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五人の覇者  作者: コウモリ
十三人参上
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十三人参上(十一)

「行ってこい、フェニックス」

どんぶりどじょうに背中をつつかれ、フェニックスは立ち上がった。

即座に歓声と拍手が沸き起こる。

「えーっと、あ、どうも、火鳥フェニックスです」

マイクのキーンという音と共に、フェニックスの声がホール上に響き渡った。

「この度、地上界防衛長になりました」

どことなく緊張しているフェニックス。

「自己紹介をしろと言われたので…出身は地上界。前名は猛」

兵士達がざわついた。

「前は、火の覇者をしていました」

おおっ、と沸く。

「自慢になりますが、五人の覇者の中で最も強かったです」

おおっ、がおおー、になる。

数名ブーイングをした奴がいたが。

「第二の極界戦争の際、故郷の地上界を守るため、全力を尽くします。皆さんも頑張りましょう」

大歓声、大拍手。

「あ、それから、僕の事はフェニックスと呼んでください」

フェニックスは席に帰った。

「シンプルなスピーチだったな」

どんぶりどじょうが言った。

フェニックスは、

「服装がシンプルなんだから、そりゃなるさ」

と返した。

「では、」

副長兼補佐曰く、

「リーダーは部下が全員逃げ切るまで、戦わなければなりません。『しんがり』です。その予行演習として、ここにいるあなたの部下が全員退場しきるまでここに座っていてください」

「…冗談か?」

「いいえ」

「…嫌がらせか?」

「いいえ」

「…皆やってるの?」

「い…はい」

「今さ、いいえ、って言おうとしてたよね」

「いいえ」

……………………。






スピーチ終了から八時間。

未だフェニックスは巨大ホールから脱出しきれていない。

何故か。

六、七万人が退場しきるにはそんなにかかるのか?

違う。

天上界の人間の三割は飛べるし、瞬間移動出来る者もいる。

では、何故か。

フェニックスが何故巨大ホールから出ていかないのか、その理由を悟った賢い五人組が爆睡しているからだ。

そのチームにはあと二人ほど仲間がいたはずなのだが、自分がその一味と見なされないように外で待機している。

その五人組とは、

火の覇者、火竜サラマンダー

水の覇者、水鞘クラーケン

草の覇者、草馬ペガサス

雷の覇者、雷虎サンガー

土の覇者、土蛇バジリスク

の五人である。

そう、覇者隊だ。

つまり、外で待機している二人とはツルギ、水神である。

因みに、最初の二時間はフェニックスのために居残り、話し相手をしていたどんぶりどじょうも、さすがに無理だと三時間は待てなかった。

因みに、最初の四時間はフェニックスのために居残り、話し相手をしていた天上界王も、さすがに無理だと五時間は待てなかった。

因みに、最初の六時間はフェニックスのために居残り、話し相手をしていた副長兼補佐も、さすがに無理だと七時間は待てなかった。

「ちょっと待て」

フェニックスはそう言った。

「ちょっと待て。副長兼補佐はどこにいる?」

『ここですよ』

トランシーバーからあの声が聞こえた。

「なっ、トランシーバーとなッ!テメー俺の副長兼補佐のくせに勝手に帰ってんじゃねーよ!」

『私もあなたの部下です。私がそこにいればあなたは一生帰れませんよ』

「変に理屈つけてんじゃねー!」

『では、軍本部でお待ちしていますよ』

「えっ、ちょっ、」

ボンッ!

トランシーバー、爆発。

「副長兼補佐ー!!」

言っておくが、これは戦時中を描いたドラマではない。そして、副長兼補佐は死んではいない。






スピーチが終わって九時間。

あの五人はまだ寝ている。

そして、地上界防衛長は彼らの所へと向かった。

「ちょっと良いですかね、五名様」

「良くないです、地上界防衛長」

「良くないと困るんですが、クラーケン」

「これはこれは、地上界防衛長ともあろうお方が我々部下の名前を覚えているとは。勿論七万人全員でしょうね?」

「…冥臨」

「どぅおわッ!ストップ、ストーップ!冗談です、冗だ…」

蜃気楼、登場。

「あっれ〜、死んだはずの爺が見えますねぇ〜、僕もう逝っちゃいました〜」

無論、クラーケンの幻覚であって、泣く子が腹を抱えるフェニックスと言えどかつての仲間相手に冥臨など使わない。

「ナニ幻覚なんか見てんだよ、怪しい薬でも使ったのかよ」

「うふふふふ~、若い頃の母上います~」

「お前な、麻薬を使うにしても微量にしろよ。大量に使うと今のお前みたいにイッちゃうぞ」

皆さんお解りだと思うが、麻薬は微量でも使ってはいけない。

「美しいなぁ~」

「テラフレア!」

これは、マジである。






「お目覚めですか、五名様」

「はい…」

「んじゃ、さっさとお帰りください」

「解りました…」

ペガサスがクラーケンとバジリスクを持つ。

「残りはフェニックス、頼んだぜ」

ペガサスが当たり前のような顔で言う。

「ほぉー、九時間も待たせた上に荷物まで持たせますか」

余りのストレスのせいで、元仲間を荷物呼ばわりである。

「絶対に持たねー」「でも、さすがに俺様一人で四人は…」

「僕が持つよ」

「サラマンダー?」

すると、サラマンダーが宙に浮いた。

「僕の力、飛竜さ」

フェニックスが、

「ヒリュウ?火竜か?」

「飛竜」

「ヒリュウ?火竜か?」

「飛ぶ方の飛竜」

「なんだ、最初からそう言えよ」

「フッ、読者の方々には解ってるよ」

翼でバッサバッサとやらないから、サンガーはフェニックスの時より快適な空の旅になるだろう。


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