表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
《虎部隊》

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/112

虎のストラップ

 虎蘭さんがワゴンで皿を持って来た。

 あ、俺の分まであるぞ。

 俺、もうお腹一杯なんだけど……

 でも今更断れないよなー。


 「お口に合えばいいのですが」


 冴姫は無言で箸を持って口に運んだ。


 「美味しい!」


 見た目は海鮮の上海焼きそばだ。

 海老、カニ、ホタテ、揚げた白身魚、玉ねぎ、チンゲン菜、キクラゲ、ニラなどが見える。

 俺も一口食べてみた。

 食材をそれぞれ別に火を通したようで、食材ごとの旨味がはっきりしている。

 それに麺の固さも丁度よく、調味料も完璧だった。

 油もしつこくなく、さっぱりするくらいだった。

 調理法、特に火の通し方の加減がいいのだ。


 「虎蘭さん、本当に美味しいですよ!」


 もう入らないかと思っていたが、これは美味しい。

 美味しい味付けは調味料で出来るが、この焼きそばは食材の美味しさを引き出すものだった。

 中華料理は調味料が前面に出ることが多いが、これは和食の料理に近い。


 「ソウザさんとサキさんに食べていただくものをと考えて作りました」

 「ありがとうございます、一流のシェフのもののようです!」

 「うんうん!」


 冴姫が喜んで、もう食べ切ってしまった。


 「虎蘭、またなんか作ってね!」

 「はい、幾らでも」

 「虎王さんも出来ればまた食べたいです」

 「はい、喜んで」


 冴姫がニコニコしながら話していた。

 冴姫なりに、自分も《虎部隊》を信用するということを表わしたのだろう。

 虎王さんがもう一度お茶を勧めて来たが、もう本当にお腹が一杯だ。

 冴姫はまだ入るのだろうが、ここで食事会は終わりとした。

 改めてお二人に今日の食事のお礼を言って辞した。


 冴姫と駐車場の「ヴァルキリー」に戻ると、虎蘭さんが立っていた。

 悪戯っぽく微笑んでいる。


 「恐れ入りました。私には無理でした」

 「アハハハハハ!」

 「これを虎王からです」


 虎蘭さんは綺麗な封筒を冴姫に手渡した。

 冴姫が開くと、達筆のメッセージが書かれていた。



 〈また是非ご一緒出来ることを願っています〉



 「ワハハハハハハハ!」

 「ウフフフフフ」


 冴姫が満足そうに大笑いし、虎蘭さんも笑っていた。


 「もうここまで対処されるとは思いませんでした」

 「ちょっと本気出したよー!」

 「参りました」

 「でも、そっちもまだまだヤルんでしょ?」

 「さあ、どうでしょうか。あまり意味は無いかと思いますが」

 「そうだね。もうお互いに張り合う関係じゃないよね。普通にやろう」

 「はい!」


 虎蘭さんは一礼して歩いて去った。

 もう途中で消えることもなかった。

 二人で虎蘭さんが見えなくなるまで目で追っていた。


 「さー、じゃあ帰っか」

 「そうだな」


 冴姫がハンドルを握ると、絶叫した。


 「ギャァァァァァーー!」

 「おい、どうした!」


 冴姫が指さした方を見た。

 バックミラーに、虎のストラップが揺れていた。

 ずんぐりとデフォルメした身体で、可愛らしい顔の虎だった、


 「「……」」


 俺の記憶では、乗った時には無かったものだ。

 でも俺は一般人なので冴姫に確認した。


 「さっきは無かったよな?」

 「絶対に無かった。あたしが見逃すはずはねぇ」

 「じゃあ……」


 俺たちが乗り込んでから取り付けたってことかぁー!

 突然、冴姫が叫んだ。

 瞬きする間もなく、でかい拳銃を俺の顔の前で構える。


 「ハハハ、悪戯が過ぎましたね」

 「虎王さん!」


 虎王さんが両手を上に挙げながら立っていた。


 「これ、ストラップのケースです。こちらも可愛らしいので是非お持ち帰り下さい」

 「てっめぇー!」

 「お許し下さい。流石に先ほどまではこの美しいお車には侵入出来ませんでした」

 「なんで毎回やるんだよぉ!」

 「すいません、私は初めてです」

 「テメェ!」

 「ワハハハハハハハ!」


 俺もおかしくて笑った。


 「一応、冴姫さんも我々の能力を確認しておきたかったのではないかと思いまして」

 「そりゃ思ってたけどさー」

 「はい。冴姫さんが張った防御結界のようなものは我々にも突破は難しかったですが、ドアを開けた瞬間に侵入出来ましたことはご覧の通りです」

 「私たちに気付かれずにやったってかぁ」

 「その通りです」

 「突破は難しいって、その気になれば出来んの?」

 「どうでしょうか。その場合、我々も無事では済まないのではないでしょうか」

 「……」


 冴姫が黙り込んだ。

 虎王さんは微笑んだ表情のままだ。

 やがて冴姫も微笑んだ。


 「分かりました。わざわざ試して下さったんですね」

 「はい。友人が確認したがっていましたので」


 虎王さんの言う「友人」とは俺たちのことだろう。


 「ありがとうございます」

 「いいえ、ではまたいずれ」

 「今日はありがとうございました!」

 「宗三さんもお元気で。ではまた」


 俺たちは車を出した。


 「宗ちゃん、やっぱ《虎部隊》はすげぇわ」

 「冴姫が感知出来ないんだもんな」

 「いや、感知はしてたわ」

 「え?」


 分からないから虎のストラップを結ばれたんじゃないのか?


 「でも、私の顕在意識にまで上って来なかった。あれは何らかの術だな」

 「術?」

 「うん、やっぱり中国の独自の体系があるんだよ。ちょっと調べないとなー」

 「でも虎蘭さんたちは味方だよ?」

 「宗ちゃんは気楽だからなー」

 「え、大丈夫だよ」


 冴姫が振り向いて笑った。


 「まー、私は宗ちゃんが楽しけりゃそれでいいし」

 「アハハハハハ!」


 「中国は歴史が古いよね」

 「4000年だっけか?」

 「うん、鉄の発見も西洋よりも1000年は早いんだってさ」

 「すごいね」

 「ジョセフ・ニーダムを前に読んだ」

 「宗ちゃん、結構いろいろ読んでるよね?」

 「うん、本は好きだから」

 「那智も読んでたなー」

 「そうなんだ! 今度話してみたいな」

 「あいつも喜ぶよ」

 「うん」


 もうマンションに着く。


 「冴姫、ちょっと思ったんだけどさ」

 「え、なーに?」

 「中国は陰陽五行の体系があるじゃん」

 「あー、あたしはその辺はダメ、分かんない」

 「そっか。あのね、物事や事象、物質なんかもどこまでも仕分け出来る体系って思ってよ」

 「うーん、まあオッケ」

 「西洋科学でも分子や原子のことは分かったわけじゃない」

 「うん」

 「でもその先に量子の世界があったよね」

 「まあね」

 「中国の陰陽五行もそうだったんじゃないかな?」

 「!」


 冴姫がブレーキを踏んで停まった。


 「おい、大丈夫か?」

 「宗ちゃん、今のどういうこと!」

 「いや、だからさ。科学でも量子力学って全く今までの常識が通用しなかっただろ? 同じように、一定の中国的な仕分けの向こうにもとんでもない世界があるとかさ……おい、冴姫、どこ行くんだ!」


 冴姫が急発進した。


 「もう今の宗ちゃんの言葉は周一郎さんには伝わってるはず! 《ドラゴン・システム》が絶対に解析してる!」

 「おい、なんだよ!」

 「また宗ちゃんがやったぁー! どうしてこんなに次々にぃ!」

 「なんなんだぁー!」


 冴姫が何かの通信を受けた。

 冴姫は超次元に様々な装置を収蔵しており、それらと常に繋がっているらしい。

 だから特殊な索敵能力や防衛が実現しているそうだ。


 「今、《ドラゴン・システム》から連絡来たぁー!」

 「なんだって?」

 「当然、「すぐ来い!」だよ!」

 「ワハハハハハハハ!」


 なんだか分からんが笑った。

 冴姫も笑った。


 「アハハハハハ!」


 もちろん、行先は周一郎兄貴の所だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ