未来の見通し
「やっぱり、今は銀行株だと思います」
一年生二人は口を揃えてそう言った。
「なぜ?」
「金利が上がるからです」
「金利と銀行株にはどんな関係があるの?」
「金利が上がれば、お金を貸し出す銀行の収益が上がるから」
「でも、銀行だってお金をどこからか集めてこなきゃいけないんでしょう?」
「え? そーなんすか? 銀行にはお金あるんじゃないんですか?」
銀行の役割
など考えたことのある高校生がどれほどいるのかわからない。
お金を預けるところ、ぐらいにしか考えていない。
といったところだろうか。
なぜ銀行にお金を預けるの?
家に置いていると、もし泥棒に入られたら、取られてしまう恐れがあるから。
が、今の感覚だろうか。
金利が高い時代なら、銀行に預けていれば、お金が増えるから。というわかりやすい理由があったろう。
今は大した利子もつかないので、利子が目的にはなりにくい。
それでも、お金を寝かせておけば、利子がついてくるという時代に変わるのなら、お金を銀行に預金する意義が増す可能性は高い。
一方で、新NISAが盛り上がっている。貯蓄から投資へという流れが定着するなら、銀行の預金集めは案外苦労することになるやもしれぬ。企業が現金圧縮進めるという記事も出た。インフレになって現金を持っていると価値が目減りするなら、投資や還元に資金を回すほうがいいとなれば、多額の預金が銀行口座から離れてゆくことになりうる。預金に支払う金利と貸出金利の差益が銀行の収益の源なら、お金の調達コストの上昇は意外な圧迫要因になるかもしれない。
といったことを話すと、新人二人は難しそうなかおをしていた。
「じゃあ、銀行株なんて買えないってことですか」
「銀行株を否定するわけではない」
「どーゆーことですか?」
「10倍株を狙うには、誰もが知る銘柄は投資参加者はすでに投資をしていると見るべき。ゆえに堅実ではあっても大化けの可能性は低い」
銀行株の現状を三井住友フィナンシャルグループを例に見ると。
株価は11,165円、PBRはちょうど1倍に戻った。昨年末の終値が6,880円だから、この半年ほどで62%上昇した。配当金は年間330円、配当利回りは2.9%(330÷11,165)、見込EPSは814円、益回りは7.3%(814÷11,165)、PERは13.7倍。
前期EPSが724円で伸び率は12%だった。今期、利上げが進むと、増益率が増す可能性はあるので、PERは低くないが妥当な水準のように思える。配当金が増える可能性もあるため、配当利回りは上がる可能性がある。
今週載った日経新聞の記事によれば、日本株投資家は人材難なのだそうだ。
長い日本株低迷を受けて、日本市場に精通する運用担当者が少なくなったことがその理由だという。
結果、誰もが知る大企業や、インデックス投資ばかりに投資が偏重しているのだそうだ。
「てことはよ」とかわいい先輩。
「あんまり知られてない会社の株は放置プレイされてるってことだよね」
「人知れず業績を伸ばしてる会社が注目されないってことは」と先輩男子。
「株価は安値で放置されてる可能性が高い」
「ってことになるよね」
部活での投資では、難しいことかもしれない。
わずか二年ちょっとの間であれば、放置された銘柄は放置されたまま終わる可能性があるため。
とは言え、10倍株のような大化けを期待できるような銘柄は、インデックスファンドに採用されていないような銘柄から出る可能性が高いと考えられる。
となると。
投資手法として、次のような方法が考えられる。
誰もが知るような銘柄は、インデックスファンドに任せて、個別株は知る人ぞ知る銘柄に絞ってしまう。
2024年は選挙の年と言われる。
アメリカ大統領選は、討論会でバイデン氏が高齢ゆえの不安感ばかり際立つ結果となり、民主党は候補者の再考を迫られる状況。トランプ政権第二幕が訪れる可能性が高まった。
イギリスでは与党・保守党が大敗し、労働党が単独過半数を握り、14年ぶりの政権交代となった。
フランスではマクロン大統領が電撃的に解散した結果、極右政権が第一党となる見通し。
そして、日本。まだ選挙の話題は乏しい印象ながら、岸田総理の支持率は低迷し、いつなにがあっても不思議ではない。
政治的混乱が、経済の前提を一変させる可能性がある。
「ということを、意識する必要はあるでしょうね」
顧問はそう言いながら、「なにをどう意識すればいいの?」と聞くかわいい先輩に苦笑した。
「難しい質問です。変化によって、新しい投資機会が訪れる可能性がある。それはなにか? を意識するということでしょう」
「ずいぶん漠然としているのね」
「未来の見通しなんて漠然としたものです。わたしたちは神様じゃないんだから」
「そりゃそうだろうけど」
「自転車に乗っているときのことを考えてみてください。漫然と乗ってるのと、次の交差点ではクルマや子どもが飛び出してくるかもと考えているのとでは、やっぱり違ったことになるでしょう。意識するってことはそういうことです。意識すれば、対応策を考えます。なにも考えていなかったら、なにかが起こったときに、ただ慌てるだけですね」
「じゃあ、トランプ大統領が復活すれば、なにを意識すれば?」
「それを自分なりに考えることです」
「それって、ズルくない?」
「未来のことは誰にもわからないですからね」
「なにに賭けるか、人生はギャンブルなのね」
「でも、一択である必要はない」
顧問はそう言って笑った。かわいい人はふっと息を漏らして、「決めるのは自分ってことね」と呟いた。
少し憂いを帯びた表情は、絵のように美しかった。
2024年7月5日現在 わたしのポートフォリオ
・1678 NEXT FUNDS インド株式指数 Nifty50 連動型上場投信 2,000株 買値319.8円 株価403.8円 時価807,600円 含み益168,000円
・2579 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 200株 買値1,530円 株価2,004円 時価400,700円 含み益94,700円
・3445 RS Technologies 200株 買値3,200円 株価3,515円 時価703,000円 含み益63,000円
・5888 DAIWA CYCLE 200株 買値1,800円 株価2,528円 時価505,600円 含み益145,600円
・7134 アップガレージグループ 800株 買値835円 株価1,090円 時価872,000円 含み益204,000円
・8306 三菱UFJフィナンシャルグループ 400株 買値1,067円 株価1,817円 時価726,600円 含み益299,800円
現金 28,699円
時価総額 4,044,199円 含み益1,044,199円 含み益率35%




