世界人口予想とTOB
「国際会計基準って、全部一緒だと思ってたけど、違ったんだ」
期末試験の終わった部室で、かわいい人が新聞記事を見ながら、声を上げた。
今どき、紙の新聞をばさばさ広げる高校生は、わたしたちぐらいではないかと思うが、顧問は紙媒体にこだわっている。会社四季報もわざわざ本屋まで人数分買いにゆくのも変わらない。
顧問曰く「紙媒体には一覧性がある」
紙面を広げたときに、様々な見出しや記事が目に飛び込んでくる。検索では選ばない記事が意外性とともに現れる。それはデジタルではまだかなわない。本人の見たい記事がレコメンドされれば、結果的に特定の見解ばかりが表示され、偏った視野になる恐れがある。以上が紙媒体をも未だ支持する顧問の意見だ。
ともあれ、お人形のような人が新聞紙を前にする姿にも慣れてしまった。最初見たときは違和感しかなかったのだが。
かわいい人が驚いた記事は、「営業利益のルール統一」だった。
「営業利益が企業によってまちまちだったなんて」
えー、だってそれじゃあ本業でどれだけ稼いでいるか、本当のところがわからないってこと?
国際会計基準の統一は2027年度からだという。これによって、持ち分適用会社の利益を持ち分比率に応じて営業利益に含めることができなくなる。従来、含めていた企業は、営業利益が大きく減るところも出てくるそうだ。
もっとも、国際会計基準を採用する日本の上場企業は、272社にすぎない。
つまり、国際会計基準が統一されても、採用しない企業には及ばないことになる。
「でも、個々の企業で見れば、年ごとに基準をコロコロ変えるわけじゃないだろうから、成長が続くようなら買いってことに変わりないか」
かわいい人はそう言って、紙面から目を離した。
今週、日経平均株価は派手な動きだった。
連日のように最高値を更新した。と思えば、金曜日は一転して1,000円以上下落した。とは言え、額は大きいものの、株価水準が高くなっているので、率にすれば2.5%に満たない。メディアは変動額の大きさを書き立てるものの、率の変化こそ注目すべきだと、先輩は言う。
日経平均株価が下がった理由は、為替が円高に転じたから、だそう。
アメリカFRB議長がアメリカ景気を「もはや過熱していない」と述べ、9月利下げを探る時期に入ったと示唆したことが、日米金利差縮小を想起させた。そこに日本が大規模な為替介入したようだ。などと説明されたりした。
全体の動きがどうなるは、それはそれで重要なことながら、個別株に投資する上では、あまり気にしすぎることも考えものということは、わたしが1年少し相場に接して学習したこと。世の中はいろいろ変化する。驚くような事件、事故が起こるし、なぜこんなことになるのかと思うようなことも少なくない。しかし、世の中の動きがどうあれ、逐次対応しつつ成長する企業の株価は、短期では全体の動きに引きずられることはあっても、長期では伸びる。それは10年、20年のチャートを見れば一目瞭然だ。数日で10%上下すれば耳目を集めるものの、10年チャートではその程度の動きはありふれている。ということを意識すべきだと改めて感じる。
今週のニュースで顧問が注目したのは、国連発表の世界人口推計だった。
2080年代に103億人でピークに達し、その後、減少に転じるのだそう。
「この手の予想は、往々にして外れるものではありますが」と言いながら、
「注目はインドやパキスタン、アフリカの人口が増える一方で、中国は2100年には半減する見通し。西側先進国では米国がなお人口増を維持することでしょうか」
顧問によれば、世界人口に対する視点は三つだという。
1. 人口が増える地域は需要が増える
2. 経済成長は少子高齢化を伴う
3. 米国のように広く移民を受け入れる国は人口を維持する
それが真実かどうかはともかく、投資視点では、どの市場に重点を置くか、どんな課題があるのか、その対応策は、といったところが重要になると思われる。
一年生の二人も、今週になって、ようやく具体的な銘柄購入に至った。
もっとも、わたしは敢えて何を購入したかを聞かない。誰かの購入銘柄を知ることは、自分の投資視点を惑わせることになると考えるから。ところが。
「あのぉ、志帆子さんー、なんかちょっと教えてほしいことあるんですけどお」
微かに頷くと
「きずなホールディングスって株をぉ、買ったんですけどぉ」
きずなホールディングス? 葬儀会社だったか。
「トブってなんですかぁ?」
「とぶ?」
のっぽの女子が示したのはTOBだった。
記事を見ると、きずなホールディングスへのTOBで、燦ホールディングス買い手とある。
「企業買収される」
「企業買収?」
「そう、成立すれば、きずなホールディングスは燦ホールディングスのものになる」
「じゃあ、買った株式はどうなるんですかあ?」
「株主の権利は守られる。TOBに応じれば、TOB価格で売ることができる」
記事によれば、2,120円がTOB価格なので、1,400円程度の現在株価の五割ほど高い価格となる。
「え? え? てことは、なに、儲かっちゃうってことですかあ?」
喜色の後輩に頷くと、のっぽは両腕を突き上げた。
そのきずなホールディングスは2024年5月期の本決算を発表した。
今期予想が純利益37%増。本業は好調のようだ。
きずなホールディングスに限らず、5月決算の企業が続々と決算を発表している。良品計画が純利益63%増など、小売が好調のようだ。しっかり見てゆきたいと思った。
2024年7月12日現在 わたしのポートフォリオ
・1678 NEXT FUNDS インド株式指数 Nifty50 連動型上場投信 2,000株 買値319.8円 株価402.7円 時価805,400円 含み益165,800円
・2579 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 200株 買値1,530円 株価2,226.5円 時価445,300円 含み益139,300円
・3445 RS Technologies 200株 買値3,200円 株価3,425円 時価685,000円 含み益45,000円
・5888 DAIWA CYCLE 200株 買値1,800円 株価2,638円 時価527,600円 含み益167,600円
・7134 アップガレージグループ 800株 買値835円 株価1,136円 時価908,800円 含み益240,800円
・8306 三菱UFJフィナンシャルグループ 400株 買値1,067円 株価1,750円 時価700,000円 含み益273,200円
現金 28,699円
時価総額 4,072,100円 含み益1,100,799円 含み益率37%




