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文化祭初日

 今年も文化祭が始まった。

 あてがわれた教室に、「株式投資部」の張り紙をでかでかと扉の上部につけて、来場者を待った。

 出し物は大きく三つ。構成の基本は昨年と変わっていない。


 ひとつめは「株式投資の基本」と書いた模造紙。

 顧問からいの一番に教わった、シンプルかつ最重要の方程式「株価 = EPS × PER」をまとめたもの。去年の内容とあまり変わらない。


 ふたつめは「誰でもぜったい儲かる簡単投資法」と、少々眉唾な題をつけた模造紙。

 こちらも去年と同じように毎月一定額をインデックスファンドに積立投資することを、株式投資部としてオススメした。そして、仮に成人年齢18歳から毎月1万円を60歳まで42年間積立投資したならば、いくらになるかを試算した。

 去年との違いは、社会への提言内容。


 みっつめはゲーム。

 ちょうど8月5日に歴史的な大暴落があったことから、それからどこまで戻ったのかをどの株を買えば一番儲かったかを、三択で選んで貰うクイズ大会。


 在校生だけ参加できる文化祭初日の金曜日は、台風直撃だった去年と違って、残暑厳しい中だった。

 NISAが本格的にはじまったとは言え、株式投資なんてマイナーだし、模造紙に手書きで文字が羅列された部屋を、好きこのんで見たいという生徒など、やっぱりそうそういるはずもなく、セミの合唱が響く教室は閑散としたものだった。


 株価の方程式はアルファベットに拒否感を示された去年の反省から、PERを株価収益率、EPSを一株純利益と、表現を改めた。けれど、拒否反応ばっかりに変わりなく、文章を読んでくれる奇特な生徒は稀であった。


 インデックスファンドに毎月1万円ずつ42年間、積立投資したとすると。

 仮に年平均10%で運用した場合、積立総額12万円 × 42年間 = 504万円が、なんと6,742万円になる!

 どう、すごくない? 元本の13倍以上だよ。

 かわいい人は、そう盛り上げるが、これまた「42年先の話されても」と、去年と概ね同じ反応。

 年平均10%を理解してくれない。家計を考えることのない高校生にとって、利回りなど関心がないのも当然だ。そして、42年という時間は、想像の域をはるかに超える。なにせ、卒業後さえ定かでないのだから。

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