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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
人類最強

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モザンビーク 仁桜と冴姫

 周一郎兄貴の言った通り、あたしの「仁王会PMC」にモザンビークの天然ガスを確保する仕事の依頼が来た。

 日本の大手企業が新たに発見された大規模な天然ガス田の開発を落札したが、他国から妨害工作が入るということだった。

 そいつらの排除ということだ。

 周一郎兄貴を通しての《トリポッド》の依頼であり、冴姫という《能力者》も同行すると言われた。

 あたしが宗三を引き取ると言うと、周一郎兄貴が《能力者》に護衛させると言ったことが原因だ。

 あたしが反発すると、自分で実力を試せと言われた。

 面白い。

 周一郎兄貴から、冴姫が《超次元格納》を使う稀有な《能力者》だと聞いた。

 そして数々の兵器をそこへ格納し、自在に扱うのだと。

 《超次元格納》については、あたしも奇跡的に開発に成功したことは知っている。

 しかし、それを扱える因子を持った人間がいないと聞いていたのだが、ついに見つかったようだ。

 何のことも無い。

 どんな超兵器を使おうが、あたしの剣の方が速い。


 副官の千堂があらためてモザンビークを巡る情勢について詳細に調べて来た。

 プラント建設に日本の中央建設が関わり、その他に四井物産が化学事業に関わっている。

 随分と金をばら撒いたそうで、《トリポッド》が介入しての落札だったのだろう。

 他にはアメリカの企業が参画しているようだ。

 これからの世界はエネルギー資源が不足することが明白で、現在は逸早くそれに先鞭を付けようとする動きが出始めている。

 石油資源があらかた見つかっている中で、天然ガスは今も新たに発見が続いている。

 化石燃料の最後の希望と言われているものだ。

 モザンビークは政情が不安定な国の多いアフリカ諸国の中でも、内戦が特に長く続いた国だ。

 だから傭兵業界では有名な稼ぎの多い鉄火場だった。

 あたしたちが傭兵として活動をした頃には随分と下火にはなっていたが。

 中央建設の協力で、あたしたちは船で武器と人員を運び込むことが出来た。

 巧妙に武装を隠した大型海洋クルーザーだ。

 武器も弾薬も十分に積み込んで来た。

 周一郎兄貴からの連絡で、冴姫はあたしたちの到着と同時に合流すると言われていた。

 時間も場所も指定は無かった。

 どうでもよかった。


 「仁桜さんですよね。冴姫です」

 「……」


 私たちが荷下ろしをしていると、年端も行かない少女に声を掛けられた。

 半袖のカーキ色の綿のシャツに黒の綿のパンツ。

 荷物は無く、どうやってここまで来たのかも分からない。

 アフリカでも治安の悪いこの場所に、一人で飛行機を乗り継いで来たのか。

 そして私の周囲には精鋭が8人いたが、誰も少女の接近に気付かなかった。

 私を除いて。


 「あんたが冴姫?」

 「はい」

 「幾つ?」

 「13歳です」

 「ふーん」


 その通りの身体だった。

 中学1,2年生だ。

 まあ、学校には通っていないだろうが。

 身長は155センチで全体に細身だが胸は生意気にこれからでかくなりそうだ。

 面はまだ色気は無いが恐ろしく美しい。

 髪は首の上で切り揃えている。

 一般的には可愛らしいはずなのだが、全体に纏う雰囲気は血なまぐさく恐ろしく暗い。

 私には冴姫が幾つもの鉄火場を渡り歩いたことがすぐに分かった。

 幼さは一切感じさせず、冷たい印象が際立っている。


 ヤル奴だ。


 「兄貴からあんたのことを確かめろって言われた」

 「はい、私も仁桜さんに証明して来いと言われています」

 「じゃあ宜しくな」

 

 笑顔で左手を差し出し、右手で日本刀の抜き打ちを浴びせた。

 冴姫を両断するつもりだった。


 

 カキィン……



 あたしの刀身が折れて地面に落ちた。

 冴姫が右手に金属の籠手を嵌め日本刀を受け止めたのだ。

 冴姫は無表情で何事も無かったかのように左手で握手をして来た。


 「宜しくお願いします、仁桜さん」


 冴姫がニッコリと微笑んだ。

 このヤロウ……






 ナムリ高原にイタリアの《ドール部隊》がいることが分かっていた。

 周一郎兄貴からは敵勢力の排除と言われていたので、そいつらをぶっ潰せば完了だ。

 《ドール部隊》は薬品で強化改造された人間たちの部隊だ。

 まだ開発中とはいえ、常人の5倍の筋力を持ち、反応速度も3倍程度になっている。

 それが銃火器の訓練を受けている超人部隊だ。

 ただし劣化が激しく、まだ10年を超えて活動している個体は無い。

 イタリア以外の中東の国々の連中は通常の特殊部隊のようなので、部下たちに任せ、街中の拠点を潰させることにした。

 拠点の場所は全て千堂が把握している。

 あたしが鍛え上げた精鋭を連れて来ているので、どこの特殊部隊も噛み砕ける実力がある。

 私は冴姫を連れて二人だけでハンヴィーに乗り、ナムリ高原へ向かった。


 「あんたとあたしでどっちが多くの敵を殺すのか競争だ」

 「分かりました」


 そういう説明を冴姫にはした。

 撃破数で勝負を決めるという話に冴姫には伝わっただろう。

 バカが。 

 冴姫の戦闘力は未知だ。

 最初に会った時に相当な奴だということは分かっている。

 あたしの本気の虎徹の斬撃をあっさりといなした。

 もちろんあたしもまだ「剣技」は使っていない。

 あれで死ぬのならば語るに当たらない奴なのだ。

 冴姫の使う《超次元収納》の反応の速さは確認した。

 一瞬で出現させる。

 しかも籠手を装着までさせていた。

 恐らく全身を覆う鎧であっても同じ速さなのだろう。

 その他に、あたしが知らない超兵器も格納しているに違いない。

 《トリポッド》の研究所がとんでもないものを開発していることは聞いてはいる。

 各国もそれなりの兵器開発はもちろんしているが、レールガンやレーザー砲などかせいぜいがその延長に過ぎない。

 しかし《トリポッド》は想像を絶する兵器を開発したらしい。

 なんでも量子力学を応用したもので、量子コンピューターは東大の古田教授が光子量子コンピューターを開発しているのは知っているが、他に量子兵器の天才が二人いるそうだ。

 冴姫の《超次元格納》もその技術の一つだとは知っている。

 だが所詮は兵器の力に過ぎない。

 あたしの剣技はそれを凌駕する自信がある。

 それに相手はガキだ。

 そこそこ強いのは確認したが、ガキの思考で戦場でどれほどのことが出来るのか。

 そしてあたしは今日は《夜刀神》を持って来ている。


 「なあ」

 「なんですか」

 「この勝負に宗三が懸かってるのは知ってるんだろうな」

 「はい、周一郎さんから言われてます」

 「ほう、それで兄貴は何だって?」

 「仁桜さんをボコれと」

 「あ?」


 「ワハハハハハハハハハ!」


 あたしは大笑いした。

 心底からおかしかった。

 このガキは本当に面白い。

 あたしを目の前にして少しもビビることがねぇ。


 「宗三はあたしのもんだ」

 「そうですか」

 「お前は宗三のことを何も知らんだろう?」

 「大好きです」

 「あ?」


 今度は笑えなかった。

 ガキが一端の「女の顔」をしていやがった。






 こいつを殺す。

 本気でそう思った。

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