経験の浅い冴姫が敵戦力を何も聞かされずにどれほど持ち堪えるのか。

 13歳というガキには無理なことだ。

 その証拠に、冴姫はあたしに敵のことや戦力、状況を何も聞いて来ない。

 そこからが「ガキ」なのだ。

 もちろんあたしも正直に教えてやろうとは考えていなかったが。


 しかし、ハンヴィを停めた瞬間に、助手席の冴姫が何も言わずにドアから飛び出した。

 あたしに一言もねぇ!


 「あいつぅ!」


 あたしも《夜刀神》を持って飛び出す。

 もうなりふり構うつもりはなかった。

 敵の隠れている森林を向いた。

 気配感知で私には敵の位置が分かる。

 その瞬間、空中の銀色の飛翔体から幾つもの光の矢が降って来た。

 あれが冴姫だろう。

 その初撃で《ドール部隊》が壊滅するのは分かっていた。

 冴姫が放った光の矢が、全てあたしの感知した位置に降り注いで行ったからだ。

 あたしはその銀色に向かって剣技を放った。

 最初から敵よりも冴姫をぶっ殺すつもりだった。



 《連山》



 空間を無数の斬撃が向かう。

 銀色は高速で離脱し、私は追い掛けて更に《連山》を撃つ。

 銀色は今度は一層の高速で回避し、姿を追えなかった。

 まあ、そうやって相手の反応を見ながら小出しにしていく所がガキなのだ。

 あたしに向かって反撃すらしない。

 攻撃されて戸惑っていやがるのか。

 バカめ。


 

 《煉獄》



 周囲500メートル一帯を斬撃で満たす技だ。

 その範囲内のどこにいようとも切り刻まれる。

 冴姫は自分が高速機動で回避したつもりでいるので、それを無効にする技を放ったのだ。

 突然あたしの身体が吹っ飛んだ。

 気配も何も無い。

 あたしは戦闘が始まってからずっと全ての気配を把握していた。

 だから冴姫が空中で《ドール部隊》への攻撃を始めたことも瞬時に分かっていたのだ。

 冴姫はそこから敵の位置を正確に把握して光の矢を撃ち込んで全滅させた。

 やはりあいつにも敵を把握する能力があった。

 あたしはその隙を衝くつもりで《連山》を撃ったのだが回避されたのだ。

 あたしを味方と思っている甘ちゃんのアホウには本来は不可能なことだ。

 しかしそれも予測した上での今の《煉獄》だったはずだ。

 どこにも隠れる場所は無い技で、どうして冴姫は無数の斬撃を防いだばかりか、あたしを攻撃出来た!

 しかも全く冴姫の反撃を受ける準備も無く、このあたしが無様に吹っ飛んだ。

 どうやってあいつは周囲にばら撒いた無数の斬撃を全部回避したっていうのか!

 

 「てっめぇ……」


 呼吸が出来ない。

 衝撃のショックで交感神経が暴走している。

 あたしがこれほどのダメージを受けたのはガキの頃以来だ。

 冴姫に気付かれないように《絶花》で体内の気を整えた。

 今、冴姫が連撃してくればあたしは死ぬ。

 何とか回復までの僅かな時間を稼がなければ。

 このあたしが何てザマだ。


 「冴姫、どうして……」


 呼吸が出来ずにいるように冴姫に見せた。

 でももう《絶花》で呼吸自体は整っている。

 だが交感神経の暴走で乱れた身体を落ち着かせねばならない。

 もう少し会話で時間を稼ぐのだ。


 「仁桜さん、あなたの負けですよ」

 「驚いた。そうだ、お前はアレなんだろう?」


 倒置法の会話で冴姫の興味を誘った。

 仮の結論を先に口にすることで、相手にその情報を求めさせる会話法だ。

 冴姫はあたしの言葉の真意を探ろうと、今目まぐるしく思考を回転させているはず。

 あたしが何を言おうとしているのか聞かずにはいられないように誘導させたのだ。


 「なんですか?」


 引っ掛かりやがった。

 時間を稼いだ。

 《夜刀神》の力を解放した。



 《星墜》



 瞬時に周囲にプラズマの嵐が吹き荒れる。

 あたしだけがプラズマの結界の中にいて、相殺されて影響を受けないが、周囲5キロは2億度の超高熱に満たされる。

 仮に音速で逃げたとしても間に合わない。

 マッハは秒速340メートルだ。

 あたしは結界の中で大笑いしていた。

 次の瞬間、私はまた吹っ飛ばされた。

 今度は意識を喪った。





 気が付くと船のベッドで寝かされていた。

 乗って来た外洋クルーザーのあたしの部屋だ。

 副官の千堂がいた。

 目覚めた瞬間に、脳は明晰になっている。

 あたしはそういう鍛錬を積んだ。


 「おい」

 「はい」

 「何があったか言え」

 「はい、冴姫さんが姉御を抱えて来ました」

 「そうか」

 「右大腿骨の開放骨折と右の鎖骨の骨折、右腎臓に内出血。全て処置済みです」

 「分かった。冴姫は?」

 「甲板に仁桜さんを放り出して帰りました」

 「お前ら黙って返したのか」

 「はい。姐御の治療が優先でしたので」

 「ビビったんだろう」

 「そりゃもう。姐御がやられたんですから」

 「このヤロウ」

 「食事の用意をします。食べられますね」

 「ガンガン食べる」

 「はい」


 「ガンガンって」と呟いて歩き出した千堂を呼び止めた。


 「おい!」

 「はい!」


 常に冷静な千堂が珍しく慌てて振り向く。


 「冴姫は負傷していなかったか?」

 「いえ、あ、ああ! 髪が全部燃えてましたよ」

 「なに?」

 「ほとんど燃えて、残ったのは縮れた毛が少し」

 「お前、笑ってやったか?」

 「まさか、とんでもない」


 「ワハハハハハハハハハ!」


 あたしが笑ってやった。

 あの綺麗なガキがブサイクになって嬉しかった。

 あまりに笑うと腰が痛んだ。

 だから笑うのをやめた。

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