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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
《虎部隊》

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109/115

《虎部隊》とお食事

 9月中旬の土曜日。

 最初は虎蘭さんが迎えに来ることになっていたが、冴姫が自分で車を出すと言って断った。

 虎蘭さんからの連絡で、赤坂の中華料理店を案内された。

 調べると、有名な一流中華料理のお店だ。

 前回のこともあり、冴姫も俺も楽しみにしていた。

 もう虎蘭さんのことで冴姫にも緊張は然程無い。

 冴姫が新しい車アストンマーティンの「ヴァルキリー」を出した。

 俺も初めて見る。


 「これもカッコイイな!」

 「うん。でも今回はこいつの特別仕様がどうなのかだね」

 「え?」

 「一応、前回よりも侵入が断然しにくくなってる。これも突破されると厄介ね」

 「そ、そうなんだ」


 別に張り合わなくてもいいのに。

 でも冴姫にとっては重要なことなんだろうなー。

 俺なんて、常に監視され、お風呂も(トイレも?)多分録画されてんだぜ?

 言うと冴姫の機嫌が悪くなりそうだったので黙ってた。

 お店の近くまで来て、駐車場に車を入れた。


 「お待ちしてました!」


 虎蘭さんが入り口で待っていてくれた。

 今日は赤のシルクの美しいチャイナドレスだった。

 腰から覗く綺麗な足が素晴らしい。

 俺は麻混の白のパンツにブルーのシルク混のシャツに水色のネクタイ、冴姫は薄い水色の麻のパンツに白のシャツとグリーンのネクタイを締めている。

 上着は暑いので勘弁してもらった。


 中へ入ると、また誰もいなかった。

 席に案内され、すぐに料理がワゴンで運ばれてくる。

 グリルされた鶏肉と前菜の盛り合わせ。

 それに大きなフカヒレの姿煮だ。

 それよりも、それを運んできた料理人に驚いた。


 「あなたは!」

 「はい、先日は名乗らずに失礼しました」

 「宗ちゃん、知ってるの!」

 「ああ、ココロちゃんと一緒に会った人だよ」

 「あの!」


 冴姫も驚いている。


 「虎王林フーワン・リンです。どうぞ今日は私の拙い料理をお楽しみ下さい」

 「あなたが作ってるんですか!」

 「はい、料理は趣味なもので」

 「父も結構美味しいですよ」

 「「!」」


 驚いたなんてものじゃなかったが、とにかく頂くことにした。

 虎王さんは優しい笑顔で微笑んで会釈して下がって行った。


 「ごめんなさい。騙すようなつもりは無かったのですが、私は止めたんですけど父がどうしてもソウザさんを一目見ておきたいと聞かなくて。今日はちょっと驚かせたいので黙っているように私に言ったのです」

 「そうなんですか、ちょっとお茶目な方ですね」

 「そう言っていただけると」


 冴姫が少し緊張している。

 予想外の展開なので警戒しているのだろう。

 でも、料理を口にすると冴姫もすぐに警戒を解いた。

 恐ろしいほどに美味しいのだ!

 北京ダックと鳩の黄金揚げが来た。

 虎蘭さんが俺たちに取り分けながら、料理の説明もしてくれる。

 先ほどのフカヒレは気仙沼産、鳩は乳鳩というものらしい。

 乳鳩とは成鳥ではなく、生後25日以内の幼い鳩のことだ。

 とにかく全部物凄く美味しい。

 冴姫も少しは警戒はしているのだろうが、夢中で食べている。

 タラバガニのXO醤炒め、干し鮑のソース煮、そして干し魚と鶏肉の炊き込みご飯が来た。

 ココナッツミルクを持って、虎王さんがテーブルに座った。

 コックの帽子も取っている。

 髪をオールバックに撫でつけたダンディな方だ。

 そういえば、先日ラーメン屋でお会いした時のお顔の印象が無い。

 今日、初めて見たような気がするので不思議だ。

 なんだか優しい印象だけは残っているのだが。

 でもきっと、そういう方なのだろう。

 印象を操作する能力だ。

 その高度なものは人間の感覚はおろか、機械などにも記録されないほどなのだ。


 「宗三さんにお会いしたかった。そして思いがけず冴姫さんにもお会い出来た」

 「宗ちゃんのことを知ってるんですか?」

 「はい、運命を回転させる方であり、日本では《特異点》と認識される方と。そして最も重要なことは、宗三さんは大変お優しい方だということです」

 「あなた、何を言っているの?」

 「宗三さんの能力にも関わることなのでしょうが、宗三さんはどこまでもお優しい。だからこそ宗三さんに関わった人間は運命を激しく回転させるのでしょう」

 「どういうことですか?」


 冴姫の口調が改まっている。

 俺はといえば、恥ずかしくてしょうがなかった。


 「中国では陰陽五行を中心とした考え方が古来よりあります。この宇宙の全てのことを解き明かせる体系と私は信じております」

 「そうなんですか」

 「その修行を極めた者が我々の中にはおります。西洋的に言えば、予言者と呼ばれるものに相当するでしょう」

 「未来を見るってことですか?」

 「正しくは違います。ですが、物事を深く見通す力があると言っておきましょう。その者が日本にとんでもない人間が現われたと言いました。その方は多くの人間と触れ合うことで、それらの人間の運命を回転させると。そしてその方は日本ばかりではなく、世界的にその能力を発揮出来るのだと」

 「それが宗ちゃんだと言うんですか?」

 「そうです。もちろん我々も懸命にその方を探しました。日本でもその方の存在に気付いており、相当深く隠されていましたが、ついに我々も発見した」

 「いつ頃か聞いても?」

 「8年前には予想を。そして4年前に確信しました。以来、我々は宗三さんのことを見守り、時には危険を排除致しました」

 「宗ちゃんに危険があったのですか?」

 「何度か。ロシアの《ボルーチ・バロータ》とイギリスの《ミディアン騎士団》が宗三さんの周辺を探っていたようでしたので、我々で別な方面に誘導致しました」

 「あなた方は宗ちゃんを《特異点》と知りながら、何もしないのですか?」


 その質問に虎王さんは驚いたような表情を浮かべてすぐに否定した。


 「もちろんです! 宗三さんは日本だけではありません、この世界にとって途轍もなく重要な存在なのです。だから我々も全力で宗三さんのために動きますし、またお守りするつもりです」

 「それを信じろと?」


 冴姫が少しだけ凄み、虎王さんが微笑んだ。


 「それを証明する術はありません。ですから、冴姫さんに信じていただけるまで行動して行くしかありません」

 「そうですか」

 「冴姫、このお二人は大丈夫だよ」

 「宗ちゃんはいつも言うけどなー」

 「本当だよ。俺には分かる」

 「うん」


 冴姫もちょっと笑顔でうなずいた。


 「まー、私もそう思うけどさ。一応私は宗ちゃんの婚約者でガードでもあるからね」

 「冴姫さんは《能力者》ですね。ああ、警戒しないで下さい。我々も何も掴んでいませんから」

 「それはちょっと信じられないけど、まあいいですよ」

 「冴姫さんが非常に強力な力を持っていることは分かります。具体的なことは分からなくとも、敵対したくないとは思っています」

 「私を恐れていると?」

 「はい。冴姫さんが本気で攻撃すれば、恐らく地球上で生き残ることは不可能でしょう」

 「……」

 「我々はそう確信しています。繰り返しますが、具体的なことは何も掴んでいません」

 「それはさっき言った「中国の科学」ですか?」

 「その通りです。冴姫さんの他に幾人か甚大な破壊力を持つ方がいることも分かっています」

 「それを私に教えても?」

 「敵対したくないのです。我々のことを認めて欲しい。我々は中国人です。ですが、中国と日本は敵対すべきではない。共にそれぞれの国を立てながら相手のことも思いやる世界を望んでいます」

 「だから宗ちゃんを害さないと?」

 「その通りです! 我々は宗三さんを大切に思っております。宗三さんこそが、この不安に満ちた世界を新たな時代へ導く方だと確信しているのです」

 「ふん、良く言ったな」


 冴姫が嬉しそうに笑っている。

 冗談じゃないぞー!

 俺は絶対にそんな存在なんかじゃないよ!

 俺はごく普通の一般人だぁ!


 でも三人が俺を見てニコニコしている。

 気の弱い俺も愛想笑いを浮かべた。


 「宗ちゃん、ちょっと卑屈」

 「デェェーー!」

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