Santa Cruz : 聖十字
宗三さんにお会い出来て、本当に嬉しかった。
あの日以来、自分らはみんな宗三さんのことを思って来た。
宗三さんの優しさに触れ、みんなが変わった。
本当に空虚な、何の希望も無い日々がまるで違ったものにあった。
全員が自分の存在意義を見出したのだ。
自分らは、宗三さんのために生きる。
いつか宗三さんのために戦い守る人間になりたいと思った。
そういう生きる核を宗三さんに頂けたのだ。
核が出来るということが、どういうことなのかを知った。
生きるということがどういうことなのかが分かった。
辛い改造も訓練も、何のことも無くなった。
宗三さんのために、どんなことも受け入れ強くなって行く喜びになった。
いつの日か宗三さんのお傍で宗三さんを御守りしたいと全員が思っていた。
ほとんど宗三さんが《特異点》なのだと分かり、みんなそうに違いないと思っていたので喜んだ。
そして宗三さんの御近くにいてガードする者が決定された。
冴姫だった。
あいつは《能力者》としては随一の実力であり、反対する者は一人だけだった。
自分だ。
確かに冴姫には能力では劣るが、自分がどうしても宗三さんの御傍にいたかった。
だから冴姫に挑戦した。
しかし、自分がどんなに必死にやっても、冴姫には敵わなかった。
冴姫が自分たちの誰よりも宗三さんのことを思っていたことも分かった。
だからこそ、冴姫は最強にもなったのだ。
まあ、自分らも宗三さんのために動くのだ。
そう自分を納得させるしかなかった。
だから冴姫から一時的に宗三さんの護衛を頼まれた時は狂喜した!
久し振りに会う宗三さんは、以前よりも精悍なお顔になっており、また優しい感じは一層増していた。
一瞬見惚れてしまうほどだった。
今は自分がお傍にいれる喜びで震えていた。
仕掛けて置いた監視カメラに、顔認識整合に引っ掛かった奴がいた。
最初から分かっていた。
秩父の廃品回収工場で本隊2000人近くが集まり、冴姫とココロを迎え撃つ。
同時に別働隊50人がここに向かっていることは掴んでいたのだ。
だから自分がここに残って宗三さんを御守りするのだ。
今、顔認証整合ではじかれた女がこの病室に入って来る。
医者とナースと病院関係者は全員登録されている。
そうでない者がナースに化けて来たのだ。
「検温の時間です」
若いナースだった。
茶髪に染め、そのまま髪を伸ばしている。
看護師は普通は邪魔にならないように髪をまとめるものだ。
手に体温計を持ち、鞄を提げている。
ナースは鞄など持ち歩かない。
下手な演技だ。
「お前、誰っすか?」
「はい?」
「自分、ここの医者と看護師は全部顔を知ってるっす」
「え?」
ナースは戸惑った顔をしながら、鞄に手を伸ばした。
顔が引きつっており、やはり演技の出来ない頭の悪い奴だと思った。
同時に仕掛けた監視カメラが迫って来る集団を捉えていた。
もうナースの偽装がバレて、全員隠すつもりもないようだ。
50人近い人間が武器を手に走って来る。
《Santa Cruz(サンタ・クルス=聖なる十字)》
ナースの身体が四分割される。
血と内臓がぶち撒けられた。
「ヒィ!」
宗三さんが悲鳴を上げた。
「連中、来たようですっす。宗三さん、ちょっとここにいて下さいっす」
「く、来栖君!」
ナースの死骸をそのままに、ドアを閉めた。
この病室は鋼鉄製のドアで、ロックされれば自分以外には開けることは出来ない。
そう事前に改造していた。
階段を駆け上がる音がし、先頭集団が廊下に飛び出して来た。
RPGを構えている。
なかなか強襲のやり方を分かっているようだ。
そいつがRPGごと十字に切り裂かれ、階段に落ちて行く。
自分がすぐに上り口まで移動する。
落ちた奴らと入れ替わりに下にいた奴らが血を浴びながらもFALを向けようとし、同じく十字に分かれて行く。
自分はそのまま前進し、階段に残る連中を斬り刻んで行った。
すぐに階段は血と臓物に溢れて行く。
連中は何が起きているのか理解しないまま、滑りながら逃げ出そうとしていた。
逃がすわけが無い。
階段の壁を蹴って踊り場に立ち、残った連中を視界に入れ、斬り刻む。
3分もかからずに全員を殺した。
「折角宗三さんにお会いするからいいパンツを履いて来たのに」
ディオールの水色のパンツだ。
上は『魔法少女リリカルなのは』のフェイトちゃんのTシャツだ。
階段を上る時に、パンツにどうしても血がこすられた。
一面に血まみれのハラワタがあるので、避けきれない。
上に戻ってトイレでパンツを脱ぎ、水洗いした。
宗三さんのお部屋へ戻る。
「来栖君!」
宗三さんが心配して叫んでくれた。
「大丈夫なの!」
「はい、何でもないっす。もう片付いたっすよ?」
「え、そうなの? あの、この人は?」
「ああ、「関東旧車會」の奴です。ナースに化けて来たんすね」
「そうなんだ!」
そいつの持っていた鞄を開くと、やはりブローニングのハイパワーが入っていた。
旧式の拳銃だが扱いやすい。
「ほんとだ! 俺を殺しに来たのか!」
「大丈夫っすよ、自分がいますんで」
「でも、早く逃げよう! ここは敵に知られているんだよね?」
「はい、宗三さんを乗せた救急車を見張ってた奴らがいましたので。来るのは分かってましたっす」
「そうなのか! じゃあ、急いで逃げないと!」
「まあ、もう片付きましたっす」
「そうなの?」
「はい。でももうここにいる必要はありませんから、帰りましょうか」
「う、うん」
宗三さんはベッドから降りて、分断されたナースの死骸を大回りして廊下に出た。
廊下の奥にまた死骸がある。
「く、来栖君、アレ!」
「ああ、敵っす。もう死んでますっす」
「そりゃそうだろうけど……」
階段まで歩くと、宗三さんが下を見てうずくまった。
後ろから背中をさすって差し上げた。
「酷い光景っしょ? この先の階段で降りるっす」
「……」
宗三さんが動けなくなったので、自分が抱き上げてお運びした。
宗三さんの体重は軽く、自分がお傍にいて美味しい物を食べさせて差し上げたいと思った。
「なんか食べて帰りましょうっす」
「……無理……」
「そうっすか、残念っす」
「……」
下まで降りる間にココロから連絡が来て、秩父も片付いたと聞いた。
こちらの状況も伝えると、市ヶ谷まで来るように言われた。
宗三さんの体温が温かった。
なるべく揺すらないように丁寧に宗三さんの身体をお運びした。




